原発は大丈夫なのか 4
2017年5月21日 寺岡克哉
5月14日の、午前5時28分ごろ。
北朝鮮の西岸にある亀城(クソン)から、1発の弾道ミサイルが発射
されました。
そのミサイルは、およそ800キロメートル飛び、朝鮮半島の東およそ
400キロメートルの日本海上に落下しました・・・
* * * * *
ところで、
このたびのミサイル発射では、Jアラート(全国瞬時警報システム)が
作動しませんでした。
その理由について、菅(すが)・官房長官は、
「今回の事案は、発射されたミサイルがわが国に飛来する可能性
はないと判断したために、Jアラートなどは使用していない」
と、記者会見で述べています。
しかし私は、そのことについて少し疑問に思うのですが、
たしか前回の「エッセイ793」でレポートしましたように、5月9日から
Jアラートの運用が変更され、
北朝鮮によるミサイル発射を確認した第1報の時点で、「ミサイルが
発射されたもようです。頑丈な建物や地下に避難してください」
と、直ちに避難を呼びかけるように、改めたのではないでしょうか。
それなのに、
北朝鮮によるミサイルの発射を確認しておきながら、Jアラートを
作動させなかったというのは、
やはり疑問を感じざるを得ません。
もしも今後、
日本にミサイルが飛来する可能性がある場合にのみ、Jアラートを
作動させるというように、運用を「再変更」するのならば、
そのことを、ひろく国民に知らせなければならないと思います。
* * * * *
ところで、
このたび北朝鮮から発射されたミサイルは、「ロフテッド軌道」と
呼ばれる飛び方をしました。
この「ロフテッド軌道」とは、
ミサイルの発射角度が、通常よりも真上に近い(つまり90度に
近い)角度に設定されており、
水平方向の飛距離は短くなるけれど、ものすごく高い高度まで
ミサイルを飛ばす軌道のことです。
このたびのミサイル発射では、
水平方向の飛距離は、800キロメートルていどでしたが、
到達した最大高度は、2000キロメートルを超えたといいます。
つまり、
ミサイルの到達高度が、水平飛距離の2.5倍にもなっており、
例えれば、「とんがり帽子の形」に近い飛び方をしたといえます。
* * * * *
ところで・・・
このような「ロフテッド軌道」によって、ミサイルが発射されると、
日本の国防上、たいへんな問題が起こります。
つまり、
日本のイージス艦に搭載されている、「SM3」と呼ばれる迎撃ミサ
イルは、
到達できる最高高度が、およそ500キロメートルであり、
ロフテッド軌道によって2000キロメートルもの高い高度を飛ぶ
ミサイルを、迎撃することができないのです。
ちなみに、
宇宙飛行士が滞在して、さまざまな実験を行う「国際宇宙ステー
ション」は、高度400キロメートル付近を飛行しています。
なので、「SM3」迎撃ミサイルでも、国際宇宙ステーションに到達
できる能力を持っているのであり、
ロフテッド軌道による「高度2000キロメートル」というのが、いかに
高い高度であるのか分かります。
このことに関連して、
稲田・防衛相は、5月15日に行われた参議院の決算委員会で、
「新たな迎撃ミサイル等の導入によって、ロフテッド軌道による攻撃
への対処も含め、わが国の弾道ミサイル迎撃能力はいっそう向上
する」と、述べています。
これは恐らく、
日本とアメリカの両政府が共同開発し、今年度中に開発完了
を予定している、「SM3ブロック2A」迎撃ミサイルの導入が、
念頭にあるものとみられます。
しかしながら、
現在開発中の「SM3ブロック2A」迎撃ミサイルは、到達できる
高度が「1000キロメートルを超える」とされていますが、
高度2000キロメートルまでは、到達できるのかどうか分かりま
せん。
もしも、
「SM3ブロック2A」が、高度2000キロメートルに到達できない
場合は、
北朝鮮のミサイルが、高度2000キロメートルから1000キロ
メートル程度まで落下してきた所で、迎撃することになります。
が、しかし、
そのときには、ミサイルが落下することによって加速され、
スピードが速くなっているために、
迎撃するのが(不可能でないにしても)難しくなると言われて
います。
* * * * *
以上のように、
日本のミサイル防衛において、深刻な問題が起こっている
なか・・・
関西電力は、5月17日の午後5時。
高浜原発4号機(福井県高浜町、出力87万キロワット)を、
およそ1年3ヵ月ぶりに再稼働させたのです。
これで、日本国内における稼働中の原発は、
九州電力の川内(せんだい)原発1号機と2号機、そして四国
電力の伊方原発3号機をあわせ、
合計で4基となりました。
なぜ、原発の関係者は、
数百年に1度あるかないかという、大地震や大津波のリスクは、
ものすごく心配するのに、
ミサイル攻撃のリスクは、まったく心配せずに再稼働を進めるの
でしょう?
しかも、これだけ、「ミサイル防衛の問題」が深刻になっているとき
にです。
私には、まったく理解できません!
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