一億総活躍社会って何?
                           2015年10月18日 寺岡克哉


 安倍首相が、「一億総活躍社会」などと、なにやら胡散(うさん)臭い
ことを言い始めました。

 「一億総活躍担当大臣」というポストまで作り、加藤勝信・衆議院議員
を、その大臣に任命しています。



 今回は、

 この「一億総活躍社会」について、私の思ったことや感じたことを、

 お話してみましょう。


             * * * * *


 まず、

 つい先日の9月19日に、集団的自衛権の行使を可能にする、

 「安全保障関連法案」が成立してしまいました。



 これにより、

 日本の自衛隊(つまり日本の軍事力)を、必要とあれば、

 世界のどこにでも派遣できることになったのです。



 その後すぐに、

 「一億総活躍」などと、声高に喧伝(けんでん)されれば、

 戦前の日本で、戦争準備のために喧伝されていた「一億総動員」
と、ものすごく印象が重なってしまいます。


 このような「きな臭さ」を感じてしまうのは、おそらく私だけではない
でしょう。


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 ところで、

 「一億総活躍社会」とは、具体的には、いったいどんな社会なの
でしょう?



 安倍首相は9月24日に、

 アベノミクスの第2ステージとして、「新3本の矢」というのを発表
しました。


 その具体的な内容は、

●GDP(国内総生産)を600兆円に乗せる。(ちなみに2014年度
 の名目GDPは、およそ491兆円)

●1人の女性が一生涯に生む子供の数、つまり「出生率」を1.8に
 する。(2014年度の出生率は1.42)

●家族の介護や看護で離職してしまう人、つまり「介護離職」をゼロ
 にする。

 と、なっています。



 そして安倍首相は、

 これら「新3本の矢」を総称するフレーズとして、「一億総活躍社会」
というのを持ちだし、

 大臣のポストまで作ったのでした。


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 つまり「一億総活躍社会」というのは、

 「日本国民よ、GDPを600兆円に上げろ!」

 そのために、

 「女は子供を生んで人口を維持しろ!」

 「親の介護なんかしてないで、会社で働け!」

 と言っているように、私には思えてなりません。



 しかし私は、

 GDPつまり「経済活動」というのは、家族を維持するために
あるのであって、

 経済活動のために、家族があるわけではないと考えています。



 つまり、

 経済活動というのは、「家族を維持するための手段の1つ」に
すぎず、

 家族というのは、けっして「経済活動のための道具ではない」
のです。



 だから、

 家族の介護や看護(つまり家族を維持する最重要の行動)の
ために、

 離職する(経済活動から離れる)ということが、起こり得るわけ
です。



 また、

 女性が子供を産むのも、「どんな家庭を築きたいか」によるので
あって、

 けっして「GDPを600兆円に上げるため」に、子供を産むわけ
ではありません。



 「一億総活躍社会」というフレーズは、

 何というか、そのような「本末転倒」をしているのではないかと
いう感じが、

 どうしても、してならないのです。


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 そしてさらに、たとえば、

 結婚をしなかった人々・・・ 

 子供を産まなかった女性たち・・・ 

 うつ病になって、働くことが出来なくなった人々・・・ 

 ニートや、ひきこもりの人たち・・・ 

 親の介護のために、会社を辞めた人々・・・ 

 老齢になって体が不自由になり、介護認定を受けている人々・・・ 

 まだ体が動くのに、年金をもらって生活し、働かない人たち・・・ 

 生活保護を受けている人々・・・ 



 このような人たちは、そのうちに、

 「非国民!」と呼ばれるようにまで、なってしまうのではないで
しょうか。



 このような、心の底から感じてしまう「漠然とした危機感」も、

 「一億総活躍」というフレーズが、戦前の「一億総動員」と、

 ものすごく印象が重なってしまう原因なのかも知れません。



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