北朝鮮リスクが増大 11
                             2017年11月26日 寺岡克哉


 前回で取り上げた、北朝鮮から亡命してきた兵士のことですが、

  ひじや肩、腹部など5~6ヶ所に銃弾を受け、ソウル近郊の亜州大病院
で2回の手術を行ないましたが、

 意識が戻らず、予断を許さない状況が続いていました。



 ところが幸いにも、韓国政府の消息筋は11月21日。

 「北の兵士は、テレビを見たいという意思を伝えるなど意識が回復した」

 「韓国に来たという心理的な安心感を与えるために韓国映画を流し、
兵士はこれを視聴する程度に回復した」

 と、明らかにしました。



 治療を受けている兵士は、

 医療スタッフに対して食べ物を求めたり、体の痛い部位を示すなど、

 はっきりと意思を伝えることができるようになり、危険な状態は、ほぼ
乗り越えたといいます。


            * * * * *


 ところで!

 国連軍司令部(韓国側)は、11月22日に記者会見を開き、

 板門店(パンムンジョム)で起こった北朝鮮兵士の亡命事件について、

 韓国側の監視カメラがとらえた当時の映像を公開しました。



 その映像には、

 亡命しようとする兵士の運転するジープが、板門店のJSA(共同警備
区域)に、かなり速いスピードで侵入したあと、

 歩哨所の横を通り抜けて、北朝鮮と韓国の軍事境界線を越えようとしま
したが、

 ジープのタイヤが溝にはまって、動けなくなった様子が映っています。



 また、

 軍事境界線のすぐ近くの北朝鮮側にある、板門閣(パンムンガク)という
建物の前にいた警備兵たちが、

 異変に気がついて、一斉に走りだすのが確認できます。



 そして、

 亡命しようとする兵士が、動けなくなったジープから降りて走り出した
直後(およそ2秒後)に、

 駆けつけた北朝鮮の警備兵4人が、亡命しようとする兵士に向けて
発砲しました。

 そのとき警備兵のうちの1人が、数秒間、軍事境界線を越えてしまい、
慌てて戻る姿もとらえられています。



 さらに、

 人体の熱を感知する「赤外線監視カメラ」の映像には、

 韓国側の建物の近くで倒れた兵士を、ほふく前進で接近した韓国軍
の兵士3人が、安全な場所に移動させる様子が映っています。


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 国連軍司令部は、調査の結果、

 北朝鮮側が韓国側に向けて発砲したうえに、

 軍事境界線を越えて韓国側に侵入しており、

 朝鮮戦争の「休戦協定」に違反していたことが確認されたと、発表し
ました。


 そして、

 北朝鮮に対して抗議したうえで、再発防止のための協議を求めたこと
を明らかにしています。


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 私も、テレビ報道で、

 北朝鮮の兵士が亡命する瞬間の映像を見ましたが・・・ 



 亡命した兵士が、ジープを乗り捨てて走り出した直後では、

 10メートル以内ぐらいの至近距離から銃撃されており、

 致命傷の銃弾を受けることなく、よく命が助かったものです!



 そして、前回でも言及しましたが、

 銃撃戦に発展させなかった韓国側の冷静な対処には、

 ほんとうに、ものすごく感心しました。



 国連軍司令部のアメリカ軍広報担当者も、報道記者のインタビュー
に対して、

 韓国側は銃で応戦せず、「称賛に値する自制力を示した」と、話して
います。


             * * * * *


 以上のように、

 このたびは、ほんとうに幸運にも、韓国と北朝鮮との軍事衝突には
発展しませんでした。



 しかしながら、

 アメリカのトランプ政権が、北朝鮮を「テロ支援国家」に再指定した
ことで、

 北朝鮮情勢は、さらに緊迫していく一方となっており、まったく予断
を許さない状況が続いています。



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