アメリカの中間選挙 2
2018年11月18日 寺岡克哉
前回でレポートしましたように、
11月6日に行なわれたアメリカの「中間選挙」で、野党の民主党が、
下院において過半数の議席を獲得しました。
これによってトランプ大統領は、
「ロシア疑惑(注1)」について、下院で厳しく追及される恐れがあり
ます。
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注1 ロシア疑惑:
2016年に行われたアメリカの大統領選挙において、民主党の候補者
であるクリントン氏の陣営が、「サイバー攻撃」を受けてメールが暴露され
るという事件が起こりました。
この事件に、「ロシアが関与していたのではないか」という疑惑が発覚
しましたが、これを通称「ロシア疑惑」と呼んでいます。
ちなみにアメリカの情報機関は、ロシア政府が、共和党の候補である
トランプ氏の勝利を狙ってサイバー攻撃をしたと、「断定」しています。
トランプ陣営とロシアとの「共謀疑惑」が指摘されており、政権から独立
したモラー特別検察官が捜査をしています。
トランプ陣営の元幹部ら数人が、「捜査機関への偽証」などで起訴され
たほか、
大統領選挙当時にロシア軍参謀本部情報総局(GRU)の当局者だっ
た12人も、今年の7月に起訴されました。
さらに今年の9月には、トランプ陣営の元選挙対策本部長だった
マナフォート被告が、モラー特別検察官の捜査に全面協力することで
合意しています。
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ところで、
アメリカ下院には、大統領の「弾劾訴追(だんがいそつい)」ができる
という権限があります。
下院が大統領の弾劾訴追を決めるためには、出席議員の過半数の
賛成があれば良いので、野党の民主党にとって可能になりました。
そして、
下院において弾劾訴追が決まったら、つぎは上院に「弾劾裁判所」
というのを設置し、
最高裁判所の長官が裁判長になって、弾劾の可否を判断します。
しかしながら、
大統領を罷免(ひめん)するには、上院において出席議員の3分の2
の賛成が必要であり、
与党の共和党が過半数を占める上院においては、大統領の罷免を
決定することが難しく、「高いハードル」となっています。
(もしも大統領が罷免された場合は、アメリカ合衆国憲法の規定に
より、副大統領が大統領になります。)
ではありますが、
野党の民主党は、多数を占める下院において、「ロシア疑惑」を
厳しく追及し、
大統領の罷免はムリだととしても、「弾劾訴追」に向けて、トランプ
陣営の関係者たちを次々に公聴会などに召喚する構えです。
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このように、民主党によるロシア疑惑の追及が予想される中、
トランプ大統領は11月7日に、セッションズ司法長官を、事実上
更迭(こうてつ)しました。
アメリカのメディアによると、
セッションズ司法長官は、トランプ大統領宛ての書簡で、「あなた
の要請に応じて辞表を提出する」
と、表明しています。
セッションズ氏は、2016年の大統領選挙のときに、駐米ロシア
大使と接触していたことが、すでに発覚していますが、
ロシア疑惑の捜査にたいし、司法長官として(捜査を制限するなど
の)関与を辞退したことから、
トランプ大統領は、セッションズ司法長官を、これまで何度も非難
してきました。
さらにトランプ大統領は、
「セッションズ司法長官が、モラー特別検察官によるロシア疑惑の
捜査を擁護(ようご)している」などと、ますます批判を強めていて、
セッションズ司法長官の解任は、時間の問題とされていたのです。
トランプ大統領は、ホワイテカー司法長官主席補佐官が代行を
務めることを明らかにしていますが、
司法長官代行は、ロシア疑惑の捜査をふくむ、すべての司法省
の責務を管轄しているので、
もちろん、「ロシア疑惑の捜査を制限すること」も可能です。
このため、民主党のチャック・シューマー上院院内総務は、
ホワイテカー氏にたいして、捜査には関与しないように求めて
います。
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以上、ここまで見てきましたように、
やはりトランプ大統領は、「ロシア疑惑を追求されること」について、
ものすごく大きな「懸念(けねん)」を、抱いているみたいです。
この先、
アメリカの下院において、「ロシア疑惑」がどのように追及されるのか、
興味深く見守って行きたいと思います。
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