COP20
2014年12月21日 寺岡克哉
12月1日から14日まで、南米ペルーのリマにおいて、
国連気候変動枠組み条約 第20回締約国会議(COP20)が行われ
ました。
このたびのCOP20でも、先進国と、新興国や発展途上国の主張が
対立して、なかなか合意が得られませんでしたが、
12月12日までの会期を14日の未明まで延長し、かろうじて「気候
変動のためのリマ声明」という合意文書が採択されました。
その合意文書の要点は、以下のようになっています。
●全ての国は、2015年のCOP21に十分先立って、現在のものより
も進んだ温室効果ガス削減目標を提出する。
●削減目標には、排出量の基準年や、達成年、期間などを明記する。
●目標に、温暖化による被害軽減(適応)計画を含めるか検討する。
●条約事務局は、各国が提出した削減目標を2015年11月1日まで
に報告書にまとめる。
* * * * *
ところで、
1997年のCOP3で採択された「京都議定書」は、
先進国だけに温室効果ガスの排出削減を義務づけるものであり、
しかも先進国であるのに、アメリカやカナダは参加しませんでした。
そこで、
アメリカやカナダはもちろん、中国やインドなどの新興国や、その他
の途上国など、
世界の「すべての国」が、2020年以降の温暖化対策に参加する
「新たな国際枠組み」を、
来年にフランスのパリで開かれる、COP21で合意することを目指して
います。
じつは、
このたび採択された「気候変動のためのリマ声明」という合意文書は、
来年のCOP21に向けて、各国が提出する温室効果ガスの削減目標
に盛り込む内容や手続きを定めた、「基本ルール」なのです。
だから中国やアメリカを含めた「すべての国」は、この基本ルールに
基づいて、「2020年以降の削減目標」を提出することになります。
* * * * *
ところが・・・ そもそも「2020年以降の新枠組み」は、
京都議定書のように、削減量を各国に義務づけるものではなく、
あくまでも「自主的な目標」と言うことになっています。
そのため、
自主目標では、温暖化の防止に不十分だとして、
その妥当性を、多国間で「事前に検証する仕組み」が検討されてきま
した。
しかしながら、この「事前検証」について、
COP20の合意文書の原案では、「事前検証に関する会合を来年6月
に開く」と、あったのですが、
中国や一部の途上国の「強い反対」によって、削除されてしまいました。
このように「事前検証」が見送られたことで、
来年のCOP21で合意を目指している「2020年以降の新枠組み」が、
「骨抜き」になってしまうのは、まず間違いありません。
こんなことでは、
「産業革命以降の、世界の平均気温上昇を2℃未満に抑える」
という国際目標の達成が、「ものすごく困難になった!」と言わざるを
得ません。
それなのに、中国の国家発展改革委員会の解振華・副主任は、
「今回(のCOP20)は各国が柔軟性を示したことで合意につながった。
来年に向けていい土台となる」
などと、評価しているのです。
一方、アメリカのスターン気候変動特使は、
「この合意はわれわれが前進していくのに必要なものだ。ここに至る
までは簡単でなかったが、合意をまとめた議長に感謝したい」
と、述べています。
たしかに、
会議そのものが「決裂」してしまうよりは、ずっとましなのかも知れ
ませんが、
しかしながら、はなはだ「不十分な合意内容」であると、思わざるを
得ません。
* * * * *
ところで発展途上国は、
先進国は排出量の削減を約束するだけでなく、温暖化対策の強化に
途上国が必要とする、資金拠出と支援も確約するべきであり、
「先進国の目標」には、温暖化による被害を防ぐ対策(適応策)など
への資金支援を含めるべきだ
と、COP20で主張していました。
しかしながら、先進国の反対により、
このたび採択された「気候変動のためのリマ声明」では、
「(適応策については)目標に含めるかどうかを検討する」という、あい
まいな表現に留まってしまい、
先進国による資金支援を、「目標」として義務づけませんでした。
これについて、南アフリカの代表は、
「合意文書には満足していないが、時間の制限などもあるので文書を
そのまま受け入れる」
と述べており、不満をにじませています。
* * * * *
ちなみに、わが国の日本は、
電力需要の全体にたいする「原発の比率」を、どれぐらいにするのか
定まっていないことから、
温室効果ガス削減における「目標の策定」が、すごく遅れています。
そのため、
このたびのCOP20でも、議論を主導するような場面は、ほとんど見る
ことができず、
望月環境相が、「できるだけ早期に(2020年以降の新たな削減目標
を)出す」と、発言するに留まりました。
国連の潘基文(パン・ギムン)事務総長から、「来年の3月までに目標
を出すように頑張ってほしい」と、注文をつけられる始末で、
かつて「京都議定書」をまとめ上げた議長国としては、全くもって情け
ない状況となっています。
とにかく日本は、できるだけ早く、
「2020年以降の新たな削減目標」を、提出しなければなりません。
しかしながら!
温室効果ガスの削減目標を盾(たて)にして、原発の再稼働を促進
させようとする動きが、これから出てくるかも知れません。
が、しかし、
福島第1原発の事故が、まったく収束していない現状では、原発の
再稼働を認めることは絶対にできません。
温室効果ガスの削減は、あくまでも「再生可能エネルギーの大々的
な普及」や、「省エネ」によって、行わなければならないのです。
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