アメリカ大統領選 5
2016年10月30日 寺岡克哉
今回は、トランプ候補の「過激な発言」のうち、
「地球温暖化」に関することについて、見て行きたいと思います。
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まず今年の5月26日に、大統領選挙における共和党の候補指名
が、トランプ氏に確定しました。
すると、その同日に、トランプ候補はエネルギー政策を公表し、
地球温暖化問題を「でっち上げだ」と批判して、
大統領就任後の100日以内に、「パリ協定(注1)」を離脱する
と、宣言したのです。
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注1 パリ協定:
パリで開催されたCOP21(気候変動枠組み条約 第21回締約国
会議)で採択された、温室効果ガス排出削減のための、新たな国際
的枠組み。
つまり「パリ協定」は、これまでの「京都議定書」に代わり、2020年
以降の地球温暖化対策について定めたものです。
この「パリ協定」における「全体目標」は、世界の平均気温上昇を、
産業革命前と比べて2℃未満に抑えることです。
が、それに加えて、1.5℃に気温上昇を抑制するという「努力目標」
も規定されました。
さらに、これらの目標を達成するため、
21世紀後半までに、人間活動による温室効果ガスの排出量を、「実質
的にゼロにする」という方向性を打ち出しています。
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これに対して、9月20日。
宇宙物理学者のホーキング博士など、世界中の科学者375人
(ノーベル賞学者30人を含む)の署名による、
「トランプ候補を非難する書簡」が公開されました。
この公開書簡では、
「(パリ協定から離脱する) ”パリグジット” が現実のものとなれば、
人間が引き起こす気候変動という地球規模の問題に、アメリカは留意
しない(興味がないので勝手にどうぞ)という、明確なメッセージを送る
ことになる」と、指摘しています。
その上で、
「この世界的な枠組みから脱退すれば、地球の気候にとっても、
アメリカの国際的な信頼にとっても、長期にわたって厳しい結果が
もたらされるだろう」と、警告しています。
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また、
地球温暖化問題への取り組みでノーベル平和賞を受賞した、民主党
のアル・ゴア元副大統領(注2)は、
10月11日に行なわれた、クリントン候補への応援演説で、
「アメリカと世界が直面する最も差し迫った(地球温暖化)問題に関し
て、この選挙の選択肢は非常に明確だ」と述べて、クリントン候補への
支持を呼びかけました。
この演説で、ゴア元副大統領は、
「クリントン候補は気候の危機の解決を国の最優先課題の1つに
する」と強調し、
その一方で、共和党のトランプ候補は「気候を崩壊に導く」と、批判
しています。
その上で、
ゴア氏自身が、2000年の大統領選挙で、フロリダ州を僅差で敗北した
こと(注3)を念頭に、
「あなたの1票は本当に、本当に、本当にとても重要だ。私をその証拠
物件の一つと考えてほしい」と、訴えました。
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注2:
アル・ゴア氏は、地球温暖化問題を取り上げた「不都合な真実」
という本の、著者として有名です。
注3:
この選挙で勝利した、ジョージ・W・ブッシュ大統領の意向によって、
アメリカが「京都議定書」から離脱しました。
そのため、アメリカの地球温暖化対策が、ものすごく後退してしまい
ました。
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ちなみに・・・ WMO(世界気象機関)は10月24日。
2015年における、大気中の二酸化炭素の世界平均濃度が
400ppmとなり、
2014年の時点よりも2.3ppm増加して、「過去最高を更新した」
と発表しました。
今さら言うまでもありませんが、
地球温暖化問題は、すでに「科学的な事実」となっており、
二酸化炭素排出量の削減については、もはや、一刻の猶予も
ありません。
そんな状況であるのに、
平然と、地球温暖化問題は「でっち上げだ」などと豪語し、
「パリ協定」からの離脱、つまり温暖化対策を無視して蔑(ないが
し)ろにするなんて、
ほんとうにトランプ候補というのは、「ものすごく非常識な人間」と
いうだけでなく、
どうしようもなく絶望的なほど、「非科学的な人間」であるとしか、
私には思わざるを得ません。
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