新潟県の知事選挙
2016年10月23日 寺岡克哉
アメリカ大統領選挙の行方(ゆくえ)も気になりますが、
10月16日に行われた新潟県の知事選挙が、画期的な結果となりま
したので、
今回は、そのことについてレポートしたいと思います。
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10月16日。
任期満了に伴(ともな)う、新潟県知事選挙が投開票され、
無所属で新人の、米山隆一(りゅういち)さんが当選しました。
米山さんは、共産党、自由党、社民党の推薦をうけており、
新潟県にある、東京電力・柏崎刈羽原発の再稼働に、反対の立場を
とっています。
米山さんは、当選時のコメントとして、
「皆さんから頂いた思いを、ひとつひとつ真摯(しんし)に丁寧に、全力
で形にしていく」
「原発再稼働の話がきっとすぐに来るが、約束したとおり、命と暮らし
を守れない現状で認めることはできないと、はっきり言わせていただく」
と、述べました。
ちなみに、
今年の7月に行われた、鹿児島県の知事選挙でも、
九州電力・川内(せんだい)原発の停止を求める、三反園訓(みた
ぞのさとし)さんが当選しています。
これら知事選の結果から、
安倍政権が進める「原発の再稼働」にたいして、
地元県民による「反対の声」が、ますます大きくなって来ているように、
私には感じられます。
* * * * *
一夜明けた、翌日の10月17日。
米山さんは、報道陣の取材にたいして、
「重大な責任を負うことになり、身が引き締まる思いだ」
「原発の再稼働については、県民の命や暮らしが守れない現状に
おいて認められない」
と述べて、知事就任への決意を新たにしました。
また、これまで原発の再稼働に反対の姿勢を示してきた泉田知事は、
その路線を継承すると訴えてきた、米山さんが当選したことについて、
「県民の皆様の選択の結果だと受け止めている」
「米山さんには、お祝いを申し上げるとともに、未来への責任を果たし、
新潟の繁栄のために頑張ってもらいたい」
と、話しています。
共産党の小池・書記局長は、この日の記者会見で、
「安倍政権の民意を無視したやり方や、旧来の保守層も敵に回すような
乱暴な政治への反発が表れたのではないか」
「実質的に野党共闘の形で戦えたので、引きつづき、衆議院選挙での
選挙協力に向けた前向きな協議を進めていきたい」
「今回の(新潟知事選の)結果は、原発再稼働に対する国民の深い不安感
が表れたもので、野党間の政策合意に、原発の問題も、しっかり入れること
を追求していきたい」
と、述べました。
民進党の蓮舫(れんほう)代表は、
「(原発政策について新潟)県民が上げた声の重みは、知事が最も背負う
べきものだ」
「われわれ(民進党)としては、2030年代に脱原発依存を掲げており、
(このたびの)選挙の結果で、われわれ(民進党)の考えが大きく変わるもの
ではない」
「そのためのロードマップを、できるかぎり示して行きたいと(民進党として)
主張しているので、これから淡々と進めていくことになる」
と、述べています。
一方、安倍首相は衆議院の特別委員会で、
「与党が支援した候補が敗れたことは大変残念だ」
「しかし、選挙戦を通じて論戦を行い、選挙戦を展開した結果、新潟県民
が米山候補を選択したことは、真摯(しんし)に受け止めたい」
と述べ、その上で、
「結果が示された以上、米山新知事、そして新しい新潟県政にたいして
国として協力していくことは当然のことだ」
「協力をしながら、新潟県のますますの発展に力を入れていきたい」
と述べています。
菅・官房長官は、同日午前の記者会見で、
「地方の首長の選挙であって、政府としてコメントは差し控えたい」
「新潟県の有権者の皆さんが選んだ結果だったと思う」
「選挙が終わったばかりで、新知事のお考えを伺いながら適切に対応
していくことに尽きる」
と、述べました。また、原発再稼働への影響については、
「何よりも安全が最優先」
「原子力規制委員会による新規規制基準に適合すると認められた場合
のみ、その判断を尊重して地元の皆さんのご理解を頂きながら再稼働
していく考え方に変わりはない」
と、述べています。
世耕・経済産業相は、このたびの知事選の結果について、
「新潟県民が選んだ結果であり、機会を見て新しい知事の考えを伺いな
がら、われわれの対応を考えていきたい」
と述べました。その上で、柏崎刈羽原発の再稼働については、
「原子力規制委員会による新規規制基準への対応や、避難計画をはじめ
とする災害が起こったときの対応については、泉田知事の意見を取り入れ
て進めている」
「また、東京電力の経営改革も重要で、新しい知事の考えもよく伺って
進めていきたい」
と述べて、原発再稼働にたいして理解を得ていきたいという考ええを示し
ています。
経団連の榊原会長は、
「新潟県民が選択されたことだが、新潟には世界最大規模の原子力
発電所があり、国のエネルギー政策や地域振興などいろいろな意味で
意義がある」
「東京電力は、しっかり安全対策を行い、その上で県民に安全性を説明
して理解を求めることになると思うので、新しい知事は柏崎刈羽原子力
発電所の再稼働に慎重な姿勢だが、冷静な判断をしていただき、原発の
安全性が確信できれば稼働の方向で進めてほしい」
と、述べています。
* * * * *
以上ここまで見てきて、私は思うのですが・・・
8月の末に、泉田知事が出馬を取りやめた(注1)ので、
このたびの新潟知事選では、おそらく与党が推薦する候補者が
当選して、
柏崎刈羽原発の再稼働への動きが、加速するものとばかり思い、
暗澹(あんたん)たる気持ちでいました。
ところが! 実際に選挙が行われた結果、
泉田さんの路線を引きついで、原発の再稼働に反対すると主張した、
米山さんが当選したのです。
やはり、鹿児島知事選の結果も合わせて推察すると、
原発がある地元県民の正直な気持ちとして、「原発を動かすのは
嫌(いや)」なのでしょう。
それは恐らく、
もしも東京に原発を作るとすれば、それを嫌がる東京都民の気持ちと、
そんなに変わるものではありません。
私には、そのように思えてならないのです。
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注1:
泉田知事は8月30日。突如(とつじょ)として、知事選への出馬を取り
やめると発表しました。
その理由については、「新潟県が出資している企業のトラブルをめぐり、
地元新聞社の報道が不適切だった」としています。
が、しかし、そのような理由では世間が納得せず、
突然の不出馬表明にたいして、原発推進派による陰謀論など、さまざま
な憶測が飛び交っています。
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