北朝鮮リスクが増大 17
2018年3月4日 寺岡克哉
前々回の、エッセイ833「北朝鮮リスクが増大 16」で書きましたが、
アメリカのペンス副大統領は韓国訪問の際に、「北朝鮮高官代表団」
とは接触しませんでした。
これについてペンス副大統領は、北朝鮮が「地球上で最も専制的で
圧政的な体制」を敷いていることを考慮し、あいさつを交わさなかったと
述べました。
その上で、
「金正恩・朝鮮労働党委員長の妹の金与正(キム・ヨジョン)氏を避けた
わけではなく、無視したのだ」と述べ、
「独裁者の妹であるだけでなく、扇動活動の主導者でもある人物を容認
したり注意を向けたりすることは、米国として適切ではないと考えた」と、
説明していました。
ところが!
じつはペンス副大統領は、金与正(キム・ヨジョン)氏ら北朝鮮の高官と、
会談をする予定でした。
会談の直前に、北朝鮮がキャンセルして実現しなかったといいます。
2月20日に、アメリカ国務省のナウアート報道官が声明をだし、
「ペンス副大統領は、違法な核・弾道ミサイル開発を放棄する必要性
を北朝鮮に理解させるため、この機会を利用する用意があった」と、表明
しました。
ただ、直前になって、北朝鮮側からキャンセルを申し入れてきたといい
ます。
また、アメリカのワシントン・ポスト紙によると、
会談は北朝鮮が韓国を通じてアメリカ側に申し入れ、2月10日に
青瓦台(大統領府)で会談することで秘密裏に合意していたといい
ます。
しかしながら、ペンス副大統領が脱北者と面会したり、追加制裁に
言及したことなどに北朝鮮が不満を示し、
会談の2時間弱前に、中止を求めてきたということです。
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ところが、韓国の大統領府によると2月25日。
平昌(ピョンチャン)オリンピックの閉会式に先立って、
韓国を訪れていた「北朝鮮高官代表団(注1)」は、韓国の文在寅
(ムン・ジェイン)大統領と、1時間にわたって会談をしましたが、
この中で、北朝鮮側は、
「アメリカと対話をする十分な用意がある。南北関係と米朝関係は
一緒に発展すべきだ」
として、2012年の2月から途絶えている米朝対話の再開に、前向き
な姿勢を示したといいます。
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注1:
北朝鮮は、韓国との関係を統括する統一戦線部長を務めている
キム・ヨンチョル副委員長をトップとする高官代表団8人を、2月25日
から3日間の日程で、韓国に派遣していました。
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このことに関連して、アメリカのホワイトハウスは同日に声明をだし、
「トランプ政権は、完全かつ検証可能な朝鮮半島の非核化に取り組ん
でいる。北朝鮮が非核化するまで、最大限の圧力を続けなければなら
ない」
として、圧力を高めていく必要性を強調しました。 その上で、
「北朝鮮が非核化を選択するなら明るい道が開ける。 ”アメリカと対話
をする十分な用意がある” と述べた北朝鮮のメッセージが、非核化への
最初のステップを示しているのか、注視していく」
として、北朝鮮の対応に変化があるのか、見極めていく考えを示して
います。
* * * * *
2月26日。
アメリカのトランプ大統領は、北朝鮮が対話への意欲を示したことに
ついて、
「適切な環境のもとでなら我々も対話を望んでいる。そうでなければ
対話しない」
と、全米の州知事を集めたホワイトハウスでの会合で述べました。
また、トランプ大統領は、
韓国を訪れた北朝鮮高官代表団が、「アメリカと対話をする十分な
用意がある」と語ったことなどを念頭に置いて、
「彼らは対話をしたがっている」と指摘し、「様子をみてみよう」と語って
います。
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以上、ここまで見てきましたが、
北朝鮮側は、ペンス副大統領との会談を「ドタキャン」しておきながら、
すこし後になって、「アメリカと対話をする十分な用意がある」と述べる
など、
ちょっと何を考えているのか、分からない所があります。
しかしながら、北朝鮮の姿勢として、
以前のように、核実験やミサイル発射を立て続けに行って、緊迫状態を
一方的に煽(あお)り立てるのではなく、
すこしは「対話路線」も重視するように、方向転換をしてきたように見え
ます。
しかし、そうではありますが、
過去からの経緯をみると、北朝鮮は、いきなり何をやるのか分からない
国なので、
まだまだ気を緩(ゆる)めることなく、しっかりと注視していく必要がある
のは、言うまでもありません。
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