北朝鮮リスクが増大 13
2017年12月10日 寺岡克哉
11月29日に、北朝鮮が「火星15型」と称するICBM(大陸間弾道ミサ
イル)を発射して以降、
アメリカと北朝鮮との、「軍事衝突」が起こる可能性が、すごく高まっ
ています!
* * * * *
たとえば、12月2日。
アメリカ・ホワイトハウスで安全保障の司令塔役を果たす、マクマスター
大統領補佐官(国家安全保障担当)は、カリフォルニア州で開かれた
国防フォーラムで
「北朝鮮との戦争が始まる可能性は、日増しに増大している」
「武力紛争以外の道もあるが、残された時間はあまりない」
と述べて、危機感を示しました。
また、翌日の12月3日。
トランプ大統領の側近で連邦議会上院軍事委員会に所属する、グラハム
上院議員はテレビのインタビューで、
「マクマスター補佐官が語っているように、北朝鮮との衝突の可能性は
高まっており、われわれには時間がない」
「私は国防総省に、在韓アメリカ軍の家族同伴の中止を要求する」
「北朝鮮の挑発を考慮すると、韓国に(アメリカ軍人の)配偶者や子どもたち
を送るのは狂気の沙汰」
「今からでも、アメリカ軍人の家族を韓国から撤収させ始めるべき」
と、語りました。
さらに、グラハム上院議員は、
「トランプ政権は、北朝鮮が核弾頭でアメリカを攻撃する力を持つようになる
のを認めないだろう」
「認めないということは、先制攻撃が最後の手段にもなり得るということだ」
と、語っています。
* * * * *
一方、北朝鮮の外務省報道官は12月2日。
アメリカと韓国の空軍が12月4日~8日にかけて、過去最大規模の共同
軍事訓練「ビジラント・エース」を実施することについて声明を出し、
「一触即発の朝鮮半島情勢を爆発へと追い込もうとしている」と、強く非難
しました。
その上で、
「朝鮮半島と全世界が核戦争のるつぼと化した場合、その責任は全面的
にアメリカが負うべきだ」と、主張しています。
また、北朝鮮・朝鮮労働党の機関紙である「労働新聞」は、12月3日。
アメリカと韓国の共同軍事訓練にたいして、「ただでさえ緊張している
朝鮮半島情勢を、核戦争勃発の局面に追い込む危険な挑発妄動」
と、非難しました。その上で、
「われわれに対する公然とした全面挑戦で、核戦争の火を放つ雷管に
なり得る」
「無分別な軍事的挑発騒動が、自滅を促す愚かな行為であることを肝
に銘じなければならない」
と、主張しています。
* * * * *
上のように、北朝鮮の猛反発を招いている中で12月4日。
アメリカ軍と韓国軍の航空機による共同軍事訓練「ビジラント・エース」
が、12月8日までの日程で始まりました。
韓国に駐留するアメリカ軍によると、この訓練は、
アメリカの最新鋭ステルス戦闘機である、F35やF22の合わせて
24機をはじめ、
アメリカと韓国の両軍で、合計230機あまりの航空機が参加する、
「過去最大規模」のものと、なっています。
また、この訓練では、
領空侵犯をした敵の航空機を迎撃したり、
弾道ミサイルの移動式発射台など、地上の標的を攻撃したりするほか、
海上から上陸する敵の特殊部隊を阻止する演習も行われ、
核・ミサイル開発を進める北朝鮮への「圧力」を、強める狙いがあると
見られます。
* * * * *
韓国軍によると、12月6日。
「B1戦略爆撃機」が、アメリカ軍のステルス戦闘機F22など、両空軍の
10機を超える闘機と編隊を組んで、
実弾を使わない形で爆撃訓練を実施しました。
攻撃手順を確認し、韓国とアメリカ両軍の連携を強化したとしています。
韓国軍の関係者は、
「北朝鮮の核・ミサイルの脅威に対する、米韓同盟の強力な反撃意思
と能力を示した」
と、強調しました。
* * * * *
ところで、
アメリカと韓国の共同軍事訓練である「ビジラント・エース」は、12月
8日に終了したのですが、
それまでの間に、北朝鮮による軍事的な挑発は見られませんでした。
しかし、それは、
けっして、北朝鮮情勢の緊迫状態が、緩和されたのではありません。
むしろ、
マクマスター大統領補佐官や、グラハム上院議員が指摘しているよ
うに、
「緊迫の度合いは、さらに高まっている」というのが現状でないかと、
私には思えてなりません。
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