沖縄の基地問題 3
                             2015年4月12日 寺岡克哉


 私は、沖縄の基地問題について、以前から疑問に思っていることが
ありました。

 それは、

 在日アメリカ軍基地は、沖縄だけでなく、日本の各地に存在している
のに、

 なぜ、沖縄のアメリカ軍基地だけが、いつも大きな問題を起こしてい
るのか?

 ということです。


 なので今回は、そのことについて調べてみました。


          * * * * *


 まずインターネットを、ざっと眺めてみると、

 沖縄県が、アメリカ軍基地に反対するのは、「お金目当てだ!」

 というような意見が、ずいぶん目につきます。



 つまり、

 「基地反対!」の声を上げて、問題を大きくすることにより、

 沖縄に、無理にアメリカ軍基地を置かせている見返りとして、

 国から支給される補助金を、つり上げようというわけです。



 たとえば、

 沖縄県の仲井真(なかいま)・前知事が、選挙公約を破り、

 振興予算の増額と引き換えに、普天間基地の辺野古移設を
容認したことが、

 「お金目当て」という印象を、いっそう強めてしまったのだと思い
ます。



 ところが!

 沖縄県民は、その仲井真・前知事にたいして、鉄槌(てっつい)を
下したのです。

 つまり先の知事選挙で、辺野古の新基地建設に反対を主張した、
翁長・現知事が、圧倒的な差で勝利したのでした。

 ちなみに翁長知事を支持する人々の中には、これまで国からの
補助金で利益を受けてきた、「経済人」も含まれるといいます。

 だからこれは、「お金と基地との交換を拒否する」という、沖縄県民
の意思の表れであると、言えないでしょうか。



 そしてまた、

 在日アメリカ軍基地のことを、さらによく調べると、

 ただ単に、お金だけの問題ではなく、

 もっと本質的で大きな問題が、存在しているのが分かります。

 それは、

 「沖縄に、アメリカ軍基地が集中しすぎている」という事実です。

 以下、そのことについて見ていきましょう。


          * * * * *


 まず、防衛省・自衛隊のサイトを見ると、

 日米地位協定第2条第1項(a)(注1)に基づいて、アメリカ軍が
使用している施設・区域の、都道府県別の面積は、

 2015年1月1日現在で、以下のようになっています。


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              面積   全体に占める割合

   北海道     4,274 千㎡    1.39%
   青森県    23,743 千㎡    7.74%
   埼玉県     2,033 千㎡    0.66%
   千葉県     2,095 千㎡    0.68%
   東京都    13,207 千㎡    4.31%
   神奈川県   17,220 千㎡    5.61%
   静岡県     1,205 千㎡    0.39%
   京都府       35 千㎡    0.01%
   広島県     3,539 千㎡    1.15%
   山口県     7,914 千㎡    2.58%
   福岡県       24 千㎡    0.01%
   佐賀県       13 千㎡    0.00%
   長崎県     4,691 千㎡    1.53%
   沖縄県   226,749 千㎡   73.92%

   合計     306,742 千㎡    100.00%
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 この表を見ると、

 なんと、日本全体のおよそ74%が、沖縄県に集中しています。


 しかも、

 沖縄県にある、アメリカ軍の基地や施設のほとんどが、沖縄本島
(面積1208平方キロ)に集中しているため、

 沖縄本島全体の、およそ20%近くの面積が、アメリカ軍に使用
されている
わけです。



 これでは、問題が起こらないはずがありません!



 たとえば、

 アメリカ軍基地の存在は、まちづくりや交通整備など、地域の開発
を進めるうえで、大きな障害となっています。

 つまり基地は、島の中でも平坦で交通の便が良い場所に集中して
おり、利用価値が高い土地を占有(せんゆう)しているため、

 住民が許容できる限度(つまり我慢の限界)を、はるかに超えて
いるのです!




 また、

 航空機の騒音や、戦闘機やヘリコプターの墜落事故など(注2)。

 実弾演習による山林火災(注3)。

 アメリカ軍人による犯罪事件(注4)など、

 沖縄県民に大きな不安を与える問題が、とても多く発生している
のです!




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注1 日米地位協定第2条第1項(a):

 合衆国は、相互協力及び安全保障条約第六条の規定に基づき、
日本国内の施設及び区域の使用を許される。

 個個の施設及び区域に関する協定は、第二十五条に定める合同
委員会を通じて両政府が締結しなければならない。

 「施設及び区域」には、当該施設及び区域の運営に必要な現存の
設備、備品及び定着物を含む。



注2:
 1972年(沖縄返還の年)~2010年までの間に起こった、アメリカ軍
による航空機事故は、墜落43件、不時着367件、その他96件

(出典:沖縄の米軍基地の現状と課題 沖縄県知事公室基地対策課
 p12)


注3:
 1972年~2010年までの間に、520件もの原野火災が起こってい
ます。

(出典:沖縄の米軍基地の現状と課題 沖縄県知事公室基地対策課
 p12)



注4:
 1972年~2010年までの、アメリカ軍人等による犯罪検挙数は、

 凶悪犯(殺人、強盗、放火、強姦など)564件、粗暴犯1037件、
窃盗犯2859件、知能犯235件、風俗犯66件、その他944件で、

 合計すると5705件となり、年間平均でおよそ150件もの、アメリカ
軍人による犯罪が起こっています。

(出典:沖縄の米軍基地の現状と課題 沖縄県知事公室基地対策課
 p14)
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             * * * * *


 ところで、なぜ、

 アメリカ軍基地が、こんなにも沖縄に集中しているのでしょう?



 それは、まず、

 沖縄が1972年まで「アメリカの支配下」にあったことに加えて、

 1952年に結ばれた日米安全保障条約が改定され、

 本土のアメリカ軍基地の多くが、沖縄に移転したからです。



 さらには、1972年に沖縄が日本に返還された後も、

 本土のアメリカ軍基地は、その約60%が日本に返還されて、大幅
に縮小が進んだにもかかわらず、

 沖縄の基地は、およそ16%しか日本に返還されておらず、あまり
縮小が進んでいません。



 これらの理由によって、

 日本国内のアメリカ軍基地が、沖縄に集中する結果となってしま
いました。

 つまり沖縄には、日本全体の「しわ寄せ」がきているのです!



 やはり、こんな状況では、

 沖縄県の人々が、アメリカ軍基地にたいする不満や怒りを露(あら
わ)にしてしまうのも、

 まったく当然だと言わざるを得ません。



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