先制攻撃の兆候とは
2017年4月23日 寺岡克哉
このところ、
アメリカが北朝鮮にたいして、「先制攻撃」を仕掛けるもしれない
という憶測が飛び交っており、
けっこう不安を感じる日々が続いています。
テレビなどのマスコミ報道を見ても、その中には、無責任に
危機感を煽(あお)り立てるものがあり、
本当のところ、どれぐらい危機的な状況なのか、ぜんぜん良く
分かりません。
そんなこともあって、
なかなか不安が拭(ぬぐ)いきれない日々が、このところ続いて
いるわけです。
* * * * *
そんな状況の中、
何日か前に見たテレビの報道番組で、韓国人のコメンテー
ターが、
アメリカ軍による北朝鮮への先制攻撃の可能性について、
「なるほど!」と思えるような、よく分かる説明をしていました。
それは、つまり、
もしもアメリカ軍が、北朝鮮への先制攻撃を行う場合には、
その前に必ず、「在韓アメリカ人の避難が始まる」はずだと
いうのです。
逆に言えば、
在韓アメリカ人の避難が始まらなければ、アメリカ軍による
先制攻撃はありえません。
それで韓国の人たちは、いま現在の状況下でも、冷静でいら
れるというのです。
それをテレビで見ていた私は、
「なるほど!」と思い、すこし安心することができた次第です。
* * * *
ちなみに、私なりに調べてみたら、
韓国の法務省が、2016年の3月9日に発表した報告書に
よると、
2016年の1月末現在で、在韓アメリカ軍の家族や、アメリカ
からの留学生など、
韓国に在留するアメリカ人の数は、13万6008人となって
いました。
これほどの数の同胞を、アメリカ政府が見殺しにするはずが
ありません。
だから、アメリカ軍が北朝鮮への先制攻撃を仕掛ける場合
には、
その前に必ず、在韓アメリカ人の人々を、避難させるはず
なのです。
* * * * *
ところで、今年の1月。
これは、アメリカ軍による先制攻撃のためではありませんが、
核実験やミサイル発射など、かつてないほど北朝鮮の脅威が
高まっている状況を踏まえて、
「北朝鮮が韓国に侵攻した事態」を想定した、在韓アメリカ人
の避難訓練が行われました。
それは、
韓国から沖縄まで到達する避難訓練であり、行なわれたのは
2010年以来のことです。
この避難訓練には、関係者の自由意思で、アメリカ兵の家族など
60人が参加しました。
アメリカ兵の家族は、つねに避難用の荷物をまとめておくことが
奨励(しょうれい)されており、「寝袋と缶詰を詰めたダッフルバッグ
を常に用意している」といいます。
持ち出せる私物は、1人あたり60ポンド(約27キロ)までで、
避難訓練の参加者には、居場所を把握するための腕輪が配られ
て保安検査が行われ、
登録の過程では、生物テロから最大で12時間身を守れる防護服
の装着訓練も行われました。
韓国のソウルにある、龍山アメリカ軍基地で登録を済ませた一行は、
車で約1時間かけて南部平沢市のハンフリーズ基地へ移動し、そこで
待機していた2機の軍用ヘリコプターに乗りかえました。
ただし、実際に非戦闘員を韓国から避難させる事態になれば、何万人
もの民間人を5~7日かけて移動させる必要があり、
「列車やバス、民間交通機関の方がはるかに効率的だ」と、アメリカ軍
の幹部は話しています。
軍用ヘリコプターに乗った一行は、
大邱にあるウォーカー米軍基地に到着し、そこで夕食を済ませて軍の
宿舎に宿泊しました。
翌日は朝の5時に起床して、車で山間部を通って韓国空軍の基地へ
行き、
アメリカ空軍の輸送機に乗り換えて、最終目的地の沖縄へ向けて出発
し、無事に到着したといいます。
* * * * *
ところで、
上のような避難訓練は、避難の手順を体験してもらうだけでなく、
軍が家族の安全を保証することで、韓国に残って危機対応に
当たる兵士たちを、安心させる目的もあるといいます。
実際に避難する事態になれば、日本からアメリカまで家族を送り
届けることになっているのです。
このように、
アメリカ政府は、在韓アメリカ人の安全確保に、真剣に取り組んで
います。
なので、
アメリカ軍による突然の先制攻撃によって、およそ13万6000人
もの同胞を命の危険にさらすことなど、まず考えられません。
たとえば、
シリアに対して行った、突然のミサイル攻撃のようなことは、北朝鮮
に対しては絶対にできないのです。
ここのところを、しっかりと押さえておけば、
マスコミの煽(あおり)り報道によって、むやみに不安を掻き立てられ
ることは無くなると思います。
目次へ トップページへ