「イスラム国」が日本人を殺害 2
2015年2月1日 寺岡克哉
「イスラム国」によって実行された、日本人の人質事件については、
私にも、いろいろと思うことがあります。
が、しかし、事件の状況は、いま現在も刻々と進行しています。
なので、とにかく今は「事件の経緯」に的を絞って、レポートして行き
たいと思います。
* * * * *
日本時間で、1月27日の午後11時ごろ。
後藤健二さんとみられる男性の新たな画像が、インターネット上に
投稿されました。
その画像は、「後藤健二から、家族と日本政府への2回目の公開
メッセージ」というタイトルで始まり、
後藤さんとみられる男性が、「イスラム国」に拘束されたヨルダン軍
のパイロットとみられる男性の写真を手に持って、立っています。
また、画像と共に流れた音声メッセージの全文は、共同通信による
と、以下のようになっています。
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私はケンジ・ゴトウ。妻へ、日本の人たち、日本政府へ。
これが私の最後のメッセージになると言われた。私が自由になるのを
妨げている障壁は、今や、サジダ(女性死刑囚)の引き渡しを遅らせている
ヨルダン政府だけだと言われた。ヨルダン政府に全ての政治的圧力をかけ
るよう日本政府に言ってほしい。
時間はなくなってきている。私と彼女の交換だ。難しいことはないだろう。
彼女は10年間、収監されてきた。私が収監されているのは数カ月にすぎ
ない。
私と彼女の交換、1対1の交換だ。ヨルダン政府がこれ以上引き延ばせ
ば、(ヨルダン軍)パイロットの死の責任を負うことになる。私も後に続くこと
になる。
私には24時間しか残されていない。パイロットの時間はさらに短い。
私たちを死なせないでほしい。引き延ばし工作をこれ以上すれば、2人
とも殺されることになる。ボールは今、ヨルダン側にある。
=メッセージは英語。個人情報に関わる部分などを一部割愛。(共同)
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このメッセージに対して、加藤・官房副長官は、1月28日午前の記者
会見で、
後藤さんとみられる男性の画像と音声について、後藤さん本人で
ある可能性が高いという認識を示しました。
その上で、早期解放に向けて、引きつづきヨルダン政府に協力を求め
ていく考えを示しています。
また安倍首相は、1月28日の午前に開かれた関係閣僚会議で、
「極めて卑劣な行為に強い憤りを感じる」と非難し、
「状況が厳しい中、後藤さんの早期解放に向けヨルダン政府に協力
を要請する方針に変わりはない」と強調しています。
* * * * *
ヨルダンの国営テレビは、日本時間で1月28日の夜。
「イスラム国」に拘束されたヨルダン軍パイロットの釈放と引き換えに、
ヨルダン政府にサジタ・リシャウィ死刑囚を釈放する用意があると報じ
ました。
しかしながら、後藤さんのことについては、言及していません。
ちなみにヨルダンでは、
昨年の12月に拘束されたパイロットの解放を願う声がつよく、
アブドラ国王は1月25日に、「救出は最優先の課題」と表明して
いました。
1月27日の、「イスラム国」とみられる組織によるメッセージでは、
24時間の期限を設定し、後藤さんとリシャウィ死刑囚との、「1対1」
の身柄交換を要求していますが、
このヨルダン政府の提案にたいする、「イスラム国」の反応は明らか
になっておらず、
後藤さんの解放に、どのように影響するのかは不明です。
* * * * *
日本時間で1月29日の午前8時ごろ。
後藤健二さんを名乗る男性の声で、新たな音声メッセージがインター
ネット上に投稿されました。
以下は、そのメッセージの全文です。
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私はケンジ・ゴトウだ。これはあなた方に送るように指示されたメッセー
ジだ。
もし(ヨルダン政府が拘束している女性死刑囚の)サジダ・リシャウィを、
私の命との交換のために、(イラク北部の)モスル時間で1月29日木曜日
の日没までにトルコ国境に連れてこられなければ、
ヨルダン軍のパイロット、モアード・アル・カサスベは即座に殺害される
だろう。
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このメッセージには、音声と同じ内容のアラビア語の文章が映って
おり、
「ヨルダン軍のパイロットは即座に殺害される」という文字だけが、
赤色で強調されています。
ヨルダン政府は、「イスラム国」に拘束された自国のパイロットが解放
されれば、リシャウィ死刑囚を釈放する用意があるとしていますが、
上のメッセージでは、後藤さんとリシャウィ死刑囚との交換だけに
言及しており、ヨルダン軍パイロットの解放には触れていません。
ちなみに、
モスルと日本の時間差は6時間で、モスルの日没は午後5時半ごろ
とみられるので、
上のメッセージの期限は、日本時間で1月29日の午後11時半ごろ
になります。
菅・官房長官は、1月29日午前の記者会見で、
上の音声メッセージは、後藤さん本人の声である可能性が高いという
認識を示した上で、早期解決に向けて引きつづき全力を尽くす考えを
示しました。
また、ヨルダン政府がパイロットとの引き換えに、リシャウィ死刑囚の
釈放に応じる用意があるとしたことについて、連絡があったのかという
質問にたいし、
菅・官房長官は、「現在、事態が動いている。あらゆるルートを通じ
ながら、解放に向けて、政府は今、全力で取り組んでいる状況だ」と
述べるにとどめています。
* * * * *
メッセージで指定された期限の、1月29日の午後11時半を前にして、
ヨルダンのモマニ・メディア担当相は、政府の対応を協議した上での、
記者会見を行いました。
この中でモマニ・メディア担当相は、「ヨルダン政府は、パイロットと
引き換えにリシャウィ死刑囚を釈放する用意がある。しかし、現時点で
パイロットの生存を確認できるような証拠を受け取っていない。このため、
われわれは次の段階に進むことができない。リシャウィ死刑囚は現在、
ヨルダン国内にいる。パイロットの生存が確認され次第、つぎの段階
に進む」と述べました。
その上で、モマニ・メディア担当相は、「日本側とは連絡を取り続けて
おり、日本人の人質を取りもどすために努力を続けている。われわれは
困難に直面しているが、一致団結しなければならない」と話し、後藤さん
の解放に向けて努力を続けていることを明らかにしています。
1月30日の未明。
岸田外相は記者団にたいし、常識的にはメッセージの期限が過ぎた
とみられるとした上で、
「さまざまな働きかけや情報収集は行っているが、後藤さんの解放など
の具体的な情報には何も接していない。引きつづき緊張感を持って全力
で取り組んでいく」と述べました。
また、ヨルダンのメディア担当相が、「パイロットの生存を確認できる
ような証拠を受け取っていないため、次の段階に進むことができない」
と述べたことについて、
岸田外相は、「ヨルダン側とは緊密に連絡を取っているが、1つ1つの
ことばや具体的な中身に言及するのは控えたい」としています。
* * * * *
その後、
状況が膠着(こうちゃく)状態になり、「イスラム国」からの音沙汰は、
全くありませんでした。
ところが、日本時間で2月1日の午前5時ごろ。
「イスラム国」とみられる組織が、後藤健二さんを殺害したとする動画
をインターネット上に投稿したのです。
その映像では、オレンジ色の服を着た後藤さんとみられる男性が、
砂漠のような所でひざまずき、
後藤さんの後ろには、黒い服を着た覆面姿の男がナイフを持って立ち、
メッセージを述べています。
以下は、そのメッセージの全文です。
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日本政府よ。
お前たちは邪悪な有志国連合の愚かな参加国と同様、我々がアラーの
ご加護によって権威と力を備えたイスラム教カリフ国家であり、お前たち
の血に飢えた軍であることを理解していない。
安倍(首相)よ。
勝ち目のない戦争に参加するというお前の無謀な決断のために、この
ナイフは健二(後藤健二さん)だけを殺害するのではなく、お前の国民は
どこにいたとしても、殺されることになる。日本にとっての悪夢を始めよう。
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そして、上のメッセージを語り終わると、
覆面姿の男が、後藤さんの首にナイフを突きつけたところで映像が
いったん暗転し、
続いて、後藤さんとみられる遺体が映し出されています・・・ 。
* * * * *
この、後藤さん殺害の映像について、菅・官房長官は、2月1日午前
の記者会見で、
「科学警察研究所をはじめ、総合的に判断して、後藤さん本人の
可能性は高いと判断している」と述べました。
どうやら・・・
湯川さんに続いて、後藤さんも殺害されてしまったみたいです。
2人とも、あくまで自らの意思で、危険な地域に入り込んだとは言え、
とても残念でなりません。
そしてまた、
日本国民のすべてが、「イスラム国」による「殺害の対象」になって
しまったみたいです。
どうして、そんなことに、なってしまったのか・・・
今後、日本国内だけでなく、世界中で活動している日本人の安全
を、どのようにして守って行くのか・・・
いま日本は、たいへん大きな問題を抱え込んでしまったのだと、
言わざるを得ません。
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