日韓関係が悪化 3
2019年1月27日 寺岡克哉
前回で取り上げましたように、
「徴用工問題」においても、日本と韓国の関係が、悪化の一途を
たどっています。
しかし、なぜ、
1965年に締結された「日韓請求権協定」の第2条によって、
損害賠償などの請求権に関する問題が、「完全かつ最終的に
解決された」と、すでに両国で確認されているのに、
韓国人の元徴用工の人たちは、損害賠償の請求をめぐる訴訟
を、次々と起こしたのでしょう?
このことが、ものすごく疑問に感じたので、その経緯について、
ちょっと調べてみることにしました。
* * * * *
まず第一に、
「日韓請求権協定の第2条」というのが、実際どのような条文に
なっているのかと言えば、
それは以下のようになっています。
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日韓請求権協定 第二条
1 両締約国は、両締約国及びその国民(法人を含む。)の財産、権利及び
利益並びに両締約国及びその国民の間の請求権に関する問題が、千九
百五十一年九月八日にサン・フランシスコ市で署名された日本国との平和
条約第四条(a)に規定されたものを含めて、完全かつ最終的に解決され
たこととなることを確認する。
2 この条の規定は、次のもの(この協定の署名の日までにそれぞれの締約
国が執つた特別の措置の対象となつたものを除く。)に影響を及ぼすもの
ではない。
(a)一方の締約国の国民で千九百四十七年八月十五日からこの協定の署名
の日までの間に他方の締約国に居住したことがあるものの財産、権利及び
利益
(b)一方の締約国及びその国民の財産、権利及び利益であつて千九百四十
五年八月十五日以後における通常の接触の過程において取得され又は
他方の締約国の管轄の下にはいつたもの
3 2の規定に従うことを条件として、一方の締約国及びその国民の財産、
権利及び利益であつてこの協定の署名の日に他方の締約国の管轄の下に
あるものに対する措置並びに一方の締約国及びその国民の他方の締約国
及びその国民に対するすべての請求権であつて同日以前に生じた事由に
基づくものに関しては、いかなる主張もすることができないものとする。
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私は、法律や条約などの専門家ではありませんが、上の条文を、
私なりに理解したところでは、
第2条の第2項に当てはまるものを除き、
両国の国民(法人を含む)の間の、請求権に関する問題が、完全
かつ最終的に解決されたのであり、
すべての請求権に関しては、いかなる主張もすることができない
と、読み取れるのではないかと思いました。
もしも、このような理解に基づくのならば、
元徴用工の韓国の国民が、日本の法人(企業)にたいして、
損害賠償などの請求に関しては、いかなる主張もすることができ
ないことになります。
* * * * *
ところが!
さらに、いろいろ調べてみると、
どうやら「個人請求権の問題」というのが、日本と韓国の間で、
燻(くすぶ)り続けているみたいなのです。
つまり、「請求権」というものを細かく見ていくと、
国民の損害について政府が相手国を追及する「外交保護権」と、
個人が直接賠償を求める「個人請求権」というのがあります。
このうち「外交保護権」については、
日韓請求権協定によって「放棄された」とすることで、
日本と韓国の双方から異論が出ていません。
しかし「個人請求権」については、
そもそも日本側が、日韓請求権協定が締結された1965年の当初
から、近年になる2007年ごろまで、
「請求権協定は、個人請求権に影響を及ぼさない」という立場をとっ
ていたのです。
つまり日本側は、
「日韓請求権協定が締結された後であっても、個人請求権は依然と
して存在する」
ということを、近年まで認めていたわけです。
しかしなぜ、日本は近年まで、そのような立場をとっていたのでしょう?
それについては、次回で見て行きたいと思います。
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