雪崩で8人が死亡
2017年4月2日 寺岡克哉
前々回の「エッセイ785」で、「雪崩の話は、すでに季節外れの感が
否めない」と書きましたが、
しかし、それは、
雪山登山を経験したことがない、一般の人々の感覚に、話を合わせ
たのでした。
じつは、
雪解けの始まる春先には、「全層雪崩(注1)」が起こりやすくなり、
しかも、この全層雪崩というのは、
厳冬期に起こる「表層雪崩(注2)」よりも、雪崩としては恐ろしいの
です。
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注1 全層雪崩:
全層雪崩は、春先など気温の高い時に、積もった雪の全体が滑り
落ちてしまう大規模なものです。
注2 表層雪崩:
表層雪崩は、すでに積もった雪の上に、新雪が積もり、その新雪が
滑り出すことによって雪崩が発生します。
表層雪崩は、気温が低くて、降雪が続く時期。つまり1月や2月ごろ
の厳冬期に多く発生します。
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ところで、3月27日・・・
栃木県の那須町にあるスキー場の付近で、雪崩が発生しました。
この雪崩によって、
春山講習に参加していた、高校山岳部の男子生徒7人と、顧問
の男性教員1人の、合計8人が死亡してしまいました。
さらには、
この他(ほか)に40人が負傷し、そのうち7人が重傷だという
ことです。
多くの犠牲者が出た、とても痛ましい雪崩事故となりました。
亡くなられた方々には、心からご冥福をお祈りいたします。
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ところで私が、この雪崩事故の報道を最初に聞きかじったとき、
季節としては、すでに3月の下旬になっていたので、
てっきり「全層雪崩」が起こったものとばかり思っていました。
ところが、報道を詳しく見て行くと、
どうやら「表層雪崩」が起こったということでした。
私には、この季節に表層雪崩が起きたことが、ものすごく意外
に感じました。
ちなみに気象庁によると、
雪崩の現場となったスキー場がある、栃木県の那須町に
おいて、
3月27日の午前1時では、積雪が0センチメートルだったの
ですが、
同日の午前9時には、積雪が33センチメートルになっていた
と言うことです。
これほどの大雪が、一度に降ったのなら、表層雪崩が起こる
可能性もゼロではないでしょう。
しかしながら、
北海道や東北北部ではなく、関東地方で、しかも3月の下旬に、
このような大雪が降るというのは、
「ものすごく異常な気象」であるとしか、私には思えません。
もしかしたら、
地球温暖化による「気候変動」が、影響しているのかも知れま
せん。
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このたびの雪崩事故について、私の思うことですが・・・
とにかく雪山に入るからには、「絶対安全」ということは、絶対に
あり得ません。
雪山では、雪崩や滑落(かつらく)などの事故に遭遇(そうぐう)
する可能性が、完全にゼロであることなど、全くあり得ないのです。
このたびの雪崩事故は、とても痛ましくて不憫(ふびん)でした
が、
しかし雪山に入るからには、このような事故が、いつ起こるとも
限らないと、
関係者の人たちは、つねに「覚悟」して、おかなければならない
と思います。
いま思い出しても、ちょっと身の毛がよだつのですが、
かつて私が大学山岳部に所属していて、雪山に入ったときは、
いつもそのような「覚悟」を、心のどこかで、していたように思い
ます。
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