お金に履歴をつける
                              2018年2月11日 寺岡克哉


 私は以前(10年ぐらい前)に、

 もしも、お金に「履歴」をつけることができたら、

 「お金を盗む」という行為そのものが「無意味」になるのではないかと、
考えたことがありました。



 そのとき私が考えたのは、

 たとえば1万円札などに「ICタグ」をつけて、

 その1万円札が、日本銀行で発行されてから、どこそこの銀行を経由
して、預金をしていた誰々に引き出され、その誰々がどこそこの商店で
品物を買ったときに支払われた・・・ 

 等々のような「お金の履歴」を、ICタグに記録していくのです。



 そうすれば、

 もしも金が盗まれた場合、ICタグには「盗まれる直前の持ち主」が
記録されているので、

 盗んだ犯人が、その金を使おうとしたときに、ICタグの情報がチェッ
クされれば、その犯人は捕まってしまいます。

 つまり、「盗まれた金を使えなくすること」ができるのです。



 このように、「お金を盗んでも使えない」となれば、

 「お金を盗む」という行為そのものが、「無意味」となってしまうで
しょう。



 しかしながら、

 過去に記録されたICタグの情報が、書き換えられてしまったら、

 すべて終わりになってしまいます。



 なので、お金に履歴をつけるためには、

 「過去に書き込まれた情報の後(うしろ)に、新しい情報を書き加え
ることはできるが、いちど書き込まれた情報を変更することはできな
い」

 という情報技術が、どうしても必要になります。


            * * * * *


 そんな過去の思いつきが、ずっと私の頭にあった中で、

 昨今では「仮想通貨」の取引がブームになってきており、

 そのようなブームの中で、「コインチェック事件」が起こったので
した。



 そして私は、

 「コインチェック事件」や「仮想通貨」のことを調べているうちに、

 「ブロックチェーン」という言葉に突き当たりました。



 この、「ブロックチェーン」とは何かですが、

 ちょっと調べてみたけれど、ものすごく難しくて複雑な話で、

 私には良く分かりませんでした。



 しかしながら、すごく大ざっぱな話として、

 (たとえば仮想通貨の1回の取引情報など)ある一塊のデータを
「ブロック」といいますが、

 その「ブロック」を、新しい取引が成立するたびに次々と書き加えて
いき、

 ブロックが「チェーン(くさり)」のように繋がったデータの一群を、

 「ブロックチェーン」と言うみたいです。



 そして「ブロックチェーン」においては、「ハッシュ関数」というもの
を利用することにより、

 いちど書き込まれた「ブロック」の情報は、変更することが出来ない
ようになっています。



 つまり「ブロックチェーン」は、

 「過去に書き込まれた情報の後(うしろ)に、新しい情報を書き加え
ることはできるが、いちど書き込まれた情報を変更することはできな
い」

 という機能を持っているのです。


             * * * * *


 このような「ブロックチェーン」という技術を使い、

 円やドルなどの通貨を、まずは「電子マネー化」し、そして履歴を
書き込めるようにすれば、

 窃盗も、脱税も、マネーロンダリング(資金洗浄)も不可能になる
のではないかと、私は思うわけです。



 しかしながら、「コインチェック事件」の続報によると、

 盗まれた580億円相当の仮想通貨「NEM]のうち、5億円分
以上が、

 匿名性の高い「ダークウェブ」のサイトを通じて、ビットコインなど
他の仮想通貨に交換された疑いがあるみたいです。



 ところで、前回で述べたように、

 盗まれた「NEM」が送金されたウォレットアドレス(口座)には、
「特定のマーク」が付くようになっており、

 盗まれた「NEM」の送金先を、追跡して行くことが可能です。



 ところが、

 多数の人が「NEM」を小分けにして短時間で転売すれば、

 「特定のマーク」が付かなくなってしまうことが判明しました。



 これを見ると、

 「お金に履歴をつける」という情報技術が、十分に確立されるまで
には、

 もうしばらく時間が必要なのだろうと思います。



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