障害者施設での刺殺事件
2016年7月31日 寺岡克哉
7月26日の午前2時45分ごろ。
神奈川県・相模原市緑区の千木良(ちぎら)にある、知的障害者施設の
「津久井やまゆり園」に、
刃物を持った男が侵入して、入所者の人たちを次々と刺し、19人が死亡、
26人が重軽傷を負うという、とても凄惨(せいさん)な事件が起こりました。
神奈川県警は、午前3時すぎに津久井署に出頭してきた、
現場近くに住んでいる「やまゆり園」の元職員だった26歳の男を、
殺人未遂と建造物侵入の疑いで逮捕しています。
ちなみに、
1948年に銀行員の人たち「12人」が毒殺された「帝銀事件」。
1995年の「13人」が死亡した「地下鉄サリン事件」。
2001年に、小学校の児童「8人」が刺殺された「付属池田小事件」。
2008年に「7人」が死亡した「秋葉原通り魔事件」。
同2008年に「16人」が死亡した「大阪個室ビデオ店放火事件」。
これら過去に起こった凄惨(せいさん)な事件と比べても・・・
このたび「19人」もの人々が刺殺されたのは、
死者数において「戦後最悪の殺人事件」であったといえます。
私事(わたくしごと)で恐縮ですが、今年の3月に「末期がん」で母を失っ
た記憶がまだ新しく、
このような悲惨な事件で肉親を失ってしまった、家族の方々の「悲しみ」
と「無念さ」が、ひしひしと伝わってくるような気がしています。
犠牲になった方々には、心からお悔やみ申し上げます。
* * * * *
ところで!
この容疑者の男は、今年の2月15日に、
衆議院議長の大島理森(ただもり)さんに宛てた手紙を、議長公邸の職員
に手渡していました。
その手紙の詳報は、7月26日付の毎日新聞によると、以下のようになって
います。
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衆議院議長大島理森様
この手紙を手にとって頂き本当にありがとうございます。
私は障害者総勢470名を抹殺することができます。
常軌を逸する発言であることは重々理解しております。しかし、保護者の
疲れきった表情、施設で働いている職員の生気の欠けた瞳、日本国と世界
の為(ため)と思い、居ても立っても居られずに本日行動に移した次第であり
ます。
理由は世界経済の活性化、本格的な第三次世界大戦を未然に防ぐこと
ができるかもしれないと考えたからです。
私の目標は重複障害者の方が家庭内での生活、及び社会的活動が極め
て困難な場合、保護者の同意を得て安楽死できる世界です。
重複障害者に対する命のあり方は未(いま)だに答えが見つかっていない
所だと考えました。障害者は不幸を作ることしかできません。
今こそ革命を行い、全人類の為に必要不可欠である辛(つら)い決断をする
時だと考えます。日本国が大きな第一歩を踏み出すのです。
世界を担う大島理森様のお力で世界をより良い方向に進めて頂けないで
しょうか。是非、安倍晋三様のお耳に伝えて頂ければと思います。
私が人類の為にできることを真剣に考えた答えでございます。
衆議院議長大島理森様、どうか愛する日本国、全人類の為にお力添え頂け
ないでしょうか。何卒よろしくお願い致します。
文責 植松 聖
作戦内容
職員の少ない夜勤に決行致します。
重複障害者が多く在籍している2つの園を標的とします。
見守り職員は結束バンドで見動き、外部との連絡をとれなくします。
職員は絶体に傷つけず、速やかに作戦を実行します。
2つの園260名を抹殺した後は自首します。
作戦を実行するに私からはいくつかのご要望がございます。
逮捕後の監禁は最長で2年までとし、その後は自由な人生を送らせて
下さい。心神喪失による無罪。
新しい名前(伊黒崇)本籍、運転免許証等の生活に必要な書類。
美容整形による一般社会への擬態。
金銭的支援5億円。
これらを確約して頂ければと考えております。
ご決断頂ければ、いつでも作戦を実行致します。
日本国と世界平和の為に、何卒(なにとぞ)よろしくお願い致します。
想像を絶する激務の中大変恐縮ではございますが、安倍晋三様にご相談
頂けることを切に願っております。
植松聖 (住所、電話番号=略) かながわ共同会職員
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上の文面を見てもらえれば分かると思いますが・・・
おそらく容疑者の男は、このたびの犯行にたいして、
「取り返しのつかない、ものすごく残虐で非道なことをしてしまった」と
いうような反省などは無く、
「人類のために正義を実行した!」とでも、思っているのではないかと
推察されます。
おそらく、この容疑者の男は、「人の心」とか「人情」というものを失って
しまったのでしょう。
そして、もしも、その原因として、
「経済至上主義」の名の下に、非正規雇用やブラック企業などで、人間を
まるで消耗品のように使い捨てにし、
鬱病や、ひきこもり、ニート、貧困な無職老人など、「使い物にならない
人間は、社会から抹殺してしまえ!」
というような社会風潮が背景にあるのだとしたら、心の底からぞっとして
しまいます。
じつは・・・ そのような社会風潮を、私は肌で感じているので、
この容疑者の男にたいして、内心で共感しているような人間が、
いまの世の中には、けっこう存在しているのではないかと、ものすごく
危惧しています。
もっとはっきり言えば、
「社会正義」の名の下に、障害者や老人たちを襲うような「模倣犯(もほ
うはん)」が現われるのではないかと、ものすごく心配なわけです。
* * * * *
そのような犯罪を、根本的に防ぐためは・・・
このたびの容疑者を、たとえば死刑などの厳罰に処しても、あまり効果が
無いのではないかと私は考えています。
なぜなら社会風潮が、そのような犯罪を助長する方向に働いているので
あれば、かならず、また同じような事件を起こす人間が現われるからです。
事実、「付属池田小事件」や「秋葉原通り魔事件」などと、このたびの事件
とでは、同じような匂いを私は感じてしまうのです。
なので、
「やさしさ」や「思いやりの心」が大切にされ、そのような心を持った人が
評価される社会。
恥ずかしげもなく「弱肉強食」が叫ばれ、当たり前のように弱者が虐(しい
た)げられるのではなく、「弱者保護」や「生命の尊重」が、ますます当たり前
になっていく社会。
障害者や高齢者の人たちが、「負い目」や「うしろめたさ」を感じることなく
生きられる社会。
人間を消耗品のように使い捨てるのではなく、一人ひとりの人格が尊重
される社会。
そのような「やさしくて思いやりのある社会」を構築していくことこそが、
このたびのような事件を根本から抑止していくための、唯一の方法では
ないかと私には思えてなりません。
たしかに、いまの社会状況を直視すれば、
上で述べたことは、かなり理想的であり、実現するのは遠い道のりかも
知れないけれど・・・
しかしそれでも、やはり根本的な対処法は、
ここで述べたような「やさしくて思いやりのある社会」を、一歩づつ構築
していくしか、
ほかに方法が無いのだと思えてならないのです。
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