北朝鮮リスクが増大 14
2017年12月17日 寺岡克哉
12月18日の前後ぐらいにも、
アメリカが、北朝鮮への「予防的先制攻撃」(つまり、金正恩・委員長
の斬首作戦)を、行うのではないかという情報が、
インターネット上に飛び交(か)っています。
私の心情としては、「 ”ガセネタ” であってほしい」と願うばかりですが、
北朝鮮をめぐる情勢が、ひどく緊迫しているのも、否定できない事実
です。
なので、
とても心配というか、すごく不安というか、何とも言えない嫌な気分です。
* * * * *
ところで、前回では触れませんでしたが、
じつは「国連」が、北朝鮮問題の「対話による解決」に向けて、動いて
いました。
12月5日~8日にかけて、
国連のフェルトマン事務次長(政治局長)が、北朝鮮を訪問したのです。
国連の高官が北朝鮮を訪問するのは、じつに6年ぶりのことです。
しかしながらフェルトマン事務次長は、
北朝鮮の平壌(ピョンヤン)で、李容浩(リ・ヨンホ)外相たちと会談を
しましたが、
金正恩(キム・ジョンウン)委員長との面会は、無かったといいます。
* * * * *
国連のグテレス事務総長は、12月8日。
国連本部で記者団の取材に応じ、フェルトマン事務次長が北朝鮮を
訪問したことについて、
「非核化を達成するための環境をつくり、事態が手に負えなくなる前に
対話に基づく外交的、政治的解決を目指すものだ」と、説明しました。
また、
「国連として必要なステップで、我々の義務でもある」と述べて、
「危機の打開に向けて、対話路線を構築するべきだ」という、認識を示し
ました。
さらに、グレテス事務総長は、
緊張の緩和に向けて「建設的、オープンで有意義な対話により、非核化
を実現しなければならない」と指摘して、
「我々は対話を促進するために、あらゆることをする」と、力を込めて言い
ました。
もちろんですが、グテレス事務総長は、軍事的な手段による解決に反対し
ており、
「平和的な方法で(非核化という)目的を達成するため、関係国間で効果
的な対話をなすべきだ」
と、繰り返して強調し、北朝鮮との対話の必要性を訴えています。
* * * * *
12月9日の、国連の発表によると、
フェルトマン事務次長と、李容浩(リ・ヨンホ)外相との会談で、
北朝鮮の現状については「今日の世界で最も緊迫し、最も危険
な安全保障問題である」
という認識で、一致したことを明らかにしました。
また、
フェルトマン事務次長と、朴明国(パク・ミョングク)外務次官との会談
では、
国連安全保障理事会による決議を、完全に履行することの必要性を
強調したほか、
国際社会が平和的な解決の実現を目指していることを、伝えたといい
ます。
一方、フェルトマン事務次長は、報道陣向けの声明で、
「現在の(朝鮮半島)問題には、誠実な対話を通じて至る外交的な手段
しかありえない。時間が最も重要だ」と、述べました。
その上で、
「衝突の危険を抑えるためには誤った判断の防止と、開かれた対話の
窓口が緊急に必要とされる」
と述べて、国際社会は平和的解決のために尽力していることを強調し
ました。
* * * * *
このように国連は、
北朝鮮問題の「対話による平和的な解決」に向けて、頑張っています。
そして、
北朝鮮のチャ・ソンナム国連大使は、12月12日に北京で報道陣の
取材に応じ、
アメリカとの対話について、「条件が整えば対話できるだろう」と述べて
います。
また、アメリカのティラーソン国務長官も、同12月12日。
講演後の質疑応答で、北朝鮮との対話の条件について問われたとき、
「北朝鮮が話したいときは、いつでも対話する用意がある。前提条件
なしだ」
と述べて、北朝鮮との対話に応じる考えを表明したのです。
これらを見るかぎり、
アメリカと北朝鮮との「対話の可能性」が、すこしは高まってきたように
感じます。
* * * * *
ところが、
アメリカ・ホワイトハウスの当局者は、12月13日。
「北朝鮮の最近の弾道ミサイル発射を考えれば、明らかに今は(対話の)
時期ではない」
と述べて、早期対話の可能性を打ち消し、ティラーソン国務長官の発言
にたいし軌道修正を図(はか)りました。
また、
国務省のナウアート報道官も、12月13日の記者会見で、
「われわれの政策は変わっておらず、ホワイトハウスと国務省は同じ考え
だ」と、強調し、
「ティラーソン国務長官は、新しい政策を打ち出したわけではない」と、
釈明しました。
その上で、「金正恩(朝鮮労働党委員長)は、対話にいかなる意味でも
真剣な姿勢を示していない」と、批判しています。
さらには、
マクマスター大統領補佐官(国家安全保障問題担当)も、同12月13日。
北朝鮮に関しては、「非核化が唯一の実行可能な目標だ」と、明言しま
した。
ティラーソン国務長官の発言にたいしても、
「アメリカが北朝鮮に対する圧力を少しでも弱めたり、非核化と引き換え
に何らかの要求に屈したりすることを意味するものではない」と、述べてい
ます。
* * * * *
そして残念なことに・・・
ティラーソン国務長官は、12月15日の北朝鮮核問題に関する国連安全
保障理事会の閣僚級会合で、
「トランプ政権は、非核化を達成する交渉に北朝鮮を関与させる目的で
圧力強化を進めてきた。これを続ける決意は強まるばかりだ」
と述べて、圧力を強化する考えに変わりはないと強調しました。
そして、
「われわれは、北朝鮮との戦争は望まず、外交で解決することを願って
いる」と、述べたのですが、
その一方で、
「対話に入るには、地域を脅威にさらす北朝鮮の行いが持続的に停止
されなければならない」と述べ、
「前提条件なし」で対話に入ることも可能だとした自分自身の発言を、
事実上撤回してしまいました。
そして一方、北朝鮮のチャ・ソンナム国連大使も、
閣僚級会合のあと記者団にたいし、アメリカとの対話の可能性について、
「前提条件なしに対話しようと言いながら、われわれに継続して圧力と
制裁を加えている。まだ対話できる状況ではない」
と述べて、現時点での対話には否定的な考えを示しました。
* * * * *
以上、ここまで見てきましたが、
国連のグレテス事務総長と、フェルトマン事務次長の努力により、
アメリカと北朝鮮との「対話への機運」が、ちょっとは高まってきたの
ではないかと期待したのですが、
どうして、なかなか、やはり一筋縄では行かないようです。
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