原発事業で巨大損失 4
                              2017年1月29日 寺岡克哉


 1月27日。

 東芝は、今年の3月末に、主力の半導体事業を「分社化」する方針を
決定しました。

 三重県の四日市に生産拠点がある、記憶用の半導体「フラッシュメモ
リー」の事業を分社化して、「新会社」を設立するといいます。

 東芝の財務基盤を強化するため、この新会社への、他社からの出資
を受け入れることを検討しています。



 つまり、これは、

 簡単に言ってしまえば、東芝における優良事業の「切り売り」であり、

 「原発事業の巨大損失」によって、ほかの優良事業が浸食されている
ことを意味します。



 ちなみに東芝は、

 以前に発覚した「不正会計の問題」で、すでに経営が悪化しており、

 医療事業や、白物家電事業などは、2016年の段階で売却してい
ます。

 このままだと、

 東芝の事業のすべてが、「食い尽くされて」しまうかもしれません。


              * * * * *


 さて、前回の続きですが、


 アメリカの歴史的企業であった旧ウェスティングハウス・エレクトリック社
(当時のCBSコーポレーション)の「原子力部門」は、

 1998年に英国核燃料会社 (BNFL: British Nuclear Fules Limited)へ
売却され、

 その後、「ウェスティングハウス・エレクトリック・カンパニー」として、再度
立ち上げられたのでした。



 この「英国核燃料会社(BNFL)」というのは、かつて存在したイギリス政府
所有の持株会社で、

 核燃料の生産や輸送。原子炉の運営、発電、売電。使用済み核燃料の
管理や再処理。原子力施設の廃止措置。そして原子炉の廃炉など、

 イギリスの原子力産業で中心的な役割を担っていました。



 しかしながら・・・ 

 1990年に電力の売買を自由化したイギリスでは、将来の電力価格が
見通せない状況のなかで、

 長期にわたる投資回収が必要になる「原発への投資」は、停滞するよう
になったのです。

 そのうえ、北海における天然ガスの生産量が増えるにつれて、天然ガス
と電力の価格が下がり続け、

 原発への投資環境が、ますます悪化して行くことになります。



 そのような社会背景の中で、2002年。

 ついにイギリス政府は、「原発新設の見送り」を決定してしまいました。


 その結果として、英国核燃料会社(BNFL)は、

 「ウェスティングハウス・エレクトリック・カンパニー」を、売却することに
なって行ったのです。


 ちなみに、2009年の5月。

 英国核燃料会社(BNFL)は、ほかの全ての資産の売却も完了して、
その役割を終えることになりました。


              * * * * *


 とにかく、2005年の7月。

 英国核燃料会社(BNFL)は、18億ドル相当で、「ウェスティングハウス・
エレクトリック・カンパニー」の売却を計画しました。

 売却には、東芝、ゼネラル・エレクトリック社、三菱重工などの企業が
関心を示しましたが、

 結局、2006年の2月に、

 東芝が54億ドル(当時の為替レートでおよそ6400億円)で、「ウェスティ
ングハウス・エレクトリック・カンパニー」を購入したのでした。



 ところで、

 英国核燃料会社(BNFL)が、18億ドル相当で売却しようとしたものを、

 なぜ東芝は、その3倍にもなる、54億ドルという非常に高い値段で購入
したのでしょう?



 このことについて、

 原子力事業部の元社長と机を並べていた、東芝のOBという人物が、

 「三菱重工に決まりかけていた案件を横取りした買収でした。そのため
に破格の金額を投じた」と、週刊誌の取材記事でコメントしています。

 6千億円を超える巨額買収は、「その半分でも高すぎる」と、本命の三菱
重工を唖然(あぜん)とさせたと言います。



 ちなみに、買収した当時は、

 「東芝がウェスティングハウス・エレクトリック・カンパニーを傘下に収め
て、世界トップクラスの原子炉メーカーになるのは、ほぼ間違いない!」

 などと、もて囃(はや)されたりしたそうです。



 しかし、その後・・・ 

 福島第1原発の事故が起こって、原発事業は甚大な影響をうけてしまい、

 不良事業化して、採算が取れなくなって行くのです。



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