法案反対の大規模デモ
                             2015年9月6日 寺岡克哉


 先日の8月30日。

 市民団体の「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」
が主催した、

 「国会10万人・全国100万人大行動」というのが実施されました。



 これは、

 「安全保障関連法案」に反対した、これまでで「最も大規模なデモ」
となりました!


 国会の周辺で「集会」や「デモ」に参加した人々の数は、主催者側の
発表でおよそ12万人、警視庁の調べで3万人余りとなっています。



 さらには、主催者側によると、

 国会周辺だけでなく、全国の47都道府県においても、抗議の「集会」
や「デモ」が、合計300ヶ所以上で開かれました。


             * * * * *


 「国会議事堂の正門前」にはメインステージが設けられ、午後2時
ごろから集会が開かれました。

 「戦争法案、今すぐ廃案」 「戦争反対、9条守れ」などの、シュプレ
ヒコールが上がっています。

 議事堂の正門は、警察車両がずらりと並んでバリケードを築いて
おり、

 集会の参加者たちは、通りを挟んで建物を取り囲み、身動きができ
ないほどの人で埋め尽くされました。



 この、議事堂正門前の「メインステージ」では、

 学者、著名人、若者の代表、野党の代表たちが、つぎつぎと
マイクを手にして、

 それぞれの思いや考えを訴えました。



 元北大教授の、山口二郎・法政大教授(政治学)は、

 「安倍政権は国民の生命、安全を守ると言っているがうそっぱち」

 「このような政権は粉砕しなければいけない」と、訴えています。



 宇宙物理学者で総合研究大学院大学の、池内了・名誉教授は、

 「科学の軍事利用が具体的に始まり、海外に出かける兵士たち
に武器を与える研究を、科学者にさせるという状況が生まれつつ
ある」

 「今の段階で、こうした芽を取り去るべきだ」と、主張しました。



 作家の森村誠一さんは、

 「戦争で最初に犠牲になるのは若者たちです」

 「私はかつて戦時中に女性が竹やりを持たされ、訓練させられる
光景を見てきました」

 「だからこそ、絶対に戦争可能な国家にしてはならない」と、訴え
ました。



 音楽家の坂本龍一さんは、

 「憲法の精神、9条の精神がここまで根づいていることを皆さんが
示してくれ、勇気づけられている」

 「憲法や民主主義を取りもどすための、とても大事な時期で、僕も
一緒に行動していきます」と、述べました。



 若者の代表として、大学生の寺田ともかさんは、

 「私の払った税金が弾薬の提供のために使われ、遠い国の子ども
たちが傷つくのだけは絶対に止めたい」

 「”やられたらやるぞ” と威嚇するのではなく、そもそも敵を作らない
努力を諦めない国でいたい」

 「戦争法案は、絶対に止めることができると信じています」と、訴え
ています。



 民主党の岡田克也・代表は、

 「参議院での議論で、法案の問題点がますます明らかになった」

 「こんな憲法違反の法案を通すわけにはいかない」

 「国民が怒っていることを、安倍政権に分からせないとダメだ」と
強調し、

 「これから3週間、さらに力を貸してほしい」と、人々に向かって
呼びかけました。



 共産党の志位和夫・委員長は、

 「自衛隊の戦争参加に、白紙委任状を与えることになる」

 「ここまでボロボロになった ”戦争法案” は、廃案にするしかな
い」と、訴えました。



 社民党の吉田忠智・党首は、

 「立場の違いを超えて、安倍政権の打倒、(安保関連法案の)廃案
に全力を挙げる」と、訴えています。



 生活の党と山本太郎となかまたちの、小沢一郎・代表は、

 「今まで、こういう集会に顔を出したことは、ほとんどない」

 「今回は何としても、いいかげんでバカげた、そして危険な法律案
を阻止するために、みんなで力を合わせなければいけない」

 「(民主党の)岡田代表らと力を合わせて戦い抜く」と、語りました。


           * * * * *


 また、

 国会議事堂の正門前に集まった、一般の参加者たちも、

 報道陣の取材にたいして、さまざまな思いを打ち明けています。



 岩手県の一関市から2人の子どもを連れて参加した、男性教諭
(52)は、

 「多くの市民が平和を守るために国会前で行動したことを、子供
たちの心に刻んでもらいたいと思い、一緒に来た」と、話しました。



 デモに参加するのは初めてという、京都市の無職の男性(68)は、

 「安保関連法案に反対する若者を見て、いてもたってもいられな
かった」

 「右翼、左翼という言葉にとらわれない、若者の戦争に行きたくな
いという真剣な言葉が心に響いた」と、語っています。



 地元で安保法案反対の署名活動を続けている、川崎市から来た
無職の女性(72)は、

 「街での訴えも好意的に受け止められている。今日の行動で潮目
が変わるのではないかと期待している」と、話しました。



 小学2年生の息子と共に、初めてデモに参加したという、東京都の
教職員の男性(39)は、

 「将来を担う息子に、戦争をしてはいけないということを分かってほし
い」との思いで、連れてきたといいます。



 ボランティア活動で、アフガニスタンの戦争で傷ついた子供たちの
医療支援をした経験があり、現在、看護師を目指している女性(23)
は、

 「これまでの海外派遣で、自衛隊が武力を行使しないことで築いて
きた信頼を、(安保関連)法案が崩してしまうのではないかと危機感
を抱いています」

 「一度、武力を行使する方向にむかうと歯止めがきかないと思うし、
日本は人道支援や技術の提供で各国からの信頼を地道に得ていく
べきだ」と、話しています。



 SELDs(自由と民主主義のための学生緊急行動)の中心メンバー
の一人である、大学4年の男性は、

 「きょうは多くの人たちと声を上げられることができ、勇気をもらった」

 「今後も全国の若者と連携し、(安保関連)法案に反対の声を上げ
続けていきたい」と、話しました。


 また、同じくSELDsに所属する、沖縄出身の若者は、

 「ずっと平和を求めてきた沖縄の思いが、本土にも広がってきている
と思う」

 「これからも、ずっと連携していけたらと思う」と、語っています。


           * * * * *


 さらには、同8月30日。

 「国会10万人・全国100万人大行動」の主催者である、

 「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」によると、

 全国の47都道府県で、抗議の「集会」や「デモ」が、合計300ヶ所
以上で開かれました。



 たとえば、

 私が住む北海道でも、30ヶ所以上で「集会」や「デモ」が行なわれ
ており、

 札幌の中心街で開かれた集会では、陸上自衛隊に所属する自衛官
が飛び入りでマイクを握り、

 「私が守りたいのは国民の命と民主主義です」

 「私は人の命を救うため、国を守るためために自衛隊に入りました」

 「戦争に行って人を殺したり、殺されたりするために入ったわけでは
ない」

 「今の政権が進めていることは戦争できる国づくりだ」

 と、力をこめて訴え、周りの人々から大きな拍手が起こりました。


           * * * * *


 ところが! その翌日の8月31日。

 菅義偉・官房長官は、午前の記者会見で、

 「安全保障関連法案」に反対する大規模なデモが行われたのは、

 国民の間で法案に対する誤解が生じているためだと指摘しました。



 菅・官房長官は、記者会見で同法案について、

 「一部野党やマスコミから、戦争法案あるいは徴兵制の復活という
宣伝がされており、大きな誤解が生じていることは極めて残念だ」と、
述べました。

 また、デモに関しては、「(法案に)賛成のデモも実施されていた。
国民の声にも、さまざまな声があることも事実だろう」という見方を示し、

 政府としては「戦争法案とか徴兵制の復活とか、こうしたことでは
全くないということを丁寧に説明していきたい」と、語っています。


           * * * * *


 以上、ここまで見てきて、私は思うのですが、

 国民の中で、こんなに大規模な反対運動が起こっているのに、

 安倍政権と与党(おもに自民党)は、それを汲(く)み取ろうとしない
ばかりか、

 あくまでも「安全保障関連法案」を、いまの国会で「成立」させよう
としています。



 ちなみに、

 安倍政権と自民党が、こんなにも「横暴(おうぼう)」になり、国民
の声を無視するようになったのは、

 前回の2014年12月14日に行われた衆議院選挙で、自民党を
大勝させてしまったからです。


 しかも、そのときの選挙では、

 「安全保障関連法案の可否」が、明確な争点には、なっていま
せんでした。



 だから本来なら、

 (安倍政権と自民党は絶対にやらないでしょうが)、


 ここで国民の信を問うために、いまいちど衆議院を解散し、


 「安全保障関連法案の可否」を明確な争点とした、総選挙を
実施するべきなのです!




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