女子駅伝の「四つんばい」に思うこと
2018年10月28日 寺岡克哉
福岡県で10月21日に開催された、実業団対抗の女子駅伝で、
第2区の選手が、競技中に足を骨折して立てなくなった後、
およそ200メートルの距離を「四つんばい」になって前進をつづけ、
中継所で待っていた次の選手に「たすき」を渡しました。
「たすき」を渡し終えた選手は、
路面で膝(ひざ)を擦(こす)ったため、両膝から出血してしまいまし
た。
中継所で待ち続けていた次の選手が、涙を浮かべる場面もあった
といいます。
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一方、この実業団チームの監督は、
大会本部のテレビ中継で、「選手の異変」を確認したため、
「棄権」することを申し出ました。
ところが、現場での連絡がうまく行かず、
最終的に現場の審判員に「棄権の申し出」が伝わったときには、
四つんばいで前進していた選手が、すでに中継所の20メートル
手前まで、進んでしまっていたと言います。
審判員は、(棄権の申し出が伝えられたけれども)、
選手本人が、「たすきをつなぎたい!」という強い意思を示して
いたこともあり、
そのまま見守っていたと言います。
ちなみに、この実業団チームが所属している「会社」側は、
「(競技の)運営側に棄権を要請したが、そのまま2区を終えた」
「非常に遺憾」
という、コメントをしています。
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ところで、
このたびの「四つんばい」にたいする世間の反応は、
「選手の根性と執念(しゅうねん)に感動した」という称賛の声や、
「選手の体を一番に考え、すぐに周りが止めるべきだ」という
非難の声など、
賛否両論だったといいます。
また、スポーツ評論家の玉木正之さんは、
「勝ち負けへのこだわりの行き過ぎを抑制するのも主催者の
役割で、止めるべきだった」
「 ”命のたすき” などと美談にするべきでない」
と、指摘しています。
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以上、ここまで見てきて、私は思うのですが・・・
まず第一に、骨折したときは、絶対に動かない方が良いですし、
もし、骨折しても動かなければならないときは、「添(そ)え木」を
することが必要です。
ところが、「四つんばい」で前進した選手は、
骨折した足を、添え木もせずに、200メートルもの距離を引きずった
のですが、ほんとうに大丈夫だったのでしょうか。
選手生命に関わるような後遺症が、残らなければ良いのですが・・・
そして例えば、
ボクシングの試合では、「ドクターストップ」という制度がありますが、
この場合、いくら選手が「ボクシングの試合を続けたい!」と言っても、
ドクターストップが適用された時点で、その選手の意思に関わりなく、
試合が終了してしまいます。
たしかに、駅伝競技は「格闘技」ではないので、
「ドクターストップ」という制度など、これまで存在しなかったし、
その必要もなかったのだと思います。
しかし、このたびの出来事を教訓にして、
格闘技だけでなく、駅伝を含めた全てのスポーツ競技に対して、
選手の体に配慮した「ドクターストップ」のような制度を、定めておく
べきではないでしょうか。
とても見るに堪えない「女子駅伝の四つんばい」を、
まったく予期せず、偶然にテレビの報道番組で見てしまい、そのよう
に強く思った次第です。
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