人間を孤独から救うもの 2003年9月21日 寺岡克哉
人間は、「孤独」を大変に恐れて嫌う生き物です。
「恋人が欲しい!」
「結婚して子供が欲しい!」
「友だちや仲間が欲しい!」
「みんなと常につながっていたい!」
「世間や社会から切り離されたくない!」
という、大変に強い欲求が人間にはあるのです。
ところでストレスの多い現代社会では、「ゴタゴタした人間関係なんか、わずらわ
しいだけだ!」と、思う人もけっこう多いかも知れません。(実は私も、そのような
タイプの人間です。)
しかし「実際の人間関係」はわずらわしくても、「みんなが共有する世間の風潮
から、自分がはずされたくない!」と、かなり強く思っているはずです。
その証拠に、みんなが良くテレビをみたり、新聞や雑誌を読んだりするのも、最新
の話題や流行、ファッション、世間の常識や社会の常識から、自分がはずれない
ようにするためだと思うのです。
また、携帯電話やインターネットが世界的に普及するのも、
「孤独は嫌だ!」
「出来るだけたくさんの人間と、常につながっていたい!」
という人類に共通した欲求が、その根底にあるからだと思います。
しかし現代では、最新の話題や流行がすぐにコロコロと変わるので、みんなそれ
について行くのに必死ではないでしょうか?
テレビや新聞を1週間ぐらい見なかっただけで、みんなから取り残されるのではな
いかというような、恐れや不安はないでしょうか?
そして、あまりにも狭い仲間意識・・・。
年齢や世代が違ったり、仕事や会社が違ったり、趣味や考え方が違うだけで、
「もうこの人とは話が合わないからつき合わない!」などと、すぐに決めつけてはい
ないでしょうか?
また、恋人や家族や友人以外の人間は、自分と全く関係ない人間だと、「心の壁」
を作っていないでしょうか?
さらには同じ家族であっても、
「親とは話が合わないから何を話しても無駄だ!」とか、
「子供とは話が合わないから何を話しても無駄だ!」
というような、「心の壁」はないでしょうか?
それで不安が絶えないのだと思います。現代社会における不安には、「孤独に対
する恐怖」というのも、その根底にあるように思います。
そして例えば、不登校や引きこもり、リストラなどで耐えられないほどの苦しみを
感じてしまうのも、
「自分はもう、みんなと同じ普通の人間でなくなってしまった!」とか、
「親や家族や、世間に対して顔向けができない!」
というような、自分がみんなと切り離されてしまったことによる「孤独」も、その原因
の一つなのではないでしょうか?
私は何かもっとこう、世代や仕事や考え方が違っていても、あるいは人生の境遇
やライフスタイル、さらには住んでいる国が異なっても、「同じ人間どうし」として心
の底が通じ合えるような、「心の共通基盤」が必要だと思うのです。
この「心の共通基盤」は、テレビの話題や社会風潮のようにコロコロと変わるもの
ではいけません。
また、大学を出ているとか、定職についているとか、結婚しているとか、そのよう
な「規格化されたライフスタイル」であってもいけません。
少なくても数世代の百年以上にわたって、さらに出来れば千年以上にわたって、
「人間の心の根本は変わらないのだ!」という、どっしりと安定して信頼のおける
「心の共通基盤」が必要なのです。
祖父母、父母、兄弟、子供、孫・・・。これら世代の違いや、あるいは人生の境遇
や住んでいる国が異なっても、「同じ人間であれば、心の根本はみな同じなのだ!」
という安心感を与えるもの。世界の全ての人間を孤独から救うもの。そのような「心
の共通基盤」が必要なのです。
その「心の共通基盤」の最有力候補が、「神」であると私は考えています。
「神」は、時代や国境を超えて、人類の心を一つにつなぐからです。
「神を愛する同じ人間どうし」という「心の共通基盤」をみんなが持てば、世代の
ギャップを乗り越えて心が通じ合えます。
また、外国人であっても全く怖くありません。たどたどしい英語しか話せなくても、
心の底が通じ合えるからです。
この、心の共通基盤としての「神」とは、人類共通の愛、人類共通の良心、人類
共通の良識、人類共通の理性、というようなものです。
宗教、思想、民族、国家、エネルギー資源、経済摩擦などによる対立が起こりえ
ない、人類に共通した精神。
常識的で良識的な人間であれば、誰もが持っているはずの「人としての心」。
つまり、ここでいう「神」とは人類全体に共通した心、「人類の心」です。
世界中の何十億もの人々が、神を愛して心を一つにする。そのような思いに心が
馳せるとき、
「自分は一人だけではない!」
「私と心を一つにした人々が、世界中に何十億人といる!」
「そして、そのような人々は何千年も前の昔からいたし、何千年後の未来にも必ず
いるのだ!」
と思うことができて、やりきれない孤独から救われるのです。そして何となく嬉しくな
り、生きる力が湧いてくるのです。
神を愛すれば(人類の心と自分の心を一つにすれば)、孤独な一人暮らしをしてい
ても、不登校や引きこもりになっても、リストラに合っても、自分が人類から切り離さ
れることは絶対にありません。
そのような状況であっても、時代と国境を超えた世界中の人々と、神の下で一つ
につながることが出来るのです。
人間どうしの心の根っ子をつなぐもの。それをみんなが持てば、考え方や住む国
が違っても、心と心がお互いに通じ合えるのです。
現代はグローバル化が進み、世界中のあちらこちらで、多種多様な価値観が衝突
しています。
そのような時代だからこそ、人類共通の心の基盤、つまり「人類共通の神」が
必要なのです。
目次にもどる