北朝鮮リスクが減少か?
2018年4月29日 寺岡克哉
最近の北朝鮮は、
核・ミサイル開発の中止を決定したり、韓国との南北首脳会談に
応じたりと、
「緊張緩和」に向けた動きが活発になっています。
* * * * *
まず、北朝鮮は4月20日。
首都の平壌(ピョンヤン)で、朝鮮労働党中央委員会総会(注1)
を開き、
核実験と、ICBM(大陸間弾道ミサイル)の発射実験を、中止する
と決定しました。
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注1 朝鮮労働党中央委員会総会:
北朝鮮の朝鮮労働党において、年1回以上召集すると規定されて
いる重要会議。
朝鮮労働党における「重要な諸問題」を討議したり、決定するほか、
党の中枢である政治局常務委員、下部組織の政治局員、党の副
委員長などを選出します。
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この決定について、もう少し詳しく見てみると、その「要旨」は
以下のようになっています。
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朝鮮労働党中央委員会総会で決定されたことの要旨
●核兵器の開発が実現し、4月21日から核実験とICBM(大陸間
弾道ミサイル)の発射実験を中止する。
●核実験中止の透明性を確保するため、北部の核実験場を廃棄
する。
●核実験の中止は世界的な核軍縮のための重要な過程であり、
核実験の全面中止のための国際的な努力に合流する。
●わが国に対する核の威嚇(いかく)がない限り、核兵器を絶対に
使用せず、いかなる場合も核兵器と核技術を移転しない。
●核開発と経済建設の「並進路線」の勝利を宣言し、経済建設
に総力を集中する。
●経済建設に有利な国際環境をつくるため、周辺国や国際社会
との緊密な連携(れんけい)と対話を積極化する。
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また、
金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が、このたびの
中央委員会総会で、
「国家核戦力建設の大業を、短い期間で完璧に達成した」と
して、
「核実験や、中・長距離弾道ミサイルやICBMの発射実験は
必要なくなり、核実験場はその使命を終えた」
と、述べています。
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そして、4月27日。
韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領と、北朝鮮の金正恩(キ
ム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が、
南北の軍事境界線上にある板門店(パンムンジョム)の、韓国側
の施設である「平和の家」で、首脳会談を行いました。
北朝鮮の最高指導者が、韓国を訪れたというのは、
1953年に結ばれた朝鮮戦争の休戦協定後において、まったく
初めてのことであり、
まさに「歴史的な出来事」です!
この歴史的な会談において、南北両首脳は「板門店宣言」に
署名しましたが、この宣言には、
「朝鮮半島の完全な非核化」と、
「朝鮮戦争の終戦を宣言し、休戦協定を平和協定に転換」
ということが、明記されています。
以下、
それに関連した部分を、板門店宣言の全文から抜粋してみま
した。
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板門店宣言からの抜粋
◎南と北は、朝鮮半島の恒久的で強固な平和体制構築のため、積極
的に協力していくだろう。朝鮮半島で非正常な現在の休戦状態を
終わらせ、確固たる平和体制を樹立することは、もはや先送りできな
い歴史的課題だ。
●南と北は、いかなる形態の武力も互いに使用しないという不可侵
合意を再確認し、厳格に順守していくことにした。
●南と北は、軍事的緊張が解消され、互いの軍事的信頼が実質的に
構築されるのに伴い、段階的に軍縮を実現していくことにした。
●南と北は、休戦協定締結65年となる今年、終戦を宣言し、休戦
協定を平和協定に転換し、恒久的で強固な平和体制を構築する
ため、南北米3者、または南北米中4者会談の開催を積極的に推進
していくことにした。
●南と北は、完全な非核化を通して核のない朝鮮半島を実現すると
いう共通の目標を確認した。
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以上、ここまで見てきましたが、
たしかに、北朝鮮問題のリスクが減少して、良い方向に進んでいる
ように見えます。
が、しかしながら、
北朝鮮は過去に、「国際的な約束を破り、核開発を止めなかった」
という前科があります。
また、
日本と北朝鮮との間には、「拉致問題」という、とても大きな問題も
抱えています。
なので、
ただ無邪気に喜んでいる訳にはいかず、今後の北朝鮮の動向を、
十分に注視して行かなければならないのは、言うまでもありません。
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