北朝鮮リスクが増大 10
                             2017年11月19日 寺岡克哉


 ここのところ、北朝鮮によるミサイル発射などの軍事的挑発がなく、

 わりと平穏な日々が続いていたように思えます。



 ところが!

 北朝鮮と韓国との「軍事衝突」が、もう少しで危(あや)うく始まって
しまうのではないかという、

 ものすごく「ヒヤリ」とする事件が起こっていたのです・・・ 


             * * * * *


 韓国軍・合同参謀本部の関係者によると、11月13日の午後3時31分
ごろ。

 南北軍事境界線上にある板門店(パンムンジョム)の、JSA(共同警備
区域 ※注1)の北朝鮮側から、

 韓国側にある施設の「自由の家」に向かって、北朝鮮の兵士1人が
「亡命」しました。

 この兵士は亡命の際に、北朝鮮軍から銃撃を受けて、ひじや肩などを
負傷したといいます。


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注1 JSA(共同警備区域)

 板門店(パンムンジョム)は、南北の軍事境界線上にあり、韓国軍とアメ
リカ軍からなる国連軍、および北朝鮮軍が、厳重な警備を行っています。

 板門店の周囲およそ800メートル四方は、JSAと呼ばれる「共同警備
区域」になっていて、
 JSA内の北朝鮮側には板門閣(パンムンガク)という施設があり、一方、
JSA内の韓国側には「自由の家」という施設があります。

 これら2つの施設は向かい合うように立っており、その中間付近を軍事
境界線が横切っていて、ブロックなどで明示されています。
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 韓国軍は銃声を受けて監視態勢を強化し、午後3時56分ごろ、

 軍事境界線から南側(韓国側)におよそ50メートル離れた場所で、

 血を流して倒れている兵士を見つけて、身柄を確保しました。



 なお、韓国軍の合同参謀本部は、

 「北朝鮮との交戦はなかった」ことを、明らかにしています。



 身柄を確保した兵士は、

 軍服を着ていましたが、武装はしておらず、正確な身元は確認されて
いません。

 負傷していたため、国連軍司令部のヘリコプターで、病院に救急搬送
されました。

 ひじや肩、腹部などに5~6カ所の銃創があり、同病院でおよそ5時間に
わたる手術を受けましたが、

 しかしながら手術後の容体(ようだい)は、予断を許さない状況だといい
ます。


                * * * * *


 11月14日。

 韓国軍・合同参謀本部のソ・ウク作戦本部長は、国会の国防委員会で、

 北朝鮮から亡命してきた兵士について、「(北朝鮮軍が)およそ40発の
銃撃を行った
と判断している」と、報告しました。


 ソ・ウク作戦本部長は、

 「昨日(11月13日)の午後3時14分ごろ、(北朝鮮の施設である)板門閣
の南側で移動している北朝鮮の軍人3人を確認し、その後、1人がジープに
乗って南側に突進して来ることを識別した」として、

 「3人と(北朝鮮側の)見張り所にいた1人が、(亡命した兵士の)後を追って
射撃を加えた」ことを、明らかにしています。


 また、

 「(11月13日の)3時31分に亡命者がMDL(軍事境界線)から50メートル
離れた地点に倒れているのを見つけてから対応態勢を引き上げ、3時56分
ごろ、幹部3人がほふく前進で近づき(亡命した兵士を)運んだ」と、説明しま
した。



 韓国の宋永武・国防相は、同上の国防委員会で、

 朝鮮戦争の休戦以降、板門店で北朝鮮の銃弾が軍事境界線を初めて超え
た事件かと問われ、「そうだ」と回答しました。

 その上で、宋永武・国防相は、

 韓国側に被弾の跡(あと)があり、「休戦協定違反である」という認識を示して
います。



 韓国・国防省の報道官は、同11月14日の記者会見で、

 「休戦協定の違反事項は、国連軍司令部を通じて厳重に抗議する」と、説明
しました。


                * * * * *


 以上、

 板門店(パンムンジョム)で起こった、北朝鮮兵士による亡命・銃撃事件
について見てきましたが、

 よく、銃撃戦に発展しなかったものです!



 北朝鮮軍の銃撃にたいして、韓国軍が応戦しなかったのは、とても冷静
で賢明な対処だったと、私には思えます。

 一触即発の、ものすごく緊迫した状況では、たった1発の銃弾からでも、
戦争に発展しかねません。

 このたびの亡命・銃撃事件が、北朝鮮と韓国との武力衝突に発展しな
かったのは、ほんとうに幸運だったと思います。



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