雪崩に巻き込まれたときは
                              2017年3月19日 寺岡克哉


 以下のエッセイは、3月5日にアップロードする予定で、2月の下旬
に書き始めたものです。

 しかしながら前回で話したように、私は病気に罹(かか)ってしまい、
書き上げることが出来ないでいました。

 それを、このたび書き上げたのですが、ちょっと季節外れの話題に
なってしまった感が否めません・・・ 


             * * * * *


 先日の2月25日。

 北海道・倶知安(くっちゃん)町のニセコアンヌプリ岳で、

 スキー場のコースの外でスノーボードをしていた2人が、雪崩に巻き
込まれ、

 このうち、外国人の男性が死亡してしまいました・・・ 



 雪崩が起こった現場では、男性2人が雪に埋まり、一緒にいた仲間
などに救出されたといいます。

 が、しかし、

 ニュージーランド国籍の35歳の男性が、搬送先の病院で死亡が
確認されたのです。

 また、

 雪に埋まったもう1人の、東京に住む日本人の35歳の男性は、胸に
軽いけがをしました。



 警察によりますと、

 雪崩の範囲は幅およそ200メートル、高さおよそ350メートルに及ん
だということです。


            * * * * *


 ところで、

 このニュースを見て、私は、あることを思い出しました。


 それは、

 私がかつて、大学の山岳部に所属していた時に、先輩から
教えられた、

 「雪崩に遭遇したら、どのような対処をとるか」という話です。



 こんな話は、おそらく多くの方にとって、あまり関係がないでしょう。



 が、しかしながら、

 もしかしたら、いつ何時、誰かにとって、役に立つときが来るかも
知れませんし、

 あるいは、このような話に少なからず興味を持つ方も、いるかも
知れません。


 なので、以下に書いてみることにします。


            * * * * *


 まず、

 山の上方で「雪煙」が確認され、雪崩が迫っていることを察知した
ら・・・ 



 第一にやらなければならないのは、スキーを履(は)いている場合、
スキーを外すことです。

 なぜなら、スキーを履いたまま雪崩に巻き込まれて、雪に埋まって
しまったら、

 足に付いているスキーが邪魔をして、雪の中で身動きがとれなく
なるからです。



 そしてスキーを外したら、その次に、リュックサックなどの「荷物」を
下ろします。

 これも、荷物を背負ったままで雪に埋もれたら、身動きがとれなく
なるからです。



 それでもまだ、時間的に余裕があったら、

 雪崩が流れるのと直角の方向の、「出来るだけ高い場所」に、走っ
て逃げます。



 そして、いざ、雪崩に巻き込まれる瞬間が来たら・・・ 

 その時は、鼻と口を、両手でしっかりと覆(おお)います。

 これは、鼻や口に雪が詰まって、窒息することを防ぐためです。


 ちなみに、

 ヨーロッパおよび北アメリカの統計では、雪崩埋没時の死因は、
「窒息」が全体の75~94.6%を占めるそうです。

 なので、雪崩に巻き込まれる直前に、鼻と口を両手でしっかり
と覆うことは、ものすごく大切です。



 そしてついに、雪の中に埋まってしまったら・・・ 

 鼻と口を覆っていた両手を、徐々に外側に押し広げて、鼻と口の
周りに空間をつくります。

 そしてさらに、その空間をだんだん広げていき、「空気」を確保し
ます。



 雪の中で空気が確保できたら、その次に、口から「唾(つば)」を
垂らします。

 なぜなら、雪の中は「真っ暗」なので、どちらが上で、どちらが下か、
分からなくなるからです。

 それで、唾を垂らしたときの顔の伝わり具合から、上方を判断し、
上にむかって雪をかき分けていくのです。

 ちなみに、

 せっかく雪の中で空気が確保できたのに、下の方に掘り進んだ
ため、死んでしまった人もいるそうです。


            * * * * *


 以上が、

 私が昔に教えられた、「雪崩に遭遇したときの対処法」です。



 最初、この話を聞かされたとき、

 「雪の中に埋まってしまった後」でさえも、対処法があることに、

 ものすごく驚きました。



 そしてこれは、

 「人間は、どんな状況に陥(おちい)っても、最後の最後まで
諦(あきら)めてはならない」という、

 一つの教訓になるのではないかと、いま現在でも思っている
次第です。



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