北朝鮮リスクが増大 14
                             2017年12月17日 寺岡克哉


 12月18日の前後ぐらいにも、

 アメリカが、北朝鮮への「予防的先制攻撃」(つまり、金正恩・委員長
の斬首作戦)を、行うのではないかという情報が、

 インターネット上に飛び交(か)っています。



 私の心情としては、「 ”ガセネタ” であってほしい」と願うばかりですが、

 北朝鮮をめぐる情勢が、ひどく緊迫しているのも、否定できない事実
です。

 なので、

 とても心配というか、すごく不安というか、何とも言えない嫌な気分です。


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 ところで、前回では触れませんでしたが、

 じつは「国連」が、北朝鮮問題の「対話による解決」に向けて、動いて
いました。


 12月5日~8日にかけて、

 国連のフェルトマン事務次長(政治局長)が、北朝鮮を訪問したのです。

 国連の高官が北朝鮮を訪問するのは、じつに6年ぶりのことです。



 しかしながらフェルトマン事務次長は、

 北朝鮮の平壌(ピョンヤン)で、李容浩(リ・ヨンホ)外相たちと会談を
しましたが、

 金正恩(キム・ジョンウン)委員長との面会は、無かったといいます。


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 国連のグテレス事務総長は、12月8日。

 国連本部で記者団の取材に応じ、フェルトマン事務次長が北朝鮮を
訪問したことについて、

 「非核化を達成するための環境をつくり、事態が手に負えなくなる前に
対話に基づく外交的、政治的解決を目指すものだ」と、説明しました。

 また、

 「国連として必要なステップで、我々の義務でもある」と述べて、

 「危機の打開に向けて、対話路線を構築するべきだ」という、認識を示し
ました。



 さらに、グレテス事務総長は、

 緊張の緩和に向けて「建設的、オープンで有意義な対話により、非核化
を実現しなければならない」と指摘して、

 「我々は対話を促進するために、あらゆることをする」と、力を込めて言い
ました。



 もちろんですが、グテレス事務総長は、軍事的な手段による解決に反対し
ており、

 「平和的な方法で(非核化という)目的を達成するため、関係国間で効果
的な対話をなすべきだ」

 と、繰り返して強調し、北朝鮮との対話の必要性を訴えています。


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 12月9日の、国連の発表によると、

 フェルトマン事務次長と、李容浩(リ・ヨンホ)外相との会談で、

 北朝鮮の現状については「今日の世界で最も緊迫し、最も危険
な安全保障問題である」


 という認識で、一致したことを明らかにしました。

 また、

 フェルトマン事務次長と、朴明国(パク・ミョングク)外務次官との会談
では、

 国連安全保障理事会による決議を、完全に履行することの必要性を
強調したほか、

 国際社会が平和的な解決の実現を目指していることを、伝えたといい
ます。



 一方、フェルトマン事務次長は、報道陣向けの声明で、

 「現在の(朝鮮半島)問題には、誠実な対話を通じて至る外交的な手段
しかありえない。時間が最も重要だ」と、述べました。

 その上で、

 「衝突の危険を抑えるためには誤った判断の防止と、開かれた対話の
窓口が緊急に必要とされる」

 と述べて、国際社会は平和的解決のために尽力していることを強調し
ました。


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 このように国連は、

 北朝鮮問題の「対話による平和的な解決」に向けて、頑張っています。



 そして、

 北朝鮮のチャ・ソンナム国連大使は、12月12日に北京で報道陣の
取材に応じ、

 アメリカとの対話について、「条件が整えば対話できるだろう」と述べて
います。



 また、アメリカのティラーソン国務長官も、同12月12日。

 講演後の質疑応答で、北朝鮮との対話の条件について問われたとき、

 「北朝鮮が話したいときは、いつでも対話する用意がある。前提条件
なしだ」

 と述べて、北朝鮮との対話に応じる考えを表明したのです。



 これらを見るかぎり、

 アメリカと北朝鮮との「対話の可能性」が、すこしは高まってきたように
感じます。


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 ところが、

 アメリカ・ホワイトハウスの当局者は、12月13日。

 「北朝鮮の最近の弾道ミサイル発射を考えれば、明らかに今は(対話の)
時期ではない」

 と述べて、早期対話の可能性を打ち消し、ティラーソン国務長官の発言
にたいし軌道修正を図(はか)りました。



 また、

 国務省のナウアート報道官も、12月13日の記者会見で、

 「われわれの政策は変わっておらず、ホワイトハウスと国務省は同じ考え
だ」と、強調し、

 「ティラーソン国務長官は、新しい政策を打ち出したわけではない」と、
釈明しました。

 その上で、「金正恩(朝鮮労働党委員長)は、対話にいかなる意味でも
真剣な姿勢を示していない」と、批判しています。



 さらには、

 マクマスター大統領補佐官(国家安全保障問題担当)も、同12月13日。

 北朝鮮に関しては、「非核化が唯一の実行可能な目標だ」と、明言しま
した。

 ティラーソン国務長官の発言にたいしても、

 「アメリカが北朝鮮に対する圧力を少しでも弱めたり、非核化と引き換え
に何らかの要求に屈したりすることを意味するものではない」と、述べてい
ます。


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 そして残念なことに・・・ 


 ティラーソン国務長官は、12月15日の北朝鮮核問題に関する国連安全
保障理事会の閣僚級会合で、

 「トランプ政権は、非核化を達成する交渉に北朝鮮を関与させる目的で
圧力強化を進めてきた。これを続ける決意は強まるばかりだ」

 と述べて、圧力を強化する考えに変わりはないと強調しました。

 そして、

 「われわれは、北朝鮮との戦争は望まず、外交で解決することを願って
いる」と、述べたのですが、

 その一方で、

 「対話に入るには、地域を脅威にさらす北朝鮮の行いが持続的に停止
されなければならない」と述べ、

 「前提条件なし」で対話に入ることも可能だとした自分自身の発言を、
事実上撤回してしまいました。



 そして一方、北朝鮮のチャ・ソンナム国連大使も、

 閣僚級会合のあと記者団にたいし、アメリカとの対話の可能性について、

 「前提条件なしに対話しようと言いながら、われわれに継続して圧力と
制裁を加えている。まだ対話できる状況ではない」

 と述べて、現時点での対話には否定的な考えを示しました。


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 以上、ここまで見てきましたが、


 国連のグレテス事務総長と、フェルトマン事務次長の努力により、

 アメリカと北朝鮮との「対話への機運」が、ちょっとは高まってきたの
ではないかと期待したのですが、

 どうして、なかなか、やはり一筋縄では行かないようです。



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