沖縄の県民投票
                               2019年3月3日 寺岡克哉


 2月24日。

 沖縄県・宜野湾(ぎのわん)市にある、アメリカ軍・普天間(ふてんま)
飛行場を、

 名護(なご)市・辺野古(へのこ)へ移設する問題をめぐって、「県民投票」
がおこなわれました。



 この投票は、

 アメリカ軍の基地を建設するために、辺野古の沿岸部を「埋め立て」する
ことに対して、

 「賛成」、「反対」、「どちらでもない」の、3つの選択肢のうちから、1つを
選ぶ方式で行われました。



 さっそくですが、結果は以下のようになっています。

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   ●賛成       11万4933票

   ●反対       43万4273票

   ●どちらでもない  5万2682票

   ●無効・その他     3506票

   ただし
   投票資格者総数(速報値) 115万3591人
   投票者数            60万5394人
   投票率                52.48%
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 上の結果を見て、いちばん印象的だったのは、

 埋め立てに「反対」が、43万4273票で、最も多かったことです。

 ところで、{434273÷(605394-3506)}×100≒72.2% と、
なりますから、

 有効票の72.2%が、「埋め立てに反対」という結果になった
のです!




 また、投票率は52.48%となっていますが、これは、

 住民投票の有効性を測る1つの目安とされる「投票率50%」を、

 明らかに上回っています。



 さらには、

 県民投票条例で、最多得票が投票資格者の4分の1(およそ28万
8400票)を超える結果を、

 日本の首相やアメリカの大統領に、通知すると規定していますが、

 埋め立てに「反対」が43万4273票なので、この条件を明らかに
満たしています。


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 ところで、

 「投票しなかった人」を考慮に入れると、

 {1-(434273÷1153591)}=0.624 と、なるので

 「6割以上が明確に ”反対” の意思を示さなかった」などという
報道がありました。



 が、しかし、そんなことを言うのなら、

 {1-(114933÷1153591)}=0.9004 と、なるので、

 「9割以上が明確に ”賛成” の意思を示さなかった」とか、

 あるいは、

 114933÷1153591=0.0996 と、なるので、

 「明確に ”賛成” の意思を示したのは1割以下に過ぎない」

 と、言うこともできるわけです。



 なので上のような、

 「6割以上が明確に ”反対” の意思を示さなかった」などという、

 「ミスリード(誤解させること)」を狙って書かれた記事には、ぜひ
とも騙(だま)されないようにしたいものです。


           * * * * *


 さて、

 このたびの県民投票の結果を受け、玉城デニー沖縄県知事は、

 「移設反対の民意が埋め立てに絞って明確に示されたのは
初めてで、極めて重要な意義がある」と述べ、

 政府にたいして、工事の中止を要請する考えを、表明しました。



 玉城知事は、2月25日の未明に県庁で記者団にたいし、

 「決して認めないという県民の断固たる民意を真正面から受け
止め、工事を中止するよう強く求める」

 と、訴えています。


            * * * * *


 一方、

 安倍首相は同2月25日の午前。沖縄県民投票の結果を受けて、

 「世界で最も危険と言われる普天間基地が固定化され、危険な
まま置き去りにされることは絶対に避けなければならない」

 と述べ、移設工事を続行する意向を表明しました。



 その上で安倍首相は、

 「結果を真摯(しんし)の受け止め、これからも基地負担軽減に
向けて全力で取り組んでいく」

 と、強調しています。



 さらに安倍首相は、

 「日米が普天間基地の全面返還に合意してから、20年以上
実現されていない。これ以上先送りすることはできない」

 とも、語っています。


           * * * * *


 以上、ここまで見てきましたが、

 沖縄の県民投票で、有効票の72.2%が、「埋め立てに反対」
という結果になったにもかかわらず、

 安倍首相は、埋め立て工事を続行する姿勢を、ぜんぜん崩して
いません。



 これでは、

 「沖縄県の民意が蔑(ないがし)ろにされている」と言われても、

 まったく仕方がないでしょう。



 しかしながら、もし辺野古への移設を中止するのならば、

 アメリカ軍・普天間基地を、一体どこに移設すれば良いのでしょう?

 依然として、この問題が残ってしまいます。



 沖縄の基地問題は、ほんとうに難しい問題だと、言わざるを得ませ
ん。



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