制裁委員会・専門家パネルの報告
                              2019年3月24日 寺岡克哉


 前回で触れましたが、

 国連安全保障理事会における北朝鮮制裁委員会の専門家
パネルが、

 3月12日に、「年次報告書」を正式に発表しました。



 その報告書の内容のうち、前回は、

 北朝鮮が政府機関主導のサイバー攻撃によって、

 5億7100万ドル(およそ630億円)相当の仮想通貨を、

 不法に取得したとする指摘について、見て行きました。



 今回は、

 この報告書による、その他の指摘について、見て行きたいと
思います。


             * * * * *


 ちょっと、その前にまず、このたびの年次報告書は、

 2018年2月から1年間における、国連の対北朝鮮制裁の履行
状況を、

 「北朝鮮制裁委員会の専門家パネル」の8名が、まとめたもの
です。



 また、この8名の専門家は、

 国連安全保障理事会の常任理事国(アメリカ、イギリス、フランス、
ロシア、中国)から各1名と、

 その他の国連加盟国(日本、韓国、シンガポール)から各1名が、

 選出されています。


             * * * * *


 さて、

 この「年次報告書」で指摘していること(仮想通貨の不正取得以外)
についてですが、


 まず、同報告書では、

 弾道ミサイルの開発や実験を、民間の工場や空港などで続けている
という実態を、明らかにしています。

 その上で、北朝鮮制裁委員会の専門家パネルは、

 「核と弾道ミサイルの開発計画は、現状のまま継続している」と、
断定しました。




 また、

 中国の漁船15隻以上が、北朝鮮の漁業免許を掲げて操業していた
という調査結果を、写真付きで公表しており、

 北朝鮮が外貨を獲得するために、漁業権を売り渡している実態も、
明らかにしました。



 さらには、

 メルセデス・ベンツや、ロールスロイスなど、輸入が禁止されている
高級車を利用しているとして、

 「制裁逃れを続けている」と、指摘しています。



 また、さらには、

 海上で積み荷を移し替える「瀬取り」によって、

 北朝鮮が、石油などを密輸していることも指摘しました。



 しかしながら、その一方で同報告書は、

 制裁の「人道的な影響」を分析する必要性にも、初めて言及しま
した。


 天候不順による食糧の収穫減も加わり、北朝鮮の全人口の4割超
にあたる1000万人以上が、栄養失調に陥っている
と指摘してい
ます。

 また、

 制裁によって、国連関連機関も含む人道支援団体の活動が、
阻害されている
という指摘もしました。


             * * * * *


 ちなみに、

 北朝鮮制裁委員会の議長国を務めるドイツの、ホイスゲン国連
大使は、

 このたびの報告書で明らかになった、北朝鮮による「制裁違反」
の現状を受けて、

 今後の「主な課題は(制裁の)履行だ」と、主張しました。



 その上で、

 北朝鮮による核・弾道ミサイル問題は「まだ解決していない」として、

 国連制裁の継続の必要性を、強調しています。


             * * * * *


 以上、ここまで見てきて、私は思うのですが・・・ 


 「北朝鮮の全人口の4割超にあたる1000万人以上が、栄養
失調に陥っている」


 という指摘が、ものすごく衝撃的でした。



 たとえばテレビの報道番組では、

 北朝鮮の首都ピョンヤンの様子などが、よく映されますが、

 それは恐らく、北朝鮮の中でも、見栄(みば)えのする所だけを、
映しているのでしょう。



 その陰で、見えない所では、

 大勢の北朝鮮の国民が、飢餓や物資の不足に、苦しんでいるの
だと思います。



 なので、

 「制裁によって、国連関連機関も含む人道支援団体の活動が
阻害されている」


 という指摘もありましたが、これについては、何とかして国際社会
が対応して行かなければなりません。



 しかし、それにしても、

 よく北朝鮮国内で、大規模なデモや暴動が起こらないものです。

 恐らく、国家による監視や情報統制などが、そうとうに厳しく行なわ
れているのでしょう。

 まるで戦前戦中の日本を彷彿(ほうふつ)とさせるような、ほんとうに
恐ろしくて、困った国だと思います。



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