命の重さ
                            2015年1月11日 寺岡克哉


 本サイトでは近年、

 原発問題や、世界情勢、経済問題など、さまざまな問題を取り上げて
きました。



 しかしながら、もともと本サイトは、

 人の命や、地球の生体系など、「生命」というものをテーマにしていた
のでした。



 ところで・・・ 

 私は最近、とても大きな心境の変化があって、

 「命の重さ」というものを、心の底から痛感するようになってきま
した。

 それで再び、「命」のことをテーマにした文章も、書いて行きたい
と思うようになった次第です。


             * * * * *


 さて、

 「命の重さ」というのを念頭に置きつつ、マスコミ報道を見ていたら、

 新年早々、「家族の間」での殺人事件や、殺人未遂事件が、

 相次いで起こっていることに、とても驚きました、



 たとえば、横浜市で1月2日の夕方。

 磯子区の住宅で、この家に住む夫婦が刃物で刺され、妻(47歳)
が意識不明の重体になり、夫(52歳)もけがをしました。

 警察は、一緒に暮らしている次男(22歳)を殺人未遂の疑いで
逮捕しましたが、

 この次男は、取り調べに対して「両親を刃物で刺した」と供述して
おり、容疑を認めています。

 重体だった母(47歳)は、1月3日の未明に、搬送先の病院で死亡
しました。



 また、埼玉県の富士見市で1月3日。

 帰省中の弟(20歳)を包丁で刺したとして、兄(22歳)が殺人未遂
の疑いで現行犯逮捕されました。

 刺された弟(20歳)は病院で死亡が確認され、警察は殺人容疑に
切り替えて調べています。

 容疑者の兄(22歳)は、「殺そうと思って刺した」と供述しています。



 さらには、和歌山市で1月4日の夜。

 40歳の男性が、「父親に火を付けられた」と、近所の住民を通じて
110番通報をしました。

 警察は、殺人容疑で自宅にいた父親(71歳)を逮捕しましたが、
容疑者の父親は「殺そうと思って火を付けた」と供述しています。

 被害者の男性(40歳)が車に乗り込む際に、灯油のような液体を
かけられ、ライターで火を付けられたとみられますが、

 この男性は、意識不明の重体になっています。


             * * * * *


 以上のように、正月早々から、

 家族間における殺人や殺人未遂事件が、3件も立て続けに
起こったので、

 「いま世間では、いったい家族の関係がどうなっているのだ!」

 「なんで、こうも軽々しく、家族の命を奪おうとするのか!」

 という、思いが込み上げてきたのです。



 私が、そんな思いを抱えていたとき・・・ 

 警察庁のまとめによると、2013年の殺人事件検挙数のうち、

 被疑者と被害者の関係が「親族間」である割合は、53.5%だと
いう記事を見つけて、ものすごく驚きました。


 じつに、

 殺人事件の半数以上が、「家族の間」で起こっているのです!



 その背景には、

 「超高齢化社会による老老介護」や、「長引く不況による経済的
困窮」などがあるとされていますが、

 影山・東京工業大学名誉教授(犯罪精神病理学)は、「もっと
根源的な問題だ」と指摘しています。



 影山・名誉教授によると、

 そもそも家族は、他人よりも圧倒的に近い距離にいるため、「なぜ
わかってくれないのか」という不満を抱きやすく

 根本にある依存心、つまり「甘え」が満たされなかったときに、相手
が他人であるときよりも、不満が増大しやすいといいます。


             * * * * *


 しかし、私は思うのですが・・・ 


 「甘え」が満たされなかったからと言って、軽々しく家族の命を奪っ
てしまうというのは、

 やはり、「命の重さ」というものを、まったく理解していないのだと
言わざるを得ません



 たしかに、「ひとり暮らし」とは違って、

 家族と一緒に住んでいると、病気や介護、感情のもつれなど、さま
ざまな問題が起こり、ストレスが溜まってきます。

 ひとり暮らしに比べれば、家族と一緒に暮らすことの方が、ずっと
ずっと難しいでしょう。



 が、しかし、

 お互いに家族が協力し合って、生じた問題を1つ1つ乗りこえること
によって、

 「家族の絆(きずな)」というものが、だんだんと深まっていくのでは
ないでしょうか。



 そして、さらには、

 「家族の絆」が深まることによって、「命の重さ」というものも、

 だんだんと分かるように、なって行くのではないでしょうか。



 むかし私は、「ひとり暮らし」をしていましたが、

 家族と一緒に暮らすようになって、親の介護などが必要になり、

 そろそろ親の死期なども、無視できないぐらいに近づいてくると、

 そのことを、心の底から実感するようになってきました。



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