北朝鮮リスクが減少か? 5
                                2018年7月8日 寺岡克哉


 いま現在、

 西日本の記録的な大雨によって、たくさんの犠牲者が出ています。

 心から、ご冥福をお祈りします・・・ 


           * * * * *


 さて、

 今から、およそ1ヶ月ほど前の6月12日に、

 トランプ大統領と、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長
による、

 歴史上で初めての「米朝首脳会談」が行われました。



 ところで、その後、

 北朝鮮による核・ミサイル開発のリスクは、減少しつつあるので
しょうか?

 今回は、そのことについて見て行きたいと思います。


           * * * * *


 まず、米朝首脳会談が行われた翌日の、6月13日。

 韓国を訪れていたアメリカのポンペオ国務長官は、ソウルで記者団に
たいし、

 北朝鮮の非核化について、「大規模な軍縮を2年半で達成できると希望
する」と述べて、

 トランプ大統領の任期である2021年1月までに、非核化の大部分を
完了したいという考えを示しました。



 ところで、

 トランプ大統領と、金正恩・朝鮮労働党委員長が、6月12日の会談で
署名した「共同声明」には、「非核化の期限」について盛り込まれません
でした。

 なので、

 上のポンペオ国務長官の発言は、それに対して初めて言及した形と
なります。



 また、6月12日の「共同声明」には、

 「朝鮮半島の ”完全な非核化” に向け取り組む」という文言(もんごん)
が盛り込まれていますが、

 かねてより「アメリカ側が受け入れられる唯一の結果」としていた、

 「CVID(完全かつ検証可能で不可逆的な非核化)」という文言は、
明記されていません。



 これについて、ポンペオ国務長官は、

 「検証することなく、 ”完全な非核化” はできない」と指摘し、その上で、

 「 ”完全” には検証可能で不可逆的ということが含まれる」と、強弁して
います。


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 それから11日後の、6月24日。

 ポンペオ国務長官は、CNN(アメリカの報道機関)が行ったインタビュー
で、

 朝鮮半島の非核化に向けた北朝鮮との交渉について、「行程表を付ける
つもりはない」と述べ、

 北朝鮮に「具体的な期限を求めない」という可能性もあることを、示唆しま
した。



 ポンペオ国務長官はインタビューで、

 「2ヵ月とか6ヵ月とか、(非核化の)行程表を付けるつもりはない」

 「両国の指導者がやると決めたことを達成できるかどうかを見極めるよう、
早急に前進させることを約束する」

 と、語っています。



 ちなみに、ポンペオ国務長官はこれまで、

 トランプ大統領の現任期の2021年1月までに、北朝鮮の非核化を大きく
前進させたいという意向を示していました。

 が、しかし、

 このたびの発言で、そのトーンが後退してしまったのは否めません。


              * * * * *


 6月30日。

 ワシントン・ポスト紙は、アメリカ情報機関の高官の話として、

 「北朝鮮は全ての核計画を申告するつもりはなく、核兵器の数や生産施設
を隠そうとしている」

 と、伝えました。


 この見方を裏付ける証拠は、6月12日の米朝首脳会談の後から、集めら
れたといいます。


               * * * * *


 7月1日。

 アメリカのボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)は、CBSテレビ
のインタビューで、

 「北朝鮮の協力があれば、核を含む大量破壊兵器の大半を、1年以内
に物理的に廃棄することができる」

 という認識を示しました。



 ボルトン大統領補佐官は、

 「北朝鮮がすでに戦略的な決断を下し、協力的であれば、私たちは
迅速に行動できる」

 と指摘して、北朝鮮の協力が不可欠であることを強調しました。



 また、

 核放棄を早く進めれば制裁が解除され、日本や韓国から経済支援も
受けられるとして、

 「北朝鮮にとっても利益となる」と、述べています。


               * * * * *


 7月2日。

 北朝鮮が、弾道ミサイルの製造施設において、拡張工事を完了させた
とみられることが、衛星画像の分析から明らかになりました。

 この衛生画像は、MIIS(モントレー国際大学院)の研究者たちが分析
しました。



 その分析によると、

 咸興(ハムフン)市にある「化学材料研究所」での工事が、完了して
いるのが確認できるといいます。



 この「化学材料研究所」は、

 固体燃料を使用するミサイルの、ノズルや胴体部分、円錐(えんす
い)形の頭部など、

 「炭素複合材」を使った部品を、製造していることで知られています。



 MIIS(モントレー国際大学院)で、東アジアの核不拡散プログラムを
研究するジェフリー・ルイスさんは、

 「大半の工事が今年の5月に行われた」と、説明しました。

 ちょうど南北首脳会談と、米朝首脳会談の、間の時期に当たるといい
ます。


 その上で、ジェフリー・ルイスさんは、

 「(北朝鮮は)軍備を縮小するどころか現在も拡張している」と、警鐘を
鳴らしています。


              * * * * *


 以上、ここまで見てきましたが・・・ 


 やはり、

 北朝鮮の「怪しげな動き」が、ポツポツと出始めているみたいです。


 なので、これからも北朝鮮にたいしては、

 気を緩めることなく、しっかりと「監視の目」を向けて行かなければ
なりません。



 ところで、

 アメリカのポンペオ国務長官が、7月5日~7日の日程で、北朝鮮を
訪問しており、

 「北朝鮮の非核化」について、どのような協議の進展が見られるのか、
とても注目されていました。


 ところが北朝鮮側は、協議後に、「ギャングのような」要求だったとアメ
リカを非難する声明を出したのです。

 一方、ポンペオ国務長官は記者会見で、「誠実で生産的な話し合い
だった」と、述べていますが・・・ 


 私は何だか、

 北朝鮮の「怪しげな動き」が、今後どんどん露骨(ろこつ)になって行く
ような気がしてなりません。



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