改憲勢力が3分の2を超す
2016年7月17日 寺岡克哉
7月10日に、参議院選挙の投票と開票が行われました。
しかし! その結果・・・
自由民主党、公明党、大阪維新の会、日本のこころを大切にする党 の、
いわゆる「憲法改正に前向きな4党」で、参議院総数の3分の2を超え
る162議席を占めることに、なってしまいました(注1)。
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注1:
自民党122議席(注2)、公明党25議席、大阪維新の会12議席、日本の
こころを大切にする党3議席の、あわせて162議席。
注2:
開票が終了した時点での、自民党の勢力は120議席でしたが、
7月11日に、無所属で当選した中西健治さんを自民党が追加公認し、
7月12日に、無所属で当選した平野達男さんが自民党に入党することに
なりました。
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さらには、この他にも、
今回は非改選だった無所属や諸派の議員のうち4人が、憲法改正に前向き
な姿勢だといいます。
そして一方、
すでに衆議院は、「憲法改正に前向きな勢力」で3分の2以上を占めて
いましたから、
憲法の改正案を、「国民投票」にかけるための条件が、このたびの
参議院選挙で整ったことになります。
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ちなみに、
「憲法改正の手続き」というのは、およそ以下のようになっています。
まず、
憲法の改正案は、衆議院では100人以上、参議院では50人以上の
議員の賛成があれば提出できます。
そして、
衆参両院の「憲法審査会」での審査を経て、衆参それぞれの本会議で
総議員の「3分の2」以上が賛成すると、
その後60日~80日の間に、全有権者が対象となる「国民投票」が行われ
ます。
さらには、
その国民投票により、有効投票数の過半数の賛成があれば、憲法の改正
が承認されるのです。
そのため、
今回の参議院選挙では、改憲勢力が「3分の2」以上を占めるのかどうかが、
(テレビではあまり報道しませんでしたが)最大の争点になっていたのです。
* * * * *
ところで!
今さらながらに、私は知って驚いたのですが、
この「3分の2」の意味を知らない人が、かなり多かったみたいです。
たとえば高知新聞によると、
7月2~4日に新聞記者が高知市内で100人に聞いたところ、全く知らな
かった人が83人もいました。
つまり83%の人が、「3分の2」の意味を知らなかったのです。
また、神奈川新聞によると、
7月9日に、県内で100人の有権者に「3分の2」の意味を尋ねたところ、
67人(つまり67%の人)が、「知らない」と回答しています。
さらには、毎日新聞によると、
7月10日に、全国の有権者150人に街頭でアンケートを実施したところ、
83人(つまり55.3%の人)が、「3分の2」の意味について「知らない」と
回答しているのです。
これらを総合して考えると、
驚くべきことに、どんなに少なく見積もったとしても、
選挙権をもつ日本国民の半数以上が、「3分の2」の意味について、
ほとんど知らなかったのだと判断せざるを得ません!
私の想像をはるかに超えて、愕然(がくぜん)とするほどの「無知さ」
です。
こんな状況だったのなら、18歳の選挙権うんぬんよりも、
まず大人が、国会運営における「常識中の常識」を知らなければ
なりませんでした。
* * * * *
もしかしたら私たちは、このたびの参議院選挙によって、
日本が戦争に巻き込まれてしまう道へと進んでいく「歴史的な転換
点」の、
まさに「その瞬間」を体験したのかもしれません。
しかし、その歴史的な転換が、
まったくの「無知」によって行われたのであれば、あまりにも情けなくて
仕方がありません。
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