ギリシャの国民投票
                            2015年7月12日 寺岡克哉


 「事実上のデフォルト状態」に陥っているギリシャで、7月5日。

 EU(ヨーロッパ連合)が、ギリシャへの金融支援をする条件として
求めている「緊縮財政」を

 ギリシャ側が受け入れるか否かを問う、「国民投票」が行われま
した。



 即日開票されたのですが、しかしながら事前の予想に反して、

 受け入れに「反対」が61.31%となり、「賛成」の38.69%に
大差をつけて、

 EUが求める「緊縮財政」を、ギリシャ国民が拒否する結果となり
ました。



 そのため、

 ギリシャが「ユーロ圏を離脱」してしまう可能性が高まり、世界の金融
市場が動揺しました。

 たとえば、翌7月6日の月曜日の、日経平均株価の終値(おわりね)
は2万0112円12銭となり、

 その前週末から427円67銭も値下がりしています。


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 一方、ギリシャ国内では、

 6月29日から銀行がほぼ営業を停止しており、

 いま現在でも、「預金の引き出し」が制限されたままになって
います。



 当初は、1日60ユーロ(およそ8100円)のお金を、引き出すこと
ができましたが、

 7月6日の時点では、1日50ユーロ(およそ6750円)にまで、
制限が厳しくなりました。



 ATM(現金自動支払機)には、人々の行列ができ、

 一部のATMでは現金が切れて、別のATMを探し回る人も居た
みたいです。


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 このように、

 ギリシャの銀行が「営業停止」に追い込まれているにもかかわらず、

 EU(ヨーロッパ連合)が金融支援をする条件としている「緊縮財政」
の受け入れを、

 なぜギリシャの人々は、圧倒的な多数で「反対」したのでしょう?



 その理由としては、

 金融支援と引き換えに、およそ5年間にもわたって続いた年金
削減などの緊縮財政にもかかわらず、

 ギリシャの経済が一向に好転していないことへの「不満」が、

 「ユーロ圏離脱」への恐怖を上回っていたからだと、されてい
ます。



 たとえば「緊縮財政」によって、

 2010年~2014年までに、ギリシャのGDP(国内総生産)は25%
も減少してしまいました。

 いま現在の失業率は25.6%となっており、25歳未満の若い人々
に限ると、失業率が49.7%にもなっています。

 経済格差が拡大して、人々の生活は苦しくなり、収入が半分以下
に減った人も居るといいます。



 このため、

 財政政策をEUに握られたことへの「屈辱感」が、反感を増幅させて
しまったみたいです。

 アテネ市内で、ATM(現金自動支払機)に並んでいた女性は、

 「(緊縮財政に)賛成しても反対しても、困難な状況に変わりはない」

 「私たちは国民の誇りをしめしたの」と、語っています。


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 以上、ここまで見てきましたが、

 ギリシャの人々の「不満」は、ユーロ圏からの離脱も厭(いと)わない
ほど、

 ものすごく大きなものに、なっています。



 しかしながら、

 このたびの国民投票の結果によって、ギリシャのユーロ圏離脱が、

 決定したわけではありません。



 これから先も、

 EU(ヨーロッパ連合)と、ギリシャとの間で、

 いろいろな話し合いが、行なわれていくことになるでしょう。



 私は、この「ギリシャ問題」にたいして、

 短絡的な「決裂」などには、けっして陥ることなく、

 冷静で柔軟な、そして忍耐強い議論が行なわれていくようにと、

 願ってやまない次第です。



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