本当に信頼できるのか?
                             2016年11月27日 寺岡克哉


 安倍首相は、11月17日。

 アメリカのニューヨークを訪問し、外国の首脳としては初めて、

 トランプ・次期アメリカ大統領と会談をしました。



 1時間半に及んだ会談の後、

 安倍首相は、ニューヨーク市内のホテルで記者団にたいして、

 「同盟は信頼がなければ機能しない」

 「トランプ氏は、まさに信頼できる指導者だと確信した」

 と、語りました。



 また、トランプ次期大統領も、自身のフェイスブックで、

 「素晴らしい友人関係を始められたことは光栄だ」と書き込み、

 会談の成功を強調しています。



 会談の内容については、

 「私の基本的な考え方については話した」と、安倍首相が記者団
に説明しました。

 が、しかし、その詳細については、

 トランプ氏が大統領に就任する前であることを理由に、説明を
避けています。



 一方、安倍政権の幹部によると、

 このたびの会談では、日米関係や世界情勢などについて、

 幅広く意見が交わされたとしています。


            * * * * *


 ところが!


 トランプ次期大統領は、11月20日。

 就任初日に、「TPP(環太平洋パートナーシップ協定)」からの、

 「脱退を通告する」と、正式に表明したのです。




 トランプ次期大統領は、インターネット上に公開したビデオ声明で、

 「私の政策は、アメリカを第一に考えるという、シンプルで中核的な
原則に基づいている」として、

 「就任初日に大統領令を出せる項目をまとめるように、政策移行
チームに指示した」と述べました。



 その上で、「TPP」については、

 「わが国の災害となる可能性がある」と指摘して、

 「TPPからの脱退を(参加国に)通告する」と、明言したのです。



 また、TPPの代わりとして、

 「アメリカに雇用と産業を呼び戻すため、公正な2国間貿易協定の
交渉を行う」と述べ、

 アメリカの利益を要求しやすい「2国間交渉」に、軸足を移す考えを
示しています。


             * * * * *


 このことに関連して安倍首相は、11月24日に行われた参議院の
TPP特別委員会で、

 「状況は、さらに厳しくなった」

 「次期大統領が、あのような見解を述べたことは残念だ」

 と述べて、トランプ次期大統領が就任初日にTPP脱退を通告すると
表明したことに、失望を隠しませんでした。



 しかし安倍首相は、

 「自由で公正な貿易圏をつくっていく意義を発信する意味でも、世界に
先駆けて批准(ひじゅん)するべきという考えに、いささかも変化はない」
と強調し、

 いまの国会での、TPP承認案の成立と、TPP関連法案の成立にたい
して意欲を示しました。

 その上で、「TPPの意義を米国に粘り強く訴え続けていく」と、語って
います。



 しかしながら・・・ 

 民進党の蓮舫代表が、「日本が批准したら、トランプ氏は翻意(ほんい)
するのか」と質問すると、

 安倍首相は、「確信はない」と認めざるを得ませんでした。

 また、

 11月17日に行った、トランプ次期大統領との会談についても、

 安倍首相は「TPPについて私の考え方を述べた」とだけ話し、詳しい
説明を避けています。


            * * * * *


 以上、ここまで見てきましたが、

 じつは私としましては、本サイトの「エッセイ714」で述べました
ように、

 「日本の食糧自給率」が40%ていどと、ものすごく低く、

 「食糧安全保障」の観点から、「日本の農業を守るべきだ!」と
考えています。


 なので、

 非常にたくさんの種類の農産物にたいして、関税を撤廃してしまう
TPPには、

 「ものすごく大きな不安」を感じていました。


 だから、

 ここでTPPが「足踏み状態」になってしまうことには、あまり問題を
感じません。



 しかしながら!

 おそらく安倍首相が、TPPについての考えをトランプ次期大統領
に伝えていたにもかかわらず、

 トランプ次期大統領が、こうも、あっさりと、TPPからの脱退を明言
するとは・・・ 



 このことから推察して、トランプ・次期アメリカ大統領は、

 日本の首相を、あまりにも軽く見ているというか、

 「日本の首相など、まったく眼中にない」という程度にしか、

 おそらく思っていないのでは、ないでしょうか。



 こんなことでは、

 日本とアメリカの「安全保障問題」などに関しても、

 就任後のトランプ大統領が、いつ何時、いきなり、どんなムチャクチャ
を言い出すのか、

 まったく分かったものではありません。



 安倍首相は、「トランプ氏は、まさに信頼できる指導者だと確信した」
と言っていますが、

 しかし私の正直な実感としては、いまのところ、

 トランプ・次期アメリカ大統領を、心から信頼することなど、

 まったく出来ません!




      目次へ        トップページへ