北朝鮮リスクが減少か? 4
                                2018年6月3日 寺岡克哉


 やはり、

 北朝鮮問題をめぐる情勢は、二転三転と激しく変化しており、目が離せ
ない状況が続いています。


              * * * * *


 5月24日。

 北朝鮮国営の朝鮮中央通信によると、崔善姫(チェ・ソンヒ)外務次官
が談話を発表し、

 「アメリカが我々と会談場で会うか、でなければ核対核の対決場で会う
かどうかは、アメリカの決心と行動いかんにかかっている」と、述べました。


 その上で、

 「アメリカが我々の善意を冒とくし、今後も非道に振る舞うならば、私は、
朝米首脳会談を再考慮することを最高指導部に提起するだろう」

 と、アメリカ側にたいして強くけん制しています。


 さらには、

 「アメリカのペンス副大統領が、テレビのインタビューで北朝鮮に対し、
”リビアと同じ轍(てつ)を踏む” ”軍事的な選択肢が排除されたことはな
い” などと生意気にしゃべった」

 と述べて、そのことについても非難しました。


              * * * * *


 これを受けて、アメリカのトランプ大統領は、同5月24日。


 シンガポールで6月12日に予定していた米朝首脳会談を、「中止する」
と発表しました。

 記者団にたいし、「北朝鮮や世界にとって大きな後退だ」と、述べてい
ます。



 トランプ大統領は、金正恩(キム・ジョンウン)委員長への書簡を作成し、
その内容についてホワイトハウスが発表しましたが、

 書簡では、「直近のあなた方の声明に表れた激しい怒りと、あらわな
敵意に鑑(かんが)み、現時点で会談を実施するのは不適切だと感じる」

 と、会談中止の意向を表明しています。



 またトランプ大統領は、ホワイトハウスで記者団にたいし、

 「マティス国防長官らと協議した。アメリカ軍は必要ならば対応をとる準備
ができている」

 と述べて、北朝鮮による軍事的な挑発をけん制しました。



 さらにトランプ大統領は、

 「核兵器の脅威が取り除かれなければ、北朝鮮に明るい未来はない」

 「金委員長が建設的な対話と行動に取り組むのを待っている」と語り、

 北朝鮮にたいして非核化に向けた行動を促しました。

 そして、

 それまでは制裁を維持し、「最大限の圧力」をかけ続ける方針を示して
います。


              * * * * *


 これを受けて、北朝鮮の金桂寛(キム・ゲグァン)第1外務次官は、
5月25日。

 「思いがけないことで大変遺憾」という談話を発表しました。



 朝鮮中央通信によると、金・第1外務次官の談話では、

 「(非核化の問題を)段階的に解決するなら、関係が良くなることは
あっても、悪くなることはないことをアメリカは熟考すべきだ」

 と、説明しています。


 また、

 「我々は常にアメリカ側に時間と機会を与え、いかなる時でも、どんな
方式でも対座して問題を解決する用意がある」

 と、対話継続の姿勢を示しました。


 その上で、

 トランプ大統領が首脳会談中止の理由とした、「北朝鮮の怒りと、あから
さまな敵意」については、

 「一方的に核廃棄の圧力をかけてきたアメリカ側の過度な言動が招いた
反発に過ぎない」と、説明しています。


              * * * * *


 5月26日。

 アメリカのトランプ米大統領は、ホワイトハウスで記者団にたいし、

 24日に中止を表明した米朝首脳会談について、「とても順調に進んで
いることに言及したい」と、述べました。


 その上で、

 「我々は6月12日のシンガポールでの開催を見据えている。その予定
は変えていない」と語り、

 当初の予定通りに米朝首脳会談の開催を目指すことに意欲を示して
います。


 また、トランプ大統領は米朝首脳会談について、

 「我々は朝鮮半島の非核化を成功できるだろう。北朝鮮、韓国、日本、
世界、米国、そして中国にとって素晴らしいことだ」

 と述べ、首脳会談の先行きに前向きな見通しを示しました。



 ちなみにトランプ大統領は、

 5月25日の金桂寛(キム・ゲグァン)第1外務次官が出した談話にたい
して、「北朝鮮から温かく生産的な声明が届いた」と評価しており、

 首脳会談中止の表明から一転して、開催に前向きな姿勢を示していた
といいます。


              * * * * *


 6月1日。

 アメリカのトランプ大統領は、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)
委員長と、

 当初の予定通り、6月12日にシンガポールで会談すると発表し
ました。




 トランプ大統領は、「会談はうまく行くだろう」と自信を示しています。

 しかしながら、「1回の会談で全てがなし遂げられるとは限らない」とも
述べており、

 会談は今後、「複数回に渡って開かれる」という見通しを示しました。



 また、

 トランプ大統領は、「北朝鮮は非核化を望んでいる」として、

 北朝鮮への制裁に関して、「これから ”最大限の圧力” という言葉は
使いたくない」と、述べています。



 ところで安倍首相は、かねてより、

 北朝鮮にたいする「最大限の圧力」を、声高(こわだか)に主張してき
ました。

 しかしトランプ大統領の、この発言によって、梯子(はしご)が外された
形になるかも知れません。


             * * * * *


 以上、ここまで見てきましたが、

 米朝首脳会談の実現が絶望的になったり、

 それが180度転換して、米朝首脳会談が実現されることになったり、

 北朝鮮問題をめぐる情勢は、ほんとうに刻一刻と、激しく変化して
います。


 なので、これから先も、

 どのように状況が変化して行くのか、まったく分かったものではあり
ません。


 やはり、今後もしばらく、

 「目が離せない状況」が続いていくのは、止(や)むを得ないところで
しょう。



      目次へ        トップページへ