アメリカの各地で「反トランプ」デモ
                             2016年11月13日 寺岡克哉


 何と言うことでしょう!

 11月8日に投票が行われた、アメリカの大統領選挙で、

 共和党のトランプ候補が、つぎの大統領に選ばれてしまいました。



 しかも、同日に行われた議会選挙では、

 アメリカ議会の上院も、さらには下院も、共和党が過半数の議席
を獲得し、

 大統領が所属する政党と、議会の多数派を占める政党が異なる
という、

 いわゆる「ねじれ現象」が解消してしまいました。


 これでは、

 トランプ大統領の提案が、議会を通りやすくなってしまうでしょう。



 今後、

 アメリカの国内情勢や、日本をふくめた世界情勢が、一体どうなって
しまうのか、

 まったく目が離せない状況が、続いて行くことになりそうです。


            * * * * *


 ところで、アメリカでは11月9日。

 「反トランプ」を叫ぶ人達によるデモが、ニューヨークや、首都ワシントン、
ロサンゼルスなどの、少なくても全米の25都市で行なわれ、

 これらのデモの参加者が、合計で数万人に上ったと言われています。



 ニューヨークでは、

 現地時間で11月9日の午後6時に、まず数10人の規模で「反トランプ」
デモが始まりましたが、
 トランプ氏が拠点とする「トランプ・タワー」を目指して行進するうちに、
参加者が7000~10000人に増えていきました。

 デモの参加者たちは、「性差別主義者で人種差別者のトランプよ、
お前の居場所はアメリカにはない」などと叫びながら、道を埋め尽くし
ました。

 参加者の大学生は、「トランプは自由の国、アメリカの代表ではない。
病巣だから除去しなくてはいけない」と、話しています。

 また、30代の男性は、「社会が分裂してしまうことを懸念しています。
トランプ氏が女性や黒人、それに性的マイノリティーの権利を奪うの
ではないかと心配しています」と、話しました。



 首都ワシントンでは、

 数1000人の人々が、「反トランプ」デモに参加しました。

 参加した人たちは、「アメリカにファシズムや白人至上主義の団体は
いらない」などとシュプレヒコールを上げて、市内の中心部を行進しま
した。

 トランプ氏が先月に開業したばかりのホテルの前では、「トランプ氏は
われわれの大統領ではない」などと気勢を上げ、

 ホワイトハウスの前では、「トランプ氏はマイノリティーの権利を守るべき
だ」などと、一人一人が意見を述べました。

 黒人の男性は、「女性やアフリカ系アメリカ人など、マイノリティーを締め
出すことを懸念しているし、本当に怖い」と話しています。



 ロサンゼルスでは、

 5000人以上の人々が「反トランプ」デモに参加し、「女性を尊重しろ」
などと声を上げました。

 また、数100人が幹線道路を埋め、封鎖される騒ぎにもなり、拘束者も
出たといいます。

 ロサンゼルスの市庁舎前では、地元の大学生たちおよそ500人が集会
を開き、
 「憎悪は勝利しない」などと書かれたプラカードを掲げて、「トランプ氏は、
われわれの大統領ではない」と、声を上げながら市街地を行進しました。

 参加した女性の一人は、「選挙の結果には恐怖を覚えます。トランプ氏
が大統領になることで、イスラム教徒などマイノリティーの人たちがどの
ような攻撃を受けるか心配です」と話しています。



 その他

 カリフォルニア州のバークレー高校では、生徒と教員たち1500人が、
校庭からカリフォルニア大学バークレー校に向けてデモ行進を行いまし
た。

 ある女子生徒は、「この愚か者を選んだことにより、われわれは時計を
1950年代に戻してしまった。トランプは、どれほどの憎悪と無知が残さ
れているのかを、われわれに気づかせただけだ」と、語っています。


              * * * * *


 このような、

 アメリカの各地で起こった「反トランプ」デモは、

 11月10日になっても治まらず、「暴徒化」の様相を示してきました。



 オレゴン州のポートランドでは、

 数1000人がデモに集まり、一部の人が煉瓦(れんが)を投げたり、
商店のガラスを割るなど「暴徒化」しました。

 公共の建物に「くたばれトランプ」などと落書き(らくがき)をする者や、
路上の車両をたたき壊す者なども続出しています。



 ロサンゼルスでは、

 警官が負傷するなどして、200人近くが逮捕されました。



 カリフォルニア州のサンノゼでは、

 トランプ支持者がなぐられたり、卵を投げつけられたりする事件が
起こりました



 しかし、その一方で・・・

 カリフォルニア州のサンディエゴにある大学では、

 トランプ氏の当選に異を唱えたイスラム教徒の女子学生が、二人
の男に襲撃される事件が発生しています。



 また、ニューメキシコ州の大学でも、

 「トランプ氏の支持者が、イスラム教徒のヒジャブを引き剥がそうと
した」という通報があり、

 大学当局は、ヘイトクライム(憎悪犯罪)とみて調べています。



 ニューヨーク州の北部にある、バファロー近郊では、

 建物の壁に、「アメリカを再び白人国家にしよう」と、

 ナチスの鉤(かぎ)十字が、落書き(らくがき)されているのが見つ
かっています。


             * * * * *


 以上、ここまで見てきて、私は思うのですが・・・


 クリントン氏の支持者にとってみれば、

 トランプ氏が大統領になるのは、ほんとうに許せないことでしょう。



 そして一方、トランプ氏の支持者にとってみれば、

 黒人の人々や、イスラム教徒の人々、移民の人々などが、アメリカ
国内に存在するのが、

 嫌(いや)で嫌で、たまらないのでしょう。



 この、アメリカ国内における「感情的な分裂」は、

 「ものすごく深刻な問題」に発展するような気がしてなりません。



 もしもトランプ政権が、

 黒人の人々や、イスラム教徒の人々、移民の人々を、あまりにも
虐(しいた)げて追いつめれば、

 やむにやまれず「暴動」や「テロ」に走ってしまう可能性も、けっして
否定できないでしょう。



 トランプ政権が誕生することにより、

 わが国の日本にとっては、安全保障や、貿易や、為替レートの問題
などが、ものすごく心配になります。

 しかしながら、もしかしたら案外、

 アメリカにとっては、「国内の分裂」というのが、「最大の問題」になって
行くのかもしれません。



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