戦争に反対するのは利己的?
2015年8月9日 寺岡克哉
前回は、「安全保障関連法案に反対する学者の会」について
レポートしましたが、
一方、
学生の人々も、安全保障関連法案に反対する団体である、
シールズ(SEALDs: Students Emergency Action for Liberal
Democracy - s 自由と民主主義のための学生緊急行動)
と、いうのを結成しています。
この「シールズ」と、「安全保障関連法案に反対する学者の会」は、
7月31日に共同して、国会議事堂に近い東京・平河町の砂防
会館で「抗議集会」を開き、国会周辺で「抗議デモ」を行いました。
主催者側の発表によると、およそ2万5000人が集まったとされて
います。
ちなみに昔から行われていた、いわゆる「学生運動」の常識では、
学生側と教官側が「敵対関係」にありました。
なので、このたびのような大規模な政治デモを、学生と大学教員
たちが共同で催すというのは、ものすごく異例のことです。
安倍政権による、あまりにも「強引なやり方」に対抗するために、
「学生」だの「教官」だのと言っていられないような、
そのような「危機的状況」が、ひしひしと伝わってくる感じがします。
* * * * *
ところで!
自民党の、武藤貴也(たかや)・衆議院議員(滋賀4区 北海道釧路
市出身 36歳)が、
「シールズ」への批判を、短文投稿サイトの「ツイッター」に、7月30日
付けで投稿していたことが分かりました。
以下は、その投稿文です。
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SEALDsという学生集団が自由と民主主義のために行動すると言って、
国会前でマイクを持ち演説をしてるが、
彼ら彼女らの主張は「だって戦争に行きたくないじゃん」という自分
中心、極端な利己的考えに基づく。
利己的個人主義がここまで蔓延したのは戦後教育のせいだろうと思う
が、非常に残念だ。
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なんと言うことでしょう!
与党の衆議院議員が、こんな考えを公表するなんて、
とても非常識で、まったくメチャクチャであり、
「ものすごく危険な状況」であると言わざるを得ません。
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このような、武藤議員の考え方にたいして、
早稲田大学・法学学術院の、水島朝穂(あさほ)教授(憲法学)は、
「国家のために命を投げ出せ、国のために個人を差し出せという
典型的な発言で、あまりに危険な考え方だ」
と、分析しています。
また、
研究者やNGO(非政府組織)関係者でつくる、集団的自衛権問題
研究会の川崎哲・代表は、
「集団の利益を優先させ、個人を押し殺すことが人権侵害を容認
してきた」
「(武藤氏の主張は)ある意味で ”お国のために個人は犠牲になれ”
と言っている」
と、指摘しています。
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さらには、
「シールズ」の活動に参加している若い人々から、以下のような
反論や意見が、続々と出ています。
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「自衛隊員が殺し殺されてほしくない。(安全保障関連)法案が
通ればテロで家族や友人が巻き込まれる危険性も高まる。自分
たちのことだけを発言しているわけではない」
「反対の声が多いにもかかわらず、自民党が法案を通そうとする
行為が自己中心的です」
「戦争に行きたくないとの考えは人間のまっとうな感性。それを
利己的というのは理解できない」
「彼(武藤議員)の国家主義の主張が見え隠れしている。自由な
発言を委縮させかねない言動だ」
「戦争に行きたくないという言葉の奥に、家族や友人、恋人を思う
気持ちがあるのを(武藤議員は)考えられませんか」
「(武藤)議員は ”国のために死ね” という軍国主義の戦前と同じ
ことを言っているように聞こえます」
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しかし一方、8月4日の時点において武藤議員は
「シールズ」への批判を「ツイッター」に投稿したことについて、
「撤回はしない」と述べ、
自身の書き込みに、誤りは無かったという認識を示しています。
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以上ここまで見てきて、私はくり返し強調しますが、
与党(自民党)の、しかも、民意を真摯(しんし)に受け止めて
政治に反映させなければならない「衆議院議員」が、
こんな酷(ひど)い考えを、まったく躊躇(ちゅうちょ)することなく、
公然と言い放つようになるなんて、
日本の政治が、「ものすごく危機的な状況」になってきたと、
言わざるを得ません!
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