北朝鮮リスクが増大 12
2017年12月3日 寺岡克哉
前回の最後で、ちょっとだけ触れましたが・・・
アメリカのトランプ大統領は、11月20日。
ホワイトハウスで行われた閣議の冒頭で、北朝鮮をテロ支援国家に
再び指定したと発表しました。
その上で、
金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の兄の、金正男(キム・
ジョンナム)さんが、今年の2月にマレーシアで殺害された事件を念頭
に置いて、
「北朝鮮は世界を核で破滅に陥(おとしい)れると脅迫するだけで
なく、外国での暗殺を含む国際テロ活動を繰りかえしてきた」
と述べて、北朝鮮をつよく非難しています。
ちなみに、
アメリカは1988年に、大韓航空機の爆破事件などを受けて、北朝鮮
をテロ支援国家に指定しました。
しかし、その後、
2008年に北朝鮮がアメリカの核査察要求をすべて受け入れることに
合意したのを受けて、当時のブッシュ政権が指定を解除していました。
なので、
このたび9年ぶりに、北朝鮮をテロ支援国家に「再指定」したことになり
ます。
* * * * *
ところで、アメリカ議会では、
北朝鮮をテロ支援国家に再指定するように求める法案を可決して、
トランプ政権に指定を促(うなが)してきたことから、
与党の共和党を中心にして、このたびの再指定決定を支持する声
が相次いでいます。
その中でも、法案を提出したアメリカ下院のロイス外交委員長は
声明を発表し、
「金正恩政権はこの1年だけでも、化学兵器で金正男氏を暗殺し、
アメリカの大学生ワームビアさんを拷問し、死に至らしめた」
「今回の決定は、金正恩への圧力を最大限まで高めるのに重要な
ステップだ」
として、テロ支援国家の再指定を歓迎しました。
* * * * *
一方、これに対して、
北朝鮮の外務省は、11月22日の夜に報道官談話を発表し、
「 ”テロ支援国” のレッテルを貼り付けたことは、尊厳高いわが国に
対する重大な挑発だ」
と、反発しました。
その上で、
「われわれの核は、アメリカの敵視政策と核の脅威に対処する抑止力
だ」
「アメリカの敵対行為が続くかぎり、われわれの抑止力は、ますます
強化される」
と主張し、核・ミサイル開発をさらに加速させる姿勢を強調しています。
さらに談話では、
「わが軍隊と人民は、激しい怒りを禁じ得ず、アメリカといつ、いかなる
方法でもけりをつけなければならないという意志を、さらに強固にしてい
る」
として、トランプ政権への対決姿勢を、改めて鮮明にしました。
* * * * *
11月29日の午前3時18分ごろ。
北朝鮮の西岸から、ICBM(大陸間弾道ミサイル)とみられるミサイル
1発が、発射されました。
ミサイルの高度は、4000キロメートル以上に達しており、
53分ていど、およそ1000キロメートルの距離を飛行して、
青森県の西方およそ250キロメートル沖の、日本のEEZ(排他的経済
水域)の内部に落下しました。
ミサイルは、通常よりも高い角度(つまり90度に近い角度)で打つ、
「ロフテッド軌道」で発射されたとみられ、
アメリカの科学者らで組織する「憂慮する科学者同盟」は、
「 "通常の(角度の)打ち方" なら、1万3000キロメートル以上飛ぶ
可能性がある」と分析しており、
「ワシントンまで十分に届く。実際にはアメリカのどの都市にも届く」
と、結論づけています。
* * * * *
同11月29日の午後0時半。
北朝鮮は、国営テレビの「重大報道」として政府声明を出し、
同29日の午前2時48分(日本時間の午前3時18分)、首都ピョンヤン
の郊外からICBM(大陸間弾道ミサイル)を発射し、日本海に落下したと
発表しました。
声明では、
「金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の立ち会いのもと、アメ
リカ本土全域を攻撃できる、超大型の核弾頭の装着が可能な新型のICB
M(大陸間弾道ミサイル)である、 ”火星15型” の発射実験に成功した」
と、しています。
ミサイルの発射には、「ロフテッド軌道」が用いられ、
「予定どおりの軌道を53分間にわたって飛行し、高度4475キロメートル
に達し、950キロメートルの距離を飛んだ」
「アメリカなどによる圧迫の中で発射に成功したことは、朝鮮人民の勝利
だ」
と、しています。
その上で、今年の7月に発射した「火星14型」よりも優れた兵器だとして、
「ミサイル兵器開発の完結段階に到達した最も威力のある大陸間弾道
ミサイルだ」
と、主張しました。
さらに、発射に立ち会ったキム委員長が、
「今日、ついに国家核武力完成の歴史的な偉業、ミサイル強国の偉業
が実現した」
と、述べたとしています。
* * * * *
以上、
アメリカは、北朝鮮を「テロ支援国家」に再指定しましたが、
その対抗措置として北朝鮮は、アメリカ全土に届く性能をもつ、ICBM
(大陸間弾道ミサイル)を発射したのです。
ニューヨークでは国連安全保障理事会の緊急会合が行われ、
アメリカのヘイリー国連大使は、
「北朝鮮は今回のミサイル発射で世界を戦争に近づけた」
「仮に戦争が起きれば、北朝鮮の体制は間違いなく完全に破壊される」
と述べるなど、ものすごい剣幕(けんまく)です。
この先ほんとうに、一体どうなってしまうのでしょう・・・
アメリカと北朝鮮には、「突発的な軍事衝突」など絶対に起こさないよう、
お互いに冷静な対応をするように願ってやみません。
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