森友問題の調査報告書
                               2018年6月10日 寺岡克哉


 財務省は、6月4日。

 「森友学園(注1)案件に係る決裁文書の改ざん等に関する調査
報告書」

 というのを公表しました。


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注1 森友学園問題:

 大阪府・豊中市の国有地が、およそ8億円も値引きされて、学校
法人「森友学園」に売却された問題。

 森友学園が開校を予定していた小学校の名誉校長に、安倍昭恵・
首相夫人が一時就任していたことから、昭恵氏の関与や、官僚の
忖度(そんたく)などが疑われています。

 今年の3月には、国有地の売却に関する決裁文書を、財務省が
「改ざん」した事実が明らかになり、売却当時(2016年6月)に
理財局長だった佐川宣寿(のぶひさ)国税庁長官が辞任しました。

 大阪地検特捜部は、一連の問題を捜査していましたが、今年の
5月31日に、佐川氏を含む財務省職員ら38人を「不起訴」にして
います。
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 ちなみに、

 この財務省による調査報告書は、A4判で51ページにもなりますが、

 その「要点」をまとめると、およそ以下のようになります。


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  「森友学園案件に係る決裁文書の改ざん等に関する調査
 報告書」の要点



①文書改ざんは当時理財局長だった佐川宣寿(のぶひさ)前国税庁
 長官が方向性を決め、中村稔(みのる)理財局総務課長が中核的
 な役割を担った。

②国会審議の紛糾を回避するのが動機だった。

③政治家関係者の記載は外に出すべきではないと佐川氏が発言し、
 安倍昭恵・首相夫人らに関する記述が削除された。

④安倍晋三首相が夫妻の関与を全面否定した昨年2月の国会答弁
 などをきっかけに、交渉記録を廃棄した。

⑤佐川氏を停職3カ月相当(注2)、中村氏を停職1カ月とするなど、
 関係者20人を処分。麻生太郎・財務相は閣僚給与1年分(170
 万円)の自主返納を表明した。


注2:
 すでに佐川氏は、現職の国家公務員ではないため、退職金の
4999万円から、513万円が差し引かれる処分になります。
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 ところで、

 上の調査報告書を公表したときの記者会見で、麻生・財務相は、

 「(安倍)昭恵氏がからんでいるから文書を書き直した、修正した
(ということ)は(調査では)認められない」 と、説明しており、


 財務相に続いて会見した、矢野・官房長も、

 「忖度(そんたく)、あるいは忖度に類する事実はなかった」 と、
強調しています。



 それでは、なぜ改ざんが起きたのか? という記者の質問に対し
て、麻生・財務相は、

 「分かれば苦労しない」

 「書き直すのではなく、言い直すことはできたはずだ」

 「その場の雰囲気、空気と言えばそれまでだが、正直分からない」

 と、答えています。


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 また、

 上の調査報告書の公表をうけて、安倍首相は同6月4日。

 記者団にたいして、「行政府の長として責任を痛感している」

 「二度とこのようなことを起こさないように公文書のあり方を徹底的
に見直し、再発防止を講じる」

 と、述べています。


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 以上、ここまで見てきましたが・・・ 

 何だか、すごくモヤモヤとした話で、全然すっきりしません。



 というのは、上で紹介した「調査報告書の要点」の③で、

 「政治家関係者の記載は外に出すべきではないと佐川氏が発言し、
安倍昭恵・首相夫人らに関する記述が削除された」

 とあるのに、麻生・財務相は記者会見で、

 「(安倍)昭恵氏がからんでいるから文書を書き直した、修正した
(ということ)は(調査では)認められない」

 と、説明しているからです。



 また、上で紹介した「調査報告書の要点」の④では、

 「安倍晋三首相が夫妻の関与を全面否定した昨年2月の国会答弁
などをきっかけに、交渉記録を廃棄した」

 とあるのに、矢野・官房長は記者会見で、

 「忖度(そんたく)、あるいは忖度に類する事実はなかった」 と、
強調しているのです。



 そして安倍首相は、

 森友学園問題に対して、関与したことも、忖度(そんたく)を強要した
こともなく、

 あくまでも「行政府の長として責任を痛感している」のだそうです。



 それでは、なぜ、

 上層部(安倍首相)からの関与や、忖度の強要もなかったのに、

 「文書の改ざん」や、「交渉記録の破棄」が行われたのでしょう?



 当時の理財局長だった佐川宣寿(のぶひさ)前国税庁長官は、

 この疑問について、国会の場で国民にたいして、十分な説明をする
べきであると、

 ここで私は、つよく指摘しておきたいと思います。



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