原発事業で巨大損失 5
2017年2月5日 寺岡克哉
前回まで、
東芝の子会社である、「ウェスティングハウス・エレクトリック・カンパニー」
について、その成り立ちや、東芝の子会社になった経緯などを見てきました。
今回は、
さらにその子会社(つまり東芝の孫会社)の、「CB&Iストーン・アンド・
ウェブスター」について、見ていきたいと思います。
じつは、この会社こそが、
最大で7000億円とも言われる「巨大損失」を出した、張本人(ちょうほん
にん)なのです。
* * * * *
さて、
「CB&Iストーン・アンド・ウェブスター」というのは、アメリカの「建設会社」
で、
おもに原発の建設や、原子力関連設備の整備などを、行なっています。
ところで、なぜ、この会社は「巨大損失」を出したのでしょう?
それは、原発の「建設コスト」が、受注した時点での想定を、大きく上回っ
てしまったからです。
しかしながら、なぜ、
原発の建設コストが、受注した時点の想定を上回ると、「損失」になるの
でしょう?
それは、「建設の費用があらかじめ決めた金額を超えた場合は、ウェス
ティングハウス・エレクトリック・カンパニーと、CB&Iストーン・アンド・ウェブ
スターが、その分を負担する」という契約を、アメリカの電力会社との間で
結んでいるからです。
つまり、
原発の製造元と、原発の発注元(電力会社)との間で、そのような契約を
交(か)わしていたわけです。
これは、発注元の電力会社側にとっては有利な条件ですが、
原発をつくる側にとっては、建設コストが膨(ふく)らめば膨らむほど、損失
が大きくなってしまいます。
しかしなぜ、原発の建設コストが、想定よりも大きく膨らんだのでしょう?
それは、2008年にウェスティングハウス・エレクトリック・カンパニーは、
アメリカ国内で4基の原発建設を受注しましたが、
その後2011年に、福島第1原発の事故が起こり、アメリカにおける原発
の安全基準が厳しくなったからです。
その厳しい安全基準を満たすために、設備や資材の費用が大きくなり、
さらには建設の工期も伸びて人件費が膨らみました。
その結果として、全体の建設コストが、受注した時点での想定を大きく
上回ってしまったのです。
* * * * *
ところで当初、
「ウェスティングハウス・エレクトリック・カンパニー」と、「CB&Iストーン・
アンド・ウェブスター」は、別々の会社であり、
両社は、アメリカで4基の原発建設を共同で受注する、パートナー企業
の関係にありました。
ところが、
原発の建設コストが膨らむにつれて、コストの負担をめぐり、両社は
対立するようになって行きます。
ついには裁判沙汰にもなり、このままでは、さらに工期が遅れる可能性
が出てきました。
それでウェスティングハウス・エレクトリック・カンパニーは、この対立を
収拾させるために、CB&Iストーン・アンド・ウェブスターの買収に踏み切っ
たといいます。
2015年の12月。
ウェスティングハウス・エレクトリック・カンパニーは、CB&Iストーン・
アンド・ウェブスターの株式をすべて取得して買収し、「完全子会社」に
しました。
ところが!
このとき既に、CB&Iストーン・アンド・ウェブスターは巨大な損失を
抱えており、
会社の全資産よりも、負債の方が大きくなるという、「債務超過」の
状態に陥っていたのです。
結局、
両社の対立は解消したものの、それで巨大損失が無くなったわけ
ではなく、
そのしわ寄せが全て、いちばんの親会社である東芝に、押しつけら
れる形となりました。
これが、最大で7000億円とも言われる「巨大損失」を出した、経緯
です。
なんだか東芝が、子会社と孫会社に「嵌(は)められた!」という感じ
が、しないでもありません。
* * * * *
以上、ここまで見てきて、私は思うのですが・・・
もはや原発は、作れば作るほど損をします!
原発建設は、事業として、すでに破たんしているのです。
それなのに、「日の丸原発」などと称して、日本の国を上げて
原発の建設を推進するなんて、
ほんとうに「狂気の沙汰」としか言わざるを得ません。
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