福島第1原発の事故から4年
2015年3月15日 寺岡克哉
今年の3月11日で、
福島第1原発の大事故が起こってから、まる4年が経ちました。
ちなみに、
ドイツは2011年の原発事故の直後に、エネルギー政策を転換
して「脱原発」を決定しましたが、
その理由について、日本に来ていたドイツのメルケル首相が、先日の
3月9日に東京都内で講演し、
「極めて高度な科学技術を持つ国で、福島のような事故が起きたの
を目の当たりにし、(原発には)予想できないリスクが生じることを認識
した」と、述べています。
ところが一方、それとは正反対に、
日本の安倍政権は、原発を「重要なベースロード電源」と位置づけて、
原発の再稼働を推進しているのです。
3月9日の、日独首脳会談後に行われた共同記者会見では、
ドイツ人の記者が、「ドイツは福島の事故で脱原発を決めた。日本は
なぜ再稼働を考えているのか」と質問したのに対し、
安倍首相は、「日本はエネルギーの3分の1を原発が担っていた。
国民に低廉で安定的なエネルギーを供給する責任を果たす」と答え、
経済の最優先を強調しています。
* * * * *
しかしながら・・・
福島の原発事故は、いま現在でも「継続中」であり、
さまざまなトラブルが、まったく絶えることなく、起こり続けています。
その中でも、とくに最近いちばん酷(ひど)いと思ったのは、
放射性物質に汚染された水が、(福島第1原発の港湾内ではなく)
「外洋」に流出していたのを、
東京電力が、およそ10ヶ月もの長期にわたって、隠蔽(いんぺい)
していたことです。
つまり具体的には、だいたい以下のようなことです。
* * * * *
東京電力は2月24日。
福島第1原発の2号機の、原子炉建屋の屋上に、高い濃度の汚染水
が、たまっていたと発表しました。
その「たまり水」に含まれる放射性物質の濃度は、
放射性セシウムが、1リットルあたり2万9400ベクレル。
ストロンチウム90などベータ線を出す放射性物質が、1リットル
あたり5万2000ベクレルに達しています。
さらには、雨が降ると、
この屋上にある「たまり水」の一部が、雨どいなどを伝って「排水路」
に流れだし、
さらに悪いことに、その排水路の「排水口」が、(原発の港湾内では
なく)「外洋に直結」しているため、
放射性物質が「外洋」に流出していました。
じつは東京電力は、昨年の4月~今年の2月中旬にかけて、
降雨が多いときに、外洋に直結する「排水口」で、放射性物質の
濃度が上がることを把握していました。
この期間中における、排水口での「最高値」は、
放射性セシウムが、1リットルあたり1050ベクレル。
ストロンチウム90などベータ線を出す放射性物質が、1リットル
あたり1500ベクレルに達しており、
明らかに、国が定めている基準値を超えています(注1)。
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注1: 国が定める管理基準は、
セシウム134が、1リットルあたり60ベクレル。
セシウム137は、1リットルあたり90ベクレル。
ストロンチウム90が、1リットルあたり30ベクレル。
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ところが!
放射性物質の濃度上昇が、昨年の4月以降から確認されていたにも
かかわらず、
東京電力は、濃度のデータを約10ヵ月間も公表せず、国にも報告して
いなかったのです。
データを公表しなかった理由について、
東京電力は、「原因調査をして結果が出てから公表しようと考えた」
と説明しています。
また、
東電福島第一廃炉推進カンパニーの増田尚弘プレジデントは、
「(汚染水の濃度は、改善の効果を測る)データとしての感覚しか
無かった」と話しており、
「公表するべきものとは思わなかった」としています。
* * * * *
以上、ここまで見てきましたが、
まったくもって、あきれ果てた隠蔽体質です!
東京電力の「隠蔽体質」は、原発事故から4年経っても、
まったく変わっていません。
こんなことでは、
おそらく他にも、さまざまな原因によって、いろいろなルートから、
放射性物質が、大気中に放出したり、海に流出しているのでしょう。
そのように疑われても、まったく仕方がありません。
福島県の漁民の人々も、「信頼関係が崩れた!」と、怒りの声を
上げています。
ところが、
福島第1原発の事故が、こんな状況であるにもかかわらず、
安倍政権(菅・官房長官)は、「港湾外の海水の濃度は法令告示濃度
に比べ十分に低い。汚染水の影響は完全にブロックされている。状況
はコントロールされている」
として、原発再稼働の推進を、まったく止めようとしないのです。
福島第1原発の事故を、目の当たりにして、
当事国でないドイツでさえ、「脱原発」へとエネルギー政策を転換した
のに対して、
まさに当事国である日本が、再稼働を推進するなど、とても正気の沙汰
とは思えませんし、
そんなことを認めるわけには、絶対にいきません。
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