北朝鮮リスクが増大 6
                              2017年9月24日 寺岡克哉


 アメリカのトランプ大統領は、9月19日。

 ニューヨークの国連本部で、大統領就任後において初めて、国連総会
の一般討論演説を行いました。



 以下は、その演説における、北朝鮮に関する部分の要旨ですが、

 トランプ大統領は、北朝鮮をとても強く非難しており、対決姿勢を鮮明
にしています。

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○北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)体制は、向こう見ずで下劣だ。核・
 ミサイル開発を無謀に追及し、全世界に脅威を与えている。

○北朝鮮は自国民を飢えさせ、罪のないアメリカ国民を拘束、(横田めぐ
 みさんを念頭に)13歳の日本人の少女を拉致した。

○北朝鮮が敵対的な姿勢をやめるまで、孤立させるために全ての国が
 連携(れんけい)する時だ。

○北朝鮮の脅威により、アメリカが自国や同盟国の防衛を迫られれば、
 北朝鮮を完全に破壊するしか選択肢がなくなる。

○ロケットマンの金正恩氏は、自殺行為を行っている。

○北朝鮮は核放棄以外に未来がないと理解する時だ。
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 とくに、上の要旨で太字で示した、

 北朝鮮の「完全破壊」を警告した場面では、議場からざわめきが起こっ
たといいます。


               * * * * *


 国連総会に出席するため、ニューヨーク入りした北朝鮮の李容浩(リ・ヨン
ホ)外相は20日。

 アメリカのトランプ大統領が、国連演説で北朝鮮の「完全破壊」に言及した
ことについて、

 「犬がほえて、われわれを驚かせたつもりなら、ばかげた夢だ」と非難しま
した。



 また、

 トランプ大統領が、金正恩・朝鮮労働党委員長を「ロケットマン」と形容した
ことを、どう思うかと記者団に質問され、

 「(トランプ大統領の)補佐官たちが気の毒だ」と答えています。


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 北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は、9月21日。

 アメリカのトランプ大統領が国連総会で行なった演説にたいして、強く
反発する声明を発表しました。



 以下は、発表された声明の要旨です。

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     朝鮮民主主義人民共和国国務委員会委員長の声明

○米国執権者は、わが国家の「完全破壊」という、歴代のどの米国大統領
 も口にしなかった前代未聞の横暴非道な気違いじみた発言を行った。

○我々の政権を交代させたり体制を転覆させるという威嚇の枠を超えて、
 一つの主権国家を完全に壊滅させるという反人倫的な意志を、国連の
 舞台で公言する米国大統領の精神病的な狂態は、正常な人まで事理
 の分別と冷静さを失わせる。

○大統領になって世界の全ての国を威嚇、恐喝し、世界をかつてなく騒が
 せているトランプは、一国の武力を掌握した最高統帥権者としては不適
 格であり、彼は確かに政治家ではなく、火遊びを好むならず者、ごろつき
 に違いない。

○米国執権者の発言は、私を驚かせたり立ち止まらせたのではなく、私が
 選択した道が正しく、あくまでも進むべき道であることを実証した。

○トランプが世界の面前で私と国家の存在そのものを否定して侮辱し、わが
 共和国をなくすという歴代最も暴悪な宣戦布告を行った以上、我々もそれ
 に相応する史上最高の超強硬対応措置の断行を、慎重に考慮するであ
 ろう。

○言葉の意味も分からず、自分の言いたいことだけを言う老いぼれには、
 行動で示すのが最善である。米国の老いぼれ狂人を、必ずや火で制する
 であろう。
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 上の要旨を見ると、

 金正恩・委員長は、アメリカの大統領を「トランプ」と呼び捨てにするだけ
でなく、

 「ならず者」、「ごろつき」、「米国の老いぼれ狂人」などと、汚い言葉で
罵(ののし)っており、

 トランプ大統領に対する敵意を、ものすごく強烈に、むき出しにしてい
ます。



 また、

 上の要旨の中で太字で示した、「史上最高の超強行対応措置」ですが、

 これについて、国連総会に出席するためニューヨークを訪れている
李容浩(リ・ヨンホ)外相は、

 「どのような措置が取られるかはよくわからないが、私の考えでは、おそ
らく水爆の実験を太平洋上で行うことになるのではないかと思う」

 と、記者団にたいして述べています。


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 アメリカのトランプ米大統領は、9月22日。

 アラバマ州のハンツビルで演説し、北朝鮮の李容浩(リ・ヨンホ)外相が
示唆した太平洋上での水爆実験を念頭において、

 「大量破壊兵器を太平洋で爆発させると言っている。それは途方もなく
大きな惨事を招く。癌(がん)などひどい問題をもたらす」と、懸念を表明し
ました。

 また、

 この演説でトランプ大統領は、金正恩・朝鮮労働党委員長を「ちびの
ロケットマン」と呼び、

 「(アメリカは)ずっと前に制御しておくべきだった。私たちは制御する」
と述べて、対立が深まる金正恩・委員長をけん制しています。

 その上で、

 度重なる弾道ミサイルの発射実験を念頭に、「狂った男があちこちに
ロケットを撃つこと」を容認しないと強調しました。



 一方、

 アメリカのソーントン国務次官補代行(東アジア・太平洋担当)も、同日。

 ニューヨークで記者会見し、水爆実験について「(実行すれば)北朝鮮
による前例のない侵略行為になる」と強調しました。

 その上で、「国際社会による報復を招く」と、けん制しています。

 しかしながら、アメリカがどのような措置を取るかは、明らかにしませんで
した。


              * * * * *


 以上、ここまで見てきましたが、

 トランプ大統領の「北朝鮮を完全に破壊する」という、売り言葉にたい
して

 金正恩・委員長の「史上最高の超強硬対応措置の断行」という、買い
言葉・・・ 

 アメリカと北朝鮮との対立は、どんどん酷(ひど)くなる一方です。



 そして、このたび、だんだんと明らかになってきましたが、

 トランプ大統領も、金正恩・委員長も、かなり口汚い言葉で、お互いに罵
(ののし)り合っており、

 二人とも、「精神年齢の幼(おさな)さ」というものが、露呈(ろてい)して
きたように思います。


 そしてこれは、ものすごく多くなリスクであると、私には思えてなりません。


 なぜなら、

 道理や常識をわきまえて、感情をコントロールでき、じっくりと落ち着いた
話し合いができる「大人」ではなく、

 いつ癇癪(かんしゃく)を起こすか分からない、精神年齢の幼い未熟な
者たちが、軍事力を行使する権限を持っているのです!




 一体どうして、

 こんな二人が、それぞれの国のトップになってしまったのか・・・ 

 「歴史」というものの皮肉さに、世界が翻弄(ほんろう)されるばかりです。



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