日韓関係が悪化 5
2019年2月10日 寺岡克哉
前回で触れましたが、
日本側は、日韓請求権協定が締結された1965年の当初から、
近年になる2007年ごろまで、
「請求権協定は、個人請求権に影響を及ぼさない」という立場を
とっていました。
ところが一方、
韓国側は、日韓請求権協定が締結された当初において、
「請求権協定によって個人請求権が消滅した」という立場を
とっていたのです。
今回は、
そのような請求権協定における「韓国側の経緯」について、見て
行きたいと思います。
* * * * *
繰り返しますが、
そもそも韓国政府は、日韓請求権協定が締結された当初において、
「請求権協定によって個人請求権が消滅した」という立場をとってい
ました。
もともと韓国政府は、日韓請求権協定が締結される前の、交渉に
おける段階から、
「徴用工の未払金および補償金は、国内措置として韓国側で支払う
ので、日本側で支払う必要はない」
と、主張していたのです。
ところが、1990年代になると、
「日本では個人請求権が消滅していない」ということが、韓国でも
広く知られるようになり、
韓国人の戦争被害者の人たちが、個人請求権を主張する訴訟を、
日本で起こし始めました。
そうすると韓国側は、当初の立場を変えるようになり、
2000年には、「韓国においても(日韓請求権協定によって)放棄
されたのは外交保護権であり、個人請求権は消滅していない」
という趣旨の答弁を、韓国外交通商部の長官が、するようになった
のです。
さらに韓国政府は、
2005年の官民共同委員会で、日韓請求権協定における効力範囲
の問題を検討し、
「植民地支配の賠償金や慰安婦問題等の、日本政府の国家権力が
関与した反人道的不法行為については、請求権協定によっては解決
しておらず、日本政府の法的責任が残っている」
という結論を、出すに至りました。
ただし、「徴用工問題」については、
日韓請求権協定の効力範囲外であると、明確に位置づけることは
せず、
請求権協定によって日本から受け取った資金の内に、韓国政府が
強制動員被害者に対する補償問題を解決するための資金が含まれて
いるとして、
韓国政府は、日本から受け取った資金の相当額を、強制動員被害者
に使用すべき道義的責任があるという判断しています。
* * * * *
ところで、前回で触れましたように、
2007年以降、日本の法廷においては、韓国人戦争被害者の権利
回復が、不可能になってしまいました。
そのため、
韓国人の元徴用工の人たちは、「韓国の裁判所」で訴訟を起こす
ようになりました。
そして2012年には、韓国大法院(最高裁)が、
「植民地支配に直結した不法行為に対する損害賠償請求権を、
協定(日韓請求権協定)の適用対象と見るのは困難」
とする判断を、初めて示したのです。
さらには2018年になると、韓国大法院(最高裁)は、
「徴用工の個人賠償請求権は、日韓請求権協定の効力範囲に
含まれない」
とする判断にまで、至っています。
* * * * *
以上、ここまで見てきましたように、
「個人請求権」にたいする韓国側のスタンスが、
日韓請求権協定が締結された当初と、現在とでは、
180度まったく正反対に、変わってきたことが分かるのです。
(しかしながら日本側も、前回でレポートしましたように、日韓請求権
協定が締結された当初と、現在とでは、個人請求権にたいするスタン
スが正反対に変わっています。)
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