アメリカ大統領選 3
                              2016年10月9日 寺岡克哉


 今回は、

 「イスラム教徒の、アメリカ入国を禁止するべきだ!」という、

 トランプ候補の「過激な発言」について、見て行きたいと思います。


            * * * * *


 トランプ候補は、2015年の12月7日。

 カリフォルニア州で起こった銃乱射事件(注1)を受けて、

 全てのイスラム教徒にたいして、アメリカへの渡航を禁止するべき
だと主張しました。



 この日、トランプ候補は記者会見での声明で、

 「さまざまな世論調査を見るまでもなく、理解を超えるほどの激しい
憎悪はだれの目にも明らかだ。憎悪の源や理由を研究しなければ
ならない」と、強調しました。

 その上で、それまでの間は、

 「聖戦だけをよりどころにする者たち、理性や人命尊重の観念を欠い
た者たちからの恐ろしい攻撃に、アメリカをさらすわけにはいかない」
と、述べたのです。



 同日、トランプ陣営の幹部が語ったところによると、

 渡航禁止の案は、移民希望者だけでなく、旅行者も対象にしている
といいます。

 そしてトランプ候補は、同幹部を通した声明で、

 「入念な情報収集と警戒が必要だ」

 「わが国を破壊しようとする者は、アメリカを愛し、アメリカが偉大な国
になることを望む善良な人々の手で通報し、警察に引き渡さなければ
ならない」と、述べています。



 その一方で、

 すでにアメリカ国内に住んでいるイスラム教徒にたいしては、警戒すべ
き理由がない限り、この方針を適用しないと明言しました。

 トランプ候補はニュース番組で、

 「私にはイスラム教徒の友達が複数いる。素晴らしい人々だ」

 「しかし、巨大な敵意を持ったイスラム教徒の人々も多くいる」

 と、語っています。



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注1:

 2015年の12月2日に、アメリカのカリフォルニア州サンバーナディーノ
にある、障害者支援を行う福祉施設で起こった銃乱射事件。

 当局によると、14人が死亡し、17人が負傷しました。

 男女2人の容疑者が、現場から車で逃走しましたが、警察との銃撃戦
により死亡しています。
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 当然のことながら、このようなトランプ候補の「過激な発言」にたいし
て、

 当時、大統領選挙の共和党候補指名レースで争っていた他の候補者
からも、批判の発言が相次ぎました。



 例えば、ニュージャージー州の知事であるクリス・クリスティー氏は、
ラジオの番組で、

 「経験のない人物が、わけのわからないまま語る内容だ」と批判し、

 アメリカに必要なのは情報活動を強化し、過激化した人物らの情報
を提供してくれる、国内の「穏健派イスラム教徒」の協力を得ることだと
語りました。



 また、軍事方面のタカ派で知られているリンゼー・グラハム上院議員
は、テレビ局の記者にたいして、

 「アメリカ的な価値観の全否定であり、前線で戦っているアメリカ兵に
対しては何のために戦うかという部分を否定された、いわば死刑宣告
だ!」

 という、非常に厳しい発言をしたといいます。



 テッド・クルーズ上院議員も、「私の政策とは違う」と強調しました。

 そして、「 ”イスラム国” や ”アルカイダ” による支配地域が大きい
国からの難民にたいしては、3年間の猶予期間を設ける」

 という、彼自身の案を改めて示しています。



 オハイオ州の知事である、ジョン・ケーシック氏は声明をだし、

 「トランプ候補は大統領に ”全くふさわしくない” と判断する理由が、
また一つ増えた」と述べました。



 元フロリダ州知事のジェブ・ブッシュ氏は、ツイッターに、

 「トランプ候補は ”錯乱” 状態にあり、 ”政策” と称する提案もまともな
内容ではない」と、書き込んでいます。


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 それから、およそ半年後の2016年6月・・・ 

 今度は、フロリダ州で起こった銃乱射事件(注2)を受けて、トランプ候補
が声明を出し、

 「 ”テロの歴史がある” 国・地域からの、移民の受け入れを停止する」
と、主張しました。



 これに対して、オバマ大統領は6月14日。

 「共和党の大統領候補指名が確実となった人物が、イスラム教徒による
アメリカへの移住を禁止する提案を行った」

 「移民を標的にし、宗教社会全体が暴力に加担していたと示唆する内容
だ」として、

 「いつになったら、こうした発言が止むのか」と批判しています。



 また、同じく6月14日。

 クリントン候補も、ピッツバーグで行なった支持者への講演で、

 「トランプ候補の主張は、同氏が大統領としての資質を備えていない
ことを裏付けている」と、主張しました。

 その上で、

 「フロリダ州の銃乱射事件のような惨事が発生した場合、大統領は
最高司令官として、 ”冷静かつ落ち着いた、威厳ある対応が求められ
る” 」と、述べています。



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注2:

 2016年6月12日に、アメリカのフロリダ州オーランドにある、ゲイ
ナイトクラブで起こった銃乱射事件。

 容疑者を含む50人が死亡し、53人が負傷しました。

 これは、アメリカの銃乱射事件の被害としては「史上最悪」となって
います。
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              * * * * *


 以上、

 トランプ候補の、イスラム教徒に対する「過激な発言」について、

 ざっと見てきましたが・・・ 



 やはり、多くの人が批判しているように、

 トランプ候補の発言は、あまりにも感情的であり、近視眼的である
としか、私にも思えません。

 およそ、全世界に大きな影響力をもつ「超大国の大統領」を任せる
人間としては、

 「全くふさわしくない!」と言わざるを得ません。



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