貿易戦争の危機 1
2018年3月11日 寺岡克哉
トランプ大統領が、また馬鹿げたことを言い出したので、
世界中が大騒ぎになっています・・・
* * * * *
アメリカのトランプ政権は、
戦闘機や軍艦の製造に使われる鉄鋼やアルミニウムが、中国で過剰
に生産されて国際的に価格が下落し、各国から不当に安く輸入されて
いるとして、
「安全保障への脅威」を理由に、大統領権限で行う「輸入制限措置の
発動」を検討しています。
これについてトランプ大統領は、3月1日。
記者団にたいし、「鉄鋼には25%、アルミニウムには10%の関税を
課す。この措置は長い期間にわたるだろう」と述べ、
次の週にも、措置の発動を正式に決める意向を明らかにしました。
このときトランプ大統領は、措置の対象になる国を明確にしませんで
したが、
おもに標的とする中国だけでなく、日本を含めて鉄鋼やアルミニウム
をアメリカへ輸出する「すべての国が対象」となる可能性があり、
貿易摩擦の激化など、世界経済への影響が懸念されています。
* * * * *
ちなみに、
アメリカが鉄鋼を輸入している主な相手国は、以下のようになって
います。
------------------------
カナダ 16.1%
ブラジル 13.0%
韓国 10.2%
メキシコ 9.0%
ロシア 8.7%
トルコ 6.3%
日本 5.0%
ドイツ 3.8%
台湾 3.5%
インド 2.4%
中国 2.2%
その他 19.8%
※ アメリカの商務省が、2017年1月~10月の実績
を基に、年間の輸入量を推計。
------------------------
また、
2017年のEU(ヨーロッパ連合)からアメリカへの鉄鋼の輸出額
は、およそ53億ユーロで、アルミはおよそ11億ユーロとなってい
ます。
上のデータを見ると、
アメリカは中国だけでなく、日本を含めた様々な国から鉄鋼を
輸入していることが分かります。
そのため、
アメリカへ鉄鋼を輸出している「すべての国」が、25%もの高い
関税の対象になれば、世界経済への影響が甚大になってしまう
でしょう。
ところで、
上のデータを見ると、中国からの鉄鋼の輸入は、2.2%に過ぎ
ません。
しかしながら、中国は他の国を経由して、大量の鉄鋼やアルミを
アメリカに輸出していると、一般的に見られています。
* * * * *
当然のことですが、
トランプ大統領の、この突拍子(とっぴょうし)もない関税導入に
たいし、世界各国から懸念が表明されました。
その中でも、
とりわけEU(ヨーロッパ連合)は強く反発し、「貿易戦争」の様相
を示してきました。
EUの執行機関にあたるヨーロッパ委員会のユンケル委員長は、
3月1日に声明をだし、
「極めて遺憾だ。国内産業を保護するためのあからさまな介入で、
いかなる安全保障上の理由にも基づいていないと思われる」
として、厳しく批判しました。その上で、
「ヨーロッパの雇用を危険にさらす不当な措置によって打撃を受け
るのであれば、われわれは黙っていない。利益を守るため断固として
相応の行動に出る」
と述べて、対抗措置も辞さない考えを明らかにしています。
* * * * *
3月2日。
アメリカ・ホワイトハウスの高官は、記者団にたいし、関税の対象国
に「例外はない」と明言しました。
一方、同日のロイター通信によると、
EUは、実際に関税の導入が発動された場合、アメリカからの28億
ユーロ(およそ3650億円)相当の輸入品に、25%の報復関税を適用
する検討を始めたとしています。
EUがアメリカからの輸入品に報復関税を適用する場合、ハーレー
ダビッドソンの二輪車、バーボン(酒)、リーバイ・ストラウスのブランド
「リーバイス」のジーパンなどが、対象になる可能性があるといいいます。
これに対して、トランプ大統領は同3月2日。
ツイッターに、「アメリカが貿易で何十億ドルも損をしている時、貿易
戦争はいいことだ。簡単に勝てる」
と、書き込んでいます。
* * * * *
3月3日。
トランプ大統領は、EUが報復措置を取るならば、EUからの輸入自動
車に関税をかけると、けん制しました。
トランプ大統領はツイッターに、
「EUが既にそこで活動しているアメリカ企業に課している巨額の関税、
設けている巨大な障壁をさらに引き上げるつもりなら、自由にアメリカに
流れ込んでいるEUの自動車に税金を課すまでのことだ」
と、書き込んでいます。
* * * * *
3月7日。
EU(ヨーロッパ連合)は、アメリカのトランプ大統領にたいし、
鉄鋼とアルミニウムの輸入関税を強行すれば、ヨーロッパ側は「強い
対応」を取ると警告しました。
アメリカとヨーロッパの「貿易戦争」が、即時開戦となる可能性が高まっ
ています。
ヨーロッパ委員会のマルムストローム委員(通商担当)は、ベルギーの
ブリュッセルで記者団にたいし、
トランプ大統領が計画する関税は「アメリカとヨーロッパの関係を損なう
と同時に、規則に基づく世界の貿易システムにも害を与える恐れがある」
として、「正しい行動ではない」と断じています。
* * * * *
3月8日。
トランプ大統領は、鉄鋼とアルミニウムの輸入関税を発動する文書に
署名しました。
鉄鋼に対して25%、アルミニウムに対しては10%の関税が課せら
れ、15日後の3月23日に発動するとしています。
ホワイトハウスで関税発動の文書に署名したトランプ大統領は、
「強い鉄鋼とアルミニウム業界は、我が国の安全保障にとって、絶対
的に不可欠だ」と強調しました。
外国からの輸入やダンピングのために工場が閉鎖に追い込まれ、
「何100万人」もの雇用が失われたと主張しています。
さらに、
「これは単なる経済的な打撃ではない。安全保障上の打撃でもある」
「われわれの船舶や航空機は、わが国の鉄鋼とアルミニウムで製造
したいと思う」と述べて、
「私は外国からの鉄鋼とアルミニウムに関税を課すことにより、アメリカ
の国家安全保障を守る」と宣言しました。
ただし、
カナダとメキシコは関税の対象から除外するほか、他の同盟国も同様
の除外を求めることができるとしています。
* * * * *
・・・さあ、いよいよ大変な事態になってきました。
EU((ヨーロッパ連合)は、一体どのような対処をするのでしょう?
このまま、「貿易戦争」に突入してしまうのでしょうか?
そしてまた、
わが国の日本も、いま現在のところ「関税の対象国」になっており、
けっして他人事ではありません。
それらについては、もう少し日にちが経たなければ明らかになりま
せんので、
次回でレポートしたいと思います。
目次へ トップページへ