米朝首脳会談が決裂
                              2019年3月10日 寺岡克哉


 2月28日。

 アメリカのトランプ大統領と、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)
朝鮮労働党委員長は、

 ベトナムの首都ハノイで行った2日目の首脳会談で、非核化措置
をめぐる合意ができませんでした。



 予定していた合意文書の署名が見送られ、署名式も急きょ中止に
なったのです。

 このことから、

 今回の米朝首脳会談は、事実上「決裂」したと言えるでしょう。


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 しかし、一体どうして、

 このたびの米朝首脳会談は、合意することが出来なかったので
しょう?



 たとえばトランプ大統領は、会談後の記者会見で、

 「北朝鮮は完全な制裁解除を求めてきたが、私たちはそれを
認めることができなかった」と、説明しました。



 その上で、

 非核化措置として、寧辺(ニョンビョン)の核施設の廃棄だけでは
不十分だという認識を示し、

 「(制裁解除のために)北朝鮮は多くを放棄しないといけない」と、
強調しています。



 さらにトランプ大統領は、

 「何らかの署名をする方がいいのではないかと考えたが、時には
立ち去らなければいけないこともある」

 と述べて、米国として受け入れられる内容ではなかったと、再度
強調しました。


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 一方、

 北朝鮮の李容浩(リ・ヨンホ)外相は、3月1日の未明。

 ハノイのホテルで記者会見を行い、米朝首脳会談について、

 北朝鮮が求めたのは「全面的な制裁の解除ではない」と述べて、

 全面解除を求めたとするトランプ大統領の説明を、否定しました。


 李・外相によると、

 北朝鮮の国民生活に関わる経済制裁が緩和されれば、

 寧辺(ニョンビョン)の核施設を廃棄すると、提案したといいます。



 また、

 聯合ニュース(韓国を代表する通信社)によると、

 李容浩(リ・ヨンホ)外相は、11件ある国連制裁決議のうち、

 5件について、制裁の緩和を求めたといいます。


 北朝鮮側は、核・ミサイル実験の永久停止を、文書で確約する
用意もあったのですが、

 アメリカ側が、寧辺(ニョンビョン)以外の核施設の廃棄も要求した
ことから、

 合意ができなかったという認識を、李・外相は示したとしています。


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 さて、

 アメリカ側は、「北朝鮮が完全な制裁解除を求めてきた」と言い、

 一方、

 北朝鮮側は、「全面的な制裁の解除ではない」と言っています。



 一体、どちらの言っていることが、本当なのでしょう?



 たしかに北朝鮮側は、

 寧辺(ニョンビョン)の核施設廃棄との、交換条件で求めた制裁解除
は、

 11件ある国連制裁決議のうち、5件の人民生活に関わる項目だけ
だとしています。



 しかしながら、この5件には、

 石炭など北朝鮮の主力輸出品の禁輸や、石油の輸入制限などが
含まれており、

 韓国の専門家によると、「制裁効果の99%を占める」とも指摘され
ているのです。



 そのためアメリカ側は、

 この5件を解除すれば、事実上「制裁の骨抜き」になってしまうと、

 判断したと言われています。


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 私は思うのですが・・・ 

 やはり、このたびの米朝首脳会談は、事実上「決裂した」と、

 見るべきでしょう。



 というのは、

 アメリカのシンクタンクの、戦略国際問題研究所(CSIS)などの
研究機関が、

 北朝鮮の北西部の、東倉里(トンチャンリ)にあるミサイル施設
「西海(ソヘ)衛星発射場」について、

 「通常の稼働が可能な状態になった」という分析を、3月5日に
発表したからです。



 この発射場は、昨年の8月から活動を停止していたのですが、

 それが突然、ミサイル発射が可能な状態になったというのです。



 この先、さらに北朝鮮は、

 一体どのような動きをしてくるのか、とても危惧(きぐ)される状況に
なってきました。



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