世界のCO2排出が横ばい
2015年5月24日 寺岡克哉
5月16日。
IEA(国際エネルギー機関)のまとめによると、
2014年における、世界全体のCO2(二酸化炭素)排出量は、
2013年と同じ323億トンにとどまり、「横ばい」になっていたことが
分かりました。
ちなみに、
2014年の世界経済は、2013年にくらべて3%成長しましたが、
このように世界経済が成長したにもかかわらず、CO2の排出量
が「横ばい」になったのは、
データが存在している過去40年間で、初めてのことです。
ところで、一般的に、
世界経済が成長したときは、石炭や石油などの「化石燃料」の消費
が増えるために、CO2の排出量は増加します。
一方、その反対に、
世界経済が悪化したときは、化石燃料の消費が減るため、CO2の
排出量は減少するのです。
たとえば、
2009年のCO2の排出量は、2008年にくらべて減少しましたが、
これは「リーマンショック」による世界経済の悪化が原因でした。
なので、今回のように、
世界経済が成長したにもかかわらず、CO2の排出量が「横ばい」に
なったというのは、とても画期的なことなのです。
IEAは、「驚くべきことで、年末に合意を目指している、温暖化対策
の ”新枠組み交渉” を加速させるだろう」としています。
* * * * *
しかしなぜ、
世界経済が成長したのに、CO2の排出量が「横ばい」になったの
でしょう?
IEA(国際エネルギー機関)は、
先進国や中国で、CO2を出さない「再生可能エネルギー」の利用
が拡大していることに加えて、
先進国の「省エネ」が進んでいることを、理由に挙げています。
たとえばUNEP(国連環境計画)によると、
昨年1年間に世界で建設された、太陽光発電や風力発電などの
再生可能エネルギーの発電量は、
過去最高の、1億300万キロワットに急拡大しています。
また、IEAの分析によると、
ヨーロッパの各国は1990年以降から、家電や自動車に省エネ基準
を設定するなどして、着実に改善を進めてきており、
かつて「省エネ大国」と呼ばれた日本を、追い抜く国も出ているとして
います。
つまり、これは、
「温暖化対策と経済成長を両立させることは難しい」とする、これまで
の保守的な主張を覆(くつがえ)して、
経済の成長が続いても、「省エネ」や「再生可能エネルギー」の導入に
よってCO2の排出を減らせることが、
実際のデータ(つまり確かな証拠)として、世界的な規模で示された
わけです。
* * * * *
しかしながら、この現状で安心するわけには行きません!
なぜなら、
2014年の排出量が「横ばい」になったと言っても、
2013年と同じ量は排出しているわけで、
大気中のCO2は、やはり増え続けているからです
その事実として、NOAA(アメリカ海洋大気局)は、
今年の3月における、大気中のCO2濃度(世界平均)が、
1980年に測定を開始して以来、初めて、危険水準とされる400ppm
を超えたと発表しました。
ちなみに、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は、
「産業革命前に比べて気温上昇を2℃未満に抑える」という「国際目標」
を達成するには、
CO2を含む温室効果ガスの排出量を、2050年までに2010年と比べ
て40~70%削減し、
2100年までには、CO2を含む温室効果ガスの排出量を、ほぼゼロか、
またはマイナスにしなければ、ならないとしています。
だから、
CO2の排出量を「横ばい」から、さらには「減少」に転じるように、
なお一層の努力を、今後も続けて行かなければならないという状況は、
まったく変わっていないのです。
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