北朝鮮リスクが増大 2
2017年8月27日 寺岡克哉
前回にひきつづき、
緊張関係が高まっている北朝鮮とアメリカ、その他関係国の「動向」に
ついて見て行きます。
* * * * *
8月21日。
「ウルチ・フリーダム・ガーディアン」と名付けられた米韓合同軍事演習
が、韓国において8月31日までの日程で始まりました。
アメリカの国防総省によると、このたびの合同軍事演習は、朝鮮半島の
「有事」を想定し、「コンピューター・シミュレーションを利用した防衛目的
の演習」であり、
「即応態勢を強化し、地域を防衛し、朝鮮半島の安定を維持するのが
目的」だとしています。
なお、この軍事演習には、韓国軍からおよそ5万人と、アメリカ軍から
1万7500人が参加するほか、
国連軍の傘下にあるオーストラリア、カナダ、コロンビア、デンマーク、
ニュージーランド、オランダ、イギリスなどの国々も参加しました。
一方、これに対して、
朝鮮労働党の機関紙である「労働新聞」は、同日付けの論評で、
「国連安全保障理事会の制裁決議を仕立て上げ、無謀な戦争のシナ
リオを実行しようとするアメリカの策動は、平和に対する挑戦にほかなら
ない」と、トランプ政権を批判しました。
その上で、
「アメリカが核の戦略兵器を動員すればするほど、われわれは選択
した核武力強化の道がいかに正々堂々たるものかを実感し、核開発
の道を前進していく」として、核・ミサイルの開発をさらに加速させる
姿勢を強調しています。
ちなみに、北朝鮮はこれまで、
米韓合同軍事演習に合わせて、ミサイル発射などの軍事的な挑発を
繰り返してきました。
そのためアメリカと韓国の両軍は、今回も北朝鮮が演習に合わせて
追加の軍事的挑発を行う可能性があるとして、警戒と監視を強化して
います。
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8月22日。
北朝鮮の朝鮮人民軍は、米韓合同軍事演習が始まったことを受け、
KCNA(朝鮮中央通信)を通じて報道官の談話を発表しました。
その談話では、
このたびの合同軍事演習に合わせて、アメリカ太平洋軍のハリス司
令官や、アメリカ軍で弾道ミサイル防衛を担う戦略軍のハイテン司令官
などが韓国を訪れていることに言及し、「戦争の謀議を繰り広げている」
と非難しました。
その上で、
「アメリカは、正しい選択をせよという我々の警告を無視して軍事的な
挑発を仕掛けてきた以上、わが軍の無慈悲な報復と容赦ない懲罰を
免れない。破局的な結果に対する責任は、すべてアメリカが負うことに
なる」として、合同軍事演習への対抗措置も辞さない姿勢を強調して
います。
同8月22日。
アメリカ太平洋軍のハリス司令官は、ソウル南方にある在韓アメリ
カ軍の鳥山(オサン)空軍基地で記者会見し、
合同軍事演習について「外交努力を支えるものだ」という主張をして、
北朝鮮問題の外交的解決を呼びかけました。
その一方で、
アメリカ軍はあらゆるシナリオに対応できなければならないと指摘し、
「アメリカの領土に入ってくるいかなるミサイルも破壊する」能力につい
て、「絶対の自信を持っている」と述べています。
また、ハリス司令官は、
「(北朝鮮の)金正恩(キム・ジョンウン)労働党委員長がもたらす
問題に対する外交的な解決策を望む」とした上で、「強力な軍事努力
に裏付けられた外交努力が鍵(かぎ)だ。信用される戦闘能力は外交
の支えであって妨げではないからだ」と、語りました。
* * * * *
8月23日の夜。
北朝鮮の朝鮮平和擁護全国民族委員会は、米韓合同軍事演習を
非難する報道官談話を発表し、
「侵略戦争演習で敵対意思をさらに露骨にした以上、強力に対応
していくことは正々堂々たる自衛的権利だ」と、主張しました。
その上で、
「核火薬庫の上で火遊びをする愚かな行為をただ見守っているはず
がない」と、威嚇(いかく)しています。
また、談話では、
「今この時刻もグアム島のアンダーセン空軍基地では戦略爆撃機が
出撃態勢を整えている」と指摘し、
グアム周辺を狙った弾道ミサイル発射計画を公表した、朝鮮人民軍・
戦略軍の声明などに触れ、アメリカと韓国に「分別ある行動」を要求し
ました。
しかしながら、
金正恩・朝鮮労働党委員長が、計画の実行を決定したかどうかに
ついては、言及していません。
* * * * *
8月25日。
この日、北朝鮮は、金正恩(キム・ジョンウン)の父である金正日(キ
ム・ジョンイル)総書記が軍事優先の政治を始めたとされる記念日の、
「先軍節」を迎えました。
これに関連して、同日付けの朝鮮労働党機関紙「労働新聞」は、1面
に社説を掲載し、「わが国は、アメリカを滅亡のどん底に突き落とす軍事
強国として威容(いよう)をとどろかせている」と、軍事力を誇示した上で、
先月に行われた、ICBM(大陸間弾道ミサイル)「火星14型」の相次ぐ
発射をたたえました。
そして、「核武力を中心とする自衛的な国防力を百倍、千倍に強化しな
ければならない。われわれ式の最強兵器と弾道ミサイルをさらに増産し、
軍事力を強固にすべきだ」などと主張し、アメリカへの対決姿勢を鮮明に
しています。
* * * * *
8月26日。
アメリカ太平洋軍は、北朝鮮が同日の朝に、東部の江原道(カンウォン
ド)から短距離弾道ミサイル3発を発射したと発表しました。
太平洋軍の報道官は当初、1発目と3発目は飛行に失敗したと述べま
したが、その後、北東方向におよそ250キロメートル飛行したと、発表を
修正しています。
一方、2発目の発射については、「ほぼ直後に爆発したようだ」という
見解を示しました。
また、
アメリカ太平洋軍は、関係機関と詳細な評価を進めており、確認が取れ
次第公表するとしています。
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以上、ここまで見てきましたが、
今後、北朝鮮では、8月28日に海軍の記念日である「海軍節」があり、
9月9日には「建国記念日」があります。
なので、
これらの「節目(ふしめ)」に合わせて、北朝鮮が何らかの軍事的挑発
を仕掛けてくる可能性があり、関係各国の警戒態勢が続いています。
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