原発事業で巨大損失 3
                              2017年1月22日 寺岡克哉


 東芝の原発事業における損失が、最大で7000億円規模に膨らむ可能
性が出てきました。

 巨大損失で減少する資本を増強するため、主力の半導体事業を分社化
して、他社による出資の受け入れを検討するなど、

 いま東芝は、「解体の危機」に直面しています。



 ところで東芝が、原発事業で、このような「巨大損失」を出してしまった
のは、

 東芝の子会社である、ウェスティングハウス・エレクトリック・カンパニー
が買収した、

 CB&Iストーン・アンド・ウェブスター社(つまり東芝の孫会社)に、その
原因があります。



 ここで、

 東芝の子会社の、「ウェスティングハウス・エレクトリック・カンパニー」と、

 東芝の孫会社の、「CB&Iストーン・アンド・ウェブスター社」という、

 2つの会社が出てきましたが、これらが一体どんな会社なのを知って
おかないと、

 このたびの「巨大損失」が生じた原因が、なかなか見えてきません。



 なので、まず今回は、

 東芝の子会社の、「ウェスティングハウス・エレクトリック・カンパニー」

 について、ちよっと調べてみようと思いました。


           * * * * *


 「ウェスティングハウス・エレクトリック・カンパニー」という会社は、

 原子炉の設計や、原子力発電所の建設、制御、計測、メンテナンス、
さらには核燃料の製造など、

 原子力全般にたいして、ものすごく広範な業務を行っています。



 ちなみに、この会社は「多国籍企業」であり、

 アメリカやヨーロッパ、アジア、アフリカなど、世界中で事業を展開
しています。

 そのため世界各地に、たくさんの子会社や事業所を持っています。
(CB&Iストーン・アンド・ウェブスター社も、子会社の1つです。)



 このように、

 「ウェスティングハウス・エレクトリック・カンパニー」というのは、世界
に事業展開している大企業なのです。


 しかしながら、

 なぜ、そのような大企業が、東芝の子会社なんかに、なっているの
でしょう?


 その理由を知るには、

 ウェスティングハウス・エレクトリック・カンパニーの「歴史」を、ちょっと
見てみなければなりません。


 以下それについて、すこし見ていきましょう。


           * * * * *


 まず最初、「ウェスティングハウス・エレクトリック・カンパニー」は、

 旧ウェスティングハウス・エレクトリック社の、「原子力部門」として
立ち上げられました。



 この、「ウェスティングハウス・エレクトリック社」というのは、1886年
に創業した歴史的な会社で、

 エジソンと同時代の発明家である、ジョージ・ウェスティングハウス
が、その発明を事業化したのが始まりです。

 その後、

 交流発送電による電力事業の開拓。粒子加速器の開発。原子力
潜水艦「ノーチラス」の原子炉製造。原子力空母「エンタープライズ」
の原子炉製造。鉄道の動力装置や自動空気ブレーキシステムの開発。
ラジオ・テレビ局の開局。

 など、軍事用と民生用の両方で、じつに多岐にわたって「歴史的な
事業」を成し遂げています。

 また1950年代以降は、「加圧水型原子炉」の開発や製造で、独占的
地位を占めました。



 ところが・・・ 

 1980年代ごろから、中心となっていた事業の、売却や分社が相次ぐ
ようになります。

 1997年には、放送以外の大半の事業を売却してしまい、会社名も
ウェスティングハウスから「CBSコーポレーション」へ変更しました。

 そして1998年には、最後に残っていた製造部門である「原子力部門
(現在のウェスティングハウス・エレクトリック・カンパニー)」も、イギリスの
核燃料会社 (BNFL)社に売却してしまいました。

 さらには1999年。ついにCBSコーポレーション本体も、バイアコムに
よって買収され、

 1886年に創業したアメリカの歴史的企業は、その幕を閉じてしまった
のでした。


              * * * * *


 とにかく、

 旧ウェスティングハウス・エレクトリック社(当時のCBSコーポレーション)
の内部組織であった「原子力部門」が、

 イギリスの核燃料会社 (BNFL)社に売却され、その後、

 「ウェスティングハウス・エレクトリック・カンパニー」として、再度立ち上げ
られたのです。



 ところが、その後、イギリスの核燃料会社も、

 「ウェスティングハウス・エレクトリック・カンパニー」を売却することに、
なってしまいました。

 そして、そのときの売却先が、「東芝」に決定したと言うわけです。


             * * * * *


 申し訳ありませんが、それらの経緯については、次回で見て行きたい
と思います



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