コインチェック事件の犯人
                              2019年3月17日 寺岡克哉


 昨年の2月に、エッセイ831「コインチェック事件(注1)で思うこと」
という文章を書いたのですが、

 その後、犯人を特定することが、なかなか出来ないでいました。


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注1: コインチェック事件

 2018年1月26日に、大手の仮想通貨取引所である「コイン
チェック」から、

 580億円相当の「NEM」と呼ばれる仮想通貨が盗まれた
事件。
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 ところが!

 国連安全保障理事会における北朝鮮制裁委員会の専門家パネ
ルは、

 今年の3月12日に、「年次報告書」を正式に発表し、

 北朝鮮が政府機関主導のサイバー攻撃によって、5億7100万
ドル(およそ630億円)相当の仮想通貨を、不法に取得したと指摘
したのです。



 その年次報告書では、

 北朝鮮が2016年以降、「制裁を逃れるためサイバー攻撃の規模
を拡大し、(技術も)高度化している」と、指摘しています。



 また、

 「サイバー専門の軍事部門が、体制の収入捻出の任務を課されて
いる」

 という、国連加盟国による情報も載せられています。



 さらには、

 ロシアのサイバーセキュリティー会社「Group-IB」の調査に基づ
いて、

 2017年1月~2018年9月に、北朝鮮政府が運営するハッカー
集団「ラザルス」による、仮想通貨へのサイバー攻撃が少なくとも5回
あり、

 合計で5億7100万ドル(およそ630億円)が、盗まれたと指摘して
いるのです。



 その中には、

 昨年の1月26日に発生した、日本の仮想通貨交換業者「コイン
チェック」に対するサイバー攻撃も、含まれていました。



 つまり、

 コインチェック事件の犯人は、北朝鮮だったわけです!



 ちなみに、

 「コインチェック」から盗まれた仮想通貨NEMは、580億円相当
でしたから、

 北朝鮮による仮想通貨へのサイバー攻撃によって得た630億円
の大部分は、

 日本の「コインチェック」から流出したものだと言えます。


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 ところで、

 北朝鮮政府が運営するハッカー集団「ラザルス」は、

 これまで数多くのサイバー攻撃に、関わってきたと言われていま
す。



 たとえば、

 ロシアのコンピューターセキュリティ会社であるカスペルスキーは、

 2014年にソニー・ピクチャーズ(注2)が受けたハッキング攻撃も、

 「ラザルス」が犯人だったとみています。

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注2:ソニー・ピクチャーズ

 映画などに関する事業を行っている、ソニーグループの企業。
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 「ラザルス」は、その他にも、

 軍事スパイ行為や、金融機関、メディア機関、一般企業などを狙っ
た、

 数多くの妨害工作に関わっていたことが、明らかになっていると
いいます。



 ほとんどの被害者は、

 韓国、インド、中国、ブラジル、ロシア、トルコに集中しているみたい
です。



 「ラザルス」が、こうした活動を行う真の狙いについては、多くの憶測
が飛び交っており、

 「世界を混乱におとしめようとしている」という意見なども、あるみたい
ですが、

 「資金調達」が目的だという以外には、詳しいことが分かっていないと
いいます。


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 以上のように、

 北朝鮮は、裏で何をやっているのか、まったく分からないところが多々
あり、

 やはり、なかなか油断ができない国だと、私には思えて仕方がありま
せん。



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