世の中を生き苦しくするもの
2003年6月22日 寺岡克哉
わけの分からない不安、焦燥、息の詰まるような閉塞感・・・。
私は以前から、世の中に「生き苦しい雰囲気」が蔓延しているように感じています。
そして、その正体が何なのかを、ずっと考え続けています。
生き苦しさを感じるのは、実は世の中に原因があるのではなく、私個人の性格が原
因なのかも知れません。その要因があるのは否定できないと思います。
しかし「世の中」の方にも、生き苦しくしている原因が多々あるように思うのです。今
回は、そちらの方を考えてみたいと思います。
まずはじめに、世の中をちょっと覗いただけでも、生き苦しくするものがたくさんあり
ます。
例えば・・・ 現代社会のストレス、いじめ、引きこもり、無慈悲なリストラ、過労死、
過労自殺、幼児虐待、家庭内暴力、強盗、通り魔、テロ、戦争・・・。
このように、「世の中を生き苦しくするもの」は、無数に存在します。
ところで、これら「世の中を生き苦しくするもの」が起こる原因は千差万別で、共通
するものが全く見当たらないように思えます。しかし、これら全てに共通するものが、
たった一つだけあります。
それは、「人間」が原因だと言うことです。
人間さえ存在しなければ、これら諸々の生き苦しさも存在しないのです。
私の感じていることを率直に言えば、「人間」を見ると鬱陶しくなってむかつき、動物
や自然を見ていると心が安らいで気持ちが良いのです。(しかし今は、昔に比べると
人間がだいぶ好きになりました。)
最近のペットブームや、タマちゃんブーム、アウトドアやエコロジーブームなどを見
ると、人間を鬱陶しく感じ、動物や自然の方が好ましく感じる人々が、私の他にもた
くさんいるのではないでしょうか?
つまり、「世の中を生き苦しくするもの」は、人間です。
しかしこれは、世の中(人類社会)を作っているのが人間だから、世の中が生き苦
しいとすれば、その原因が人間にあるのは当然です。
それではなぜ、「人間の存在」が世の中を生き苦しくしているのでしょうか?
なぜ人間をみると、イライラや不安、むかつきが起こるのでしょうか?
その原因は色々と考えられますが、私が思い至ったのは次の二つです。
一つ目は、不安や恐怖を煽り立てることによる競争の激化です。
「成績の悪い者は切り捨てる!」
「競争に負けた者はいらない!」
「強い者が勝ち残り、弱い者は消え去るのみ!」
と、このような不安や恐怖を煽り立てることにより、あらゆる場所で熾烈な競争が行
われています。
そして、この不安や恐怖から逃れるために、邪魔者をいじめて追い出したり、他人
の足を引っ張ったり、不正や悪いことをしたり、最悪の場合は殺人を行ってでも勝ち
残ろうとするのです。
これでは他人を信用することが出来ず、不安や恐怖、焦燥、憎悪が絶えません。
また、自分が切り捨てられる恐怖から、過労死や過労自殺をするまで働いてしまう
人もいることでしょう。それで世の中がギスギスして生き苦しくなるのです。
例えば、正々堂々としていて、お互いに励み合い、切磋琢磨するような「良い競争
原理」が働けば問題はないのです。しかし最近の熾烈な競争は、勝つために不安や
恐怖を大いに煽り立て、手段や方法を選ばないような、「悪い競争原理」が働いてい
るのです。
よく、「日本の経済を活性化させるためには競争原理が大切だ!」などと言われま
す。しかし、この「悪い競争原理」が働いてしまったら、不正や足の引っ張り合いが横
行し、日本の経済はますます低迷して行くだろうと思います。
そして二つ目は、容姿、持ち物、ライフスタイルなどを他人と比較し、差別すること
です。
顔は美人か?
太っていないか?
持ち物、化粧、ファッションが流行に乗り遅れていないか?
車や家を持っているか?
定職についているか?
結婚はしているか?
子供はいるか?
その他の様々な差別による不安。そして、自分が差別の標的にされないように、
他人を差別して攻撃すること。これらが原因で他人の目が非常に気になり、また、
人間関係もギスギスして生き苦しくなるのです。
このように、「世の中を生き苦しくするもの」は、競争と差別です。
私は、何かもっとこう、ゆったりと安心して生きられるような世の中にならないもの
か?
人間を心から信用でき、人間を鬱陶しく感じないですむ世の中にならないものか?
と、いつも考え続けています。私が、「生命の肯定」をテーマにエッセイを書き続けて
いるのもそのためです。
しかしこの問題を突き詰めて考えて行くと、やはり、「優しい心」や「思いやりの心」
を人類全体に浸透させること。つまり、釈迦の説いた「慈悲」や、キリストの説いた
「隣人愛」を、人類全体に浸透させて行くしか手はないのです。
「現代の生き苦しさ」を解決する方法は、実は2千年以上も前から、既に考え出さ
れているのです!
いじめ、引きこもり、無慈悲なリストラ、過労死、過労自殺、幼児虐待、家庭内暴
力、強盗、通り魔、テロ、戦争・・・。
これらが起こるのは全て、生命と人格を思いやる「愛の心」が喪失しているから
です。
結局、「世の中を生き苦しくするもの」は、愛の喪失なのです!
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