貿易戦争の危機 3
2018年6月24日 寺岡克哉
アメリカのトランプ大統領は、世界中で色々な騒動を起こしていますが、
その中の1つとして、アメリカと中国の間での「貿易戦争の危機」という
のがあります。
これは、日本をふくめた世界経済にたいして、多大な悪影響を及ぼす
恐れがあるのですが、
いま現在、その「貿易戦争の危機」が、どんどん高まって来ています。
* * * * *
アメリカのトランプ政権は、6月15日。
中国の知的財産権侵害への制裁措置として、500億ドル(およそ5兆
5千億円)分の中国製品に、25%の追加関税をかけると発表しました。
まず7月6日に、340億ドル(およそ3兆7400億円)分の制裁関税を
発動し、
残りの160億ドル(およそ1兆7600億円)分は、時期を検討すること
としています。
トランプ大統領は、同6月15日の声明で、
中国が巨額補助金を拠出してハイテク産業を育成する「中国製造2025」
計画を名指しで批判し、
「中国は不公正な手法でアメリカの知財や技術を得ており、もはや耐えら
れない」と、主張しました。
その上で、「中国が報復措置に動けば、アメリカはさらなる追加関税の
発動に踏み切るだろう」と、中国にたいして圧力をかけています。
ちなみに、
関税対象の500億ドル(およそ5兆5千億円)というのは、中国による
知財侵害の被害額と、同規模に設定した金額だといいます。
第1段階として、7月6日に関税を発動する340億ドル(およそ3兆
7400億円)分の対象は、産業ロボットや電子部品など、ハイテク製品を
中心にした818品目になります。
また、
第2段階の160億ドル(およそ1兆7600億円)分の対象は、化学品や
光ファイバーなど、中国が巨額の補助金を拠出する分野に絞った282
品目となっています。
* * * * *
この、アメリカによる制裁措置を受けて、中国の商務省は同6月15日
の夜。
「すぐに同じ規模、同じ強さの追加関税措置を出す」という声明を発表
しました。
同省が4月に公表した、
アメリカ産の大豆、牛肉、航空機、自動車など106品目の500億ドル
(およそ5兆5千億円)相当の商品に、
25%の関税を上乗せするという報復措置が、軸になりそうです。
また、
これまでの協議でアメリカ側に伝えていた、アメリカ産のエネルギーや
農産物などの輸入拡大策も、白紙にもどす構えです。
* * * * *
この、中国商務省による報復措置の声明を受けて、トランプ大統領は
6月18日。
中国から輸入する2000億ドル(約22兆円)分の製品に、新たに10%
の関税を上乗せする案を検討するよう、
USTR(アメリカ通商代表部)に指示を出しました。
トランプ大統領は、同6月18日に発表した声明で、
「中国が(報復関税で)アメリカの企業や労働者、農家を脅(おびや)か
している」と、つよい不快感を示し、
「中国は、アメリカの知財や技術の取得に関わる不正な慣行を改める
つもりがないようだ」と、主張しました。
そして、
「不正な慣行を改め、アメリカ製品に市場を開き、よりバランスのとれた
貿易関係を受け入れるよう中国に促すには、さらなる行動をとらなければ
ならない」と、述べました。
その上で、
「もし中国が慣行を改めるのを拒み、かつ、新たな(報復)関税の実施に
こだわるのであれば、法的手続きを終えた後で発動する」と、けん制してい
ます。
* * * * *
このトランプ大統領の声明を受けて、中国商務省は6月19日。
報復の手法を、追加関税以外にも広げる可能性を示唆しました。
これまでは「(アメリカの制裁措置と)同じ規模、同じ強さで対抗する」と
してきましたが、
この日の報道官談話では、
「(アメリカに対して)質と量を組み合わせた総合的な措置をとり、力強く
反撃する」と、表明しています。
つまり「総合的」という言葉を加えて、含みを持たせた表現になっており、
中国に進出したアメリカの企業に対する、投資や許認可の制限や、
中国人旅行客の、アメリカへの渡航制限など、
報復の対象が、通商以外の分野にも及ぶ可能性があり、アメリカと中国
の対立が、さらに複雑化するのではないかという懸念も出ています。
さらには、
中国外務省の耿爽(こうそう)副報道局長が、同6月19日の定例記者
会見で、
「中国は貿易戦争を望まないが、恐れもしない」
「もしも貿易戦争を起こそうとする者がいれば、我々は自身の正当な
利益を必ず守り抜く」
と述べて、対決姿勢を鮮明にしています。
* * * * *
以上、ここまで見てきましたように、
アメリカと中国の間での「貿易戦争の危機」が、どんどん高まっていま
す。
そして現在のところ、その危機が緩和する兆(きざ)しは、まったく見え
ません。
この先、一体どうなってしまうのでしょう・・・
ほんとうに、トランプ大統領のやることには、少しも目を離すことができ
ません。
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