北朝鮮リスクが増大 16
2018年2月18日 寺岡克哉
アメリカのペンス副大統領が、
平昌(ピョンチャン)オリンピックの開会式に合わせて、2月8日~10日
まで韓国を訪れていました。
そして一方、
北朝鮮の高官代表団も、オリンピックの開会式に合わせて韓国を訪れ
ていました。
なので、もしかしたら、
これら両者の韓国訪問によって、北朝鮮にたいするアメリカの姿勢が、
少しは変わって行くかもしれないと私は注目していました。
それで今回は、
韓国を訪問した後の、ペンス副大統領の言動について、ちょっと見て
行きたいと思いました。
* * * * *
アメリカのワシントン・ポスト紙は、2月11日。
「アメリカは北朝鮮への圧力を維持する一方で、北朝鮮の核開発に
関して協議に取り組む用意がある」
と、ペンス副大統領とのインタビューを引用して伝えました。
ワシントン・ポスト紙によると、
ペンス副大統領は、滞在していた韓国から帰国する飛行機の中で、
同紙の取材にたいし、
「要点は、非核化に向けた重要な措置とわれわれが確信する事柄を
彼ら(北朝鮮)が実行するまで、圧力は停止しないということだ」
と、指摘しました。その上で、
「つまり最大限の圧力は続き、強まる。だが、対話を望めば、話をする
だろう」
と、述べたといいます。
これは、アメリカが北朝鮮への圧力を続ける一方で、
「北朝鮮の非核化に向けた具体的な行動や意思表示がなくても、アメ
リカは対話に応じる」
ということを示唆しており、ワシントン・ポスト紙は、
「ホワイトハウスが前提条件なしで対話をするという考え方を認めたの
は、極めて重要な意味がある」
と、評価しています。
* * * * *
しかしながら、ペンス副大統領は2月14日。
ニュースサイト「アクシオス」のインタビューにたいし、アメリカは北朝鮮
と対話を行う用意があるが、「北朝鮮の核放棄が条件になる」という考え
を示しました。
ペンス副大統領はインタビューで、
「アメリカは北朝鮮にたいし、引きつづき外交的、経済的な圧力を強め、
北朝鮮が核・ミサイル開発を放棄するまで、制裁措置は解除しない」
と述べました。 その上で、
「アメリカのゆるぎない政策を北朝鮮に伝える機会があるなら、対話に
前向きとの立場をトランプ大統領は明確にしてきた」
と語り、「対話は交渉ではない」と強調しています。
さらには、北朝鮮への軍事行動に関して
「核・ミサイルの脅威に対処する現実的な軍事オプションを持っている」
と主張しました。
また、ペンス副大統領は、
韓国訪問の際に、韓国政府と会談した「北朝鮮高官代表団」とは
接触しませんでした。
これについてペンス副大統領は、北朝鮮が「地球上で最も専制的で
圧政的な体制」を敷いていることを考慮し、あいさつを交わさなかったと
述べています。
その上で、
「金正恩・朝鮮労働党委員長の妹の金与正(キム・ヨジョン)氏を避けた
わけではなく、無視したのだ」と述べ、
「独裁者の妹であるだけでなく、扇動活動の主導者でもある人物を容認
したり注意を向けたりすることは、米国として適切ではないと考えた」
と、説明しています。
* * * * *
以上、ここまで見てきましたが、
韓国を訪問後のペンス副大統領は、「北朝鮮の核放棄という前提
条件なし」で、アメリカが北朝鮮と対話をする可能性を示唆しました。
しかしそれは、
ペンス副大統領の勇(いさ)み足だったのかも知れませんし、
ワシントン・ポスト紙が、勝手に誤解しただけなのかも知れません。
ペンス副大統領は後(のち)に、
アメリカは北朝鮮と対話を行う用意があるが、「北朝鮮の核放棄が
条件になる」と、軌道修正をしています。
また、
ペンス副大統領は、韓国訪問の際に、北朝鮮の高官代表団とも
接触しませんでした。
じつは私は、
ペンス副大統領の韓国訪問によって、北朝鮮とアメリカの緊迫関係
が、少しは緩和するかもしれないと期待していました。
しかしどうやら、その私の期待は、「空振り」に終わったみたいです。
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